緑豊かな公園の一角に建つ、築22年の2×4住宅を改修し、公園側の庭にRC造のキッチン棟を増築した住まい。新たな住まいに求めたのは「キッチンを中心とした暮らし」でした。既存住宅は寝室や水まわりを2階にまとめ、1階はワークスペースやライブラリー、勝手口を設けて外部との行き来をスムーズにしたダイニングにアップデート。地面より1.2m浮かせた床を、2本の柱が凛と支えるキッチン棟は、ダイニングと連続しながら、公園とダイナミックに一体化する美しい空間です。

◎家族構成/夫婦30代、子ども2人
◎構造規模/木造、一部RC造・2階建て
◎設計/(株)宮城島崇人建築設計事務所
◎施工/(有)大元工務店

2×4住宅という構造上の特性を活かしながら、公園の景色を引き込んだ開放的な空間を実現するために、独立したキッチン棟を増築。キッチンでくつろぎたいというHさんの希望を叶え、公園に突き出した位置に造作のベンチも設置した。住宅用の玄関とは別にダイニングに勝手口を設け、料理を介したコミュニティーの場となることを念頭に計画した。

IHクッキングヒーターを対面に設置。「会話をしながら向かい合って料理ができるのが楽しいです」と奥さん
キッチン下の造作収納は、調理器具の数や大きさ、所有する調味料の数など、実際にキッチンを使用したあとに発注したもの。さまざまな用途や展開が予想されるHさん宅のキッチンは、今後も必要に応じて機能を増やしたり、収納を増設する可変的な空間となっている。
土壁やカバのフローリングで仕上げたダイニングに連続するキッチン棟は、異なる素材のRC造。キッチンは使い勝手の良いステンレスと木を組み合わせた造作。公園の景色を取り込むガラス窓は木製サッシで、コンクリートが持つ冷たい印象にやわらかさを添えている。
テーブルを囲むようにキッチンを囲み、会話や料理を楽しむアクティブな場所となるように、多方向からアクセスできるアイランド型キッチンを選択。料理教室や食品開発、ビュッフェスタイルのパーティーなど、日常使い以外のさまざまなシーンも想定して、2槽式のシンクを選択し、IHクッキングヒーターも対面に設置するなど、用途の幅を広げた。
勝手口を設けて、外との行き来をスムーズにしたダイニング。「プライベート用の玄関とは別に、ゲスト用の玄関としても活用することを想定しました。子どもたちは勝手口の方が便利かつ楽しいようで、普段から使っています」
ワークスペース前に設けたライブラリーは、既存住宅の窓を囲うように造作の本棚を設置している。「ライブラリーでありながら、リビングとしても機能しています」とHさん
「建築家のアトリエのような雰囲気が理想でした」とHさん。ワークスペースは夫妻の職場であり、子どもたちの勉強部屋でもある
バルコニーの先にあるキッチン棟の屋上には近い将来、屋上菜園を計画中
公園側からキッチン棟を見る。積雪時に視線が上がることも考慮して高さや窓の位置を設定している