今回は1918年創業、伊達本社をはじめ、札幌、ニセコ、関東に拠点を持つ100年企業、須藤建設を訪ねました。 道内外に複数拠点を持ち、住宅と建築の事業部で設計・施工一貫した仕事をこなす同社の、高い総合力の秘密を探ります。


世紀を超えて培ってきた「創合力」

SUDOグループは、北海道に本社を置く須藤建設株式会社を核に、グローバルな価値基準を取り入れ、事業エリアを道内にとどまらず関東にも広げる、希少な建設業グループ。大正7年(1918年)に胆振地方の豊浦町で産声を上げた同社は、2018年に創立100周年を迎えました。

「初代の須藤幸次郎は宮大工で、神社やお寺をつくっていたんです。それらの実績が地域に認められ、学校やホテル、個人宅など、さまざまなタイプの仕事を依頼されるようになりました」と語るのは須藤建設株式会社の4代目、須藤正之社長です。

初代の須藤幸次郎が棟梁として普請に関わった豊浦神社

住宅から公共施設まで多様な建築物の設計・施工を一括受注し、デザインと性能を両立させた高品質な空間づくりに定評がある同社は、1985年には住宅事業と、公共施設やビルなどに携わる建築事業を部門化し、専門性を磨いてきました。同時に事業エリアも着実に拡大。現在は伊達市の本社のほか、住宅事業に特化した札幌支店と東関東支店(千葉県に2オフィス)、外国人向けのコンドミニアムなどを手がけるニセコ支店を構えています。さらにはグローバルな視野で建築空間をデザインする株式会社SAADを東京に設立するなど、時代に合わせて体制を進化させてきました。

高断熱・高気密、全館暖房など同社が提供する住宅と同じ仕様で建てられた伊達本社オフィス

同社はグループのミッションを「拠点間、事業部間、職種間でそれぞれの経験・知見を共有することによって総合力を高め、最高品質の建築空間を創造すること」と表現し、その考え方を集約した「創合力で建てる。」というスローガンを掲げています。住宅と建築、日本人と外国人、北海道と関東、伊達エリアと札幌エリアというふうに、異なる対象でありながら共通した「人が過ごす空間」の快適性や機能美を追求するスタッフが、経験を共有し意見を交わしながらつくりあげる。それこそが100年続く企業のしなやかな力といえるでしょう。

SUDO建築の手がけた「だて地域生活支援センター」。「人が創り、地域に遺す」をモットーに、数多くの公共施設やコンドミニアムの施工を行う
SUDOホーム北海道の手がけた注文住宅。土地と暮らしをじっくりと見つめ、高性能でデザイン性の高い住宅を長年提供し続けている

自社の価値を実感し、さらに高めていく

住宅事業の「SUDOホーム北海道」は、土地の特性を生かし、無垢材や珪藻土などの自然素材を用いた、温かみがありながらも洗練された家づくりで人気があります。SUDOホーム北海道の広報を担当する菊地恵さんは「入社して17年になりますが、当時から家づくりの基本的な考え方は変わっていません。いち早く自然素材を積極的に活用し、健康的で自然の美しさがある住空間を長く提案し続けてきたことは、本当に素晴らしいと思います」と胸を張ります。

その空間を下支えするのは、同様に長年取り組んできた高断熱・高気密を実現する高い技術力。また、本社エリアと札幌市内では土地の大きさや周辺環境などが異なるため、それらを見極めながら、建築主のライフスタイルに合わせたプランニングを大切にしています。

一方、建築事業の「SUDO建築」では、公共施設、医療福祉施設、商業施設からマンション、ホテルまで多様な建築物を請け負い、安全・安心な社会資本整備に貢献。「とくに伊達市内の大きな建築物は、古くからかなりの数に携わってきました。広報として施工実績を整理するようになり、『この建物もそうだったんだ』と感じることが多いですね」と微笑むのはSUDO建築の広報、松原ミエさん。

また、ニセコ支店の建築事業では、距離が近い伊達本社との連携や、寒冷地におけるRC施工の技術力など、地域企業としての優位性が存分に生かされています。菊地さんは「ニセコのコンドミニアムなどを手がけることで培われたグローバルなセンスは、住宅のデザイン性にも反映されています」と、住宅と建築の事業間連携がもたらすメリットについて語ります。

「創合力」を高めるため、各職種が連携しやすい一体的なオフィス環境を整えているのもポイント。さらに本社社屋や各支店のショールームは、SUDOホームの住宅と同じ設計思想で建てられており、スタッフは日々働きながらその特徴を理解し、実感を伴ったサービスを提供しています。

各支店のショールームや打ち合わせスペースも、SUDOの提案する素材や家具で満たされ、その良さを体感することができる

地域の豊かな未来を「建てる」ために

SUDOのスタッフは、設計、施工管理、大工の技術系と、総務や広報などの事務系に大別され、さまざまな人材が活躍しています。菊地さんと松原さんをはじめ、事業部・エリアごとに広報担当を設け、一昨年リニューアルしたホームページでの情報発信など、ユーザーに有益な情報を提供し相互理解を深める仕事を担っています。

営業専門のスタッフは置かず、設計職が設計営業というかたちで、竣工まで建築主に寄り添い、建物づくりを進めるのも同社の特徴。そのため建設現場についてもよく理解している必要があり、施工管理経験のある設計担当者も多いといいます。地域工務店ならではのエリアを知り尽くした提案と建築主との密接な関係は、建築主にとっては大きな安心材料であり、良質な建物をつくる鍵となっています。

伊達本社オフィスの様子。ゆるやかに仕切られつつ開放的な空間で、部署間の打ち合わせもスムーズ

大工職を雇用しているのもSUDOグループの強みのひとつ。常に新しい技術を取り入れ、丁寧かつセンスよく手づくりする職人集団です。大工技能試験への挑戦もサポートし、自己流ではない技術を身につけて第一線で長く活躍できる人材育成にも取り組んでいます。須藤社長は「建築系の職人を目指す若者が減っている中、今後は協力業者さんと連携しながら、児童・生徒にものづくりの楽しさを伝える職業体験イベントなども企画したい」と意気込み、北海道の建築業界を未来へつないでいくことも重要な役割だと考えているようです。

幅広い年齢の大工が活躍するSUDOの現場。新しい工法などにも対応しながら、一棟一棟丁寧に仕上げていく

植樹会などの社会貢献活動にも積極的に取り組み、100年企業としてのリーダーシップを発揮する一方で、ユーザーをはじめとした地域の人々の声に耳を傾け、丁寧なものづくりを続ける。地域工務店の枠を越えた技術と魅力を携え、SUDOグループは新たな100年を歩み始めています。