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【古代エジプトの富を支えた木造船製造・航海技術】


たまにテレビをゆっくりと見る「勤労感謝の日」であります(笑)。
とはいっても、本日出張の準備で書類作成をなんとか片付けながら。
一段落して夕方5時過ぎくらいから、なにげにつけたNHK-BS放送。
わが家は大体、103チャンネルを視聴することが多い。
高齢化してきて、このチャンネルの番組作りがいちばんハダに合う。
チャリンコで全国各県を回る火野正平の「こころ旅」など、
「人生下り坂がサイコー」みたいな番組作りに共感を覚える次第(笑)。
で、きのうのこの時間には歴史研究的なテーマで海外歴史・古代エジプト篇。
貿易立国を志向したはじめての女性ファラオのストーリーだった。
女王ハトシェプスト(在位:正妃~女王:前1490頃~前1457頃)。
ということなので、今から3,500年前くらいの歴史探検ストーリーです。
彼女の夫は早世したので、まだ4才の遺児を即位させながらも、
実質は彼女が執政し、やがて女性としてはじめてファラオになったという。
それまでのファラオたちが、海外利権を確保するために戦争政策をとったのに対して
彼女は貿易による富の交換・交易を思い立った。
まずはこの「価値転換」の発想が感動的。
エジプトの南側の現在のスーダンとの交易を望むが、
その時代、外洋船を作り、安定的な航海をするということのためには
さまざまな技術開発が必要であり、一国を傾けるような大冒険だった。
いまでいえば、宇宙開発を行うように困難があったのでしょう。
本当に戦後のアメリカNASAの宇宙開発との相似性を感じる。
この女王の発意に基づく「交易・海洋貿易」事始めを現代の人類史研究者たちが
その「交易船」を再現し、実際に航海しようという企画を番組が追った。

ということで、途中からは「船大工」による古代船復元という側面に、
まったく予想外の方向に展開したので、わたしにも強い興味がわき起こった次第。
木を使って技術開発するという、建築に類縁する人類記憶的興味。
残されていた古代遺跡のレリーフを徹底検証して古代海洋船の
設計情報を丹念に探り、全長20m、船幅5mという大きさも割り出す。
それを現代のCAD情報として合理的にまとめあげて、
さらに現代にまで伝統技術を伝えている「船大工」を探し出し施工を依頼する。
古代においてはレバノン杉が素材とされたが、組成材質が近似する
米松が選定された。それに対して古代遺跡から発掘された船の断片板から、
数十枚の木片ピースで構成された事実を発見し、そのままに設計し施工した。
現代の木造船製造技術とはまったく違って「竜骨」といわれる
骨組みに対して、木片ピースで組み上げていくのだという。
当然、緊結させるのには「かすがい」のような部材が工夫された。
最大の問題である「防水性」については、水に浮かべると木材が膨張して
水の浸入が防げるはずだと当初推定していたが、実際にはそうはならず、
繊維質素材を封入した上から、蜜蝋で塗装仕上げして防水仕様とした。
それでめでたく水に浮かべることはできたけれど、
帆船の操縦については、いろいろな経験知の取得が必要で、失敗を重ねた。
風を受けすぎればマストが折れたりするので、帆を大小で使い分けるなどの
操縦技術「再発見・開発」も必要だったとされていた。
そんな経緯が丹念に番組として紹介された。
無事にこの女王発意の「海洋貿易」活動は成功を収め、その後の
エジプト王朝の繁栄の基盤になったのだとされていた。
それまで富の獲得が、対外戦争での略奪しかないと固定概念となっていたのが
ここから人類的な価値転換がなされたのだと。

人類史という視点が世界的に大きく着目されるようになって来ている。
いまに至る人類の「常識」がどのように獲得されてきたのか、
家族がどうして生まれたか、住居がどうして出現したのか、
そういった根源的な営為の初源への知的探究は、
さまざまな知的感動を呼ぶものだと、深く興味を抱いた次第です。

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