Q.間取りばかりに目が行って…

<大阪市住吉区・MMさん(主婦・35才 女性)>


 去年の11月に建売住宅を契約しました。フリープランだったので契約前は夫婦でいろいろ考えてプランを決めたのですが、今、建築中の家を見てショックで眠れない日が続いています。24坪の土地、北向き、三方を他の家に囲まれたところに建てるのだから、何よりも日当たりを一番に考えるべきだったなあと後悔ばかりしています。間取りプランを考えるときは、部屋の広さばかり気をとられていたための失敗です。もう、どうにもならないことですけど悔やまれます。




A.敷地を読む、ということの大切さ。

建築家の団体・日本建築家協会北海道支部
住宅部会会長・染谷哲行(アルクム計画工房TEL011-281-1515・主宰)

 Mさん、お気持ちお察しいたします。
 どうしても間取り優先になってしまうものなのです。大学の建築科の学生に教えていても、ついついどんな建物を作ろうか、ということにエネルギーが集中してしまいます。そんなとき、ある住宅作家の話をすることがあります。「その人は、住宅の設計を依頼されると、まずその敷地にパンと牛乳を持っていき日がな一日、ぼーっと座っているそうだ。そうやって一日の一日のうつろい、天気の変化、四季の移り変わり、道路の往来、ご近所の関係などを、それこそ一年間じっくりと観察して、それからやっと、どんな家にしようかなと考えはじめるそうだ。」
 そこまでやるか、できるかは別として、とても大事なことだと思います。私たち建築家も、経験や想像力を駆使しながら「ここは雪が吹き溜まらずに、落ち着いた雰囲気になりそうだから玄関が良いかな。この辺が一日中日当たりがよいので居間にしようか、子供たちが裸足で走り回れる庭と一体になったら楽しそうだ。隣家の間から朝日が差す食堂にするとさわやかな一日が始まるぞ。ここは少し床を上げると見晴らしが利いて風通しの良いデッキが出来そうだ。ここはお隣さんの窓があるから採光窓にしよう。……そんな風に敷地から教えられることがたくさんあります。開口部も、その目的によって使い分けが必要です。景色・採光・通気、それから家の目鼻立ちにもとても左右します。せっかく作る家ですから「ステキな家ですね。」と言われたいものです。
 限られた予算、敷地を最大限に生かすためにも、敷地から学ぶものは多いはずです。太陽や風、お隣、道路など、自分たちの思うようにはならないことは、それを生かすしかありませんからね。Mさんも気を落とされず、ご近所つきあいの仕方、カーテンや観葉植物の工夫次第で、より良くなることもあるはずです。  まずはせっかく出来上がってくる家をかわいがってください。




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