広々とした事務所棟では、大テーブルを挟んでスタッフが仕事に勤しんでいる

家をつくることは、
生活をつくること

福島県を代表する名峰、安達太良山を見晴らす高台にライフスタイル工房はあります。5つの建物を大きな屋根が覆う、個性的な外観の社屋は、スタッフが外の空気や自然を感じやすいようにとデザインされました。細部に工夫が施された建物は、モデルハウス的な意味合いも持っています。

代表の安齋好太郎さんは、この地で建設業を営んできた安斎建設工業の3代目として生まれました。先代や先々代の仕事を見て育つ中で、「ものづくり」の楽しさを覚えたといいます。建築という仕事に興味があったというより、何かものをつくる仕事をしたいと思っていた安齋さんですが、結果的に家業を継ぎます。 

代表になった当時、建築業界では新建材が主流。尺幅が少なくやれることも限られていました。そんな中、転機となったのは安齋さんの実弟の家の建築でした。弟の家ということもあってかなり自由につくることができ、そのときに改めて、自分の本当に住みたい家というものを考えたといいます。「家をつくることは生活をつくること、住まい手のライフスタイルに寄り添うことなのだ」と実感した安齋さんは、より自由な設計・施工を実現するため、ライフスタイル工房を設立しました。

クライアントの希望を叶える
プラスαの提案力を大切に

「もし、クライアントが家を建てる技術や知識を持っていたら、当然自分で家を建てるでしょう。でも、それがないから、プロである私たちに依頼するのです。クライアントの希望がなければ、私たちは何もできません」と安齋さん。更にプロとしては、プラスαの要素が提案できることが欠かせないと考えます。そのプラスαの提案力を磨くため、日常や旅先でさまざまなものを意識的に観察することで、物事を多角的に見る目を養い、表現力や先々を見通す力を高める努力をしているといいます。

「紙の上でプランニングする二次元に始まり、三次元の家をつくる。さらにそこに時間という尺が加わり四次元になる」。家づくりをこのように捉えている安齋さんが大切にするのは、クライアントの生活目線。派手なデザインや演出ではなく、パーソナルスペースへの配慮や自由度の高いプランニングで、その人のライフスタイルに合った住環境をつくることです。

住まい手が描く新たな家での暮らしのストーリーを考え、敷地の地形や光の射し方や、風の流れを考慮。さらに、地域の環境や文化、建築に用いる素材をも見極めます。暮らしをデザインする「住まい」。その可能性は尽きません。先々までを見据えた住宅デザインで、クライアントが望む以上の提案を実践しています。

ニーズが多様化する未来で、
変化する建築家の役割

木の持つさまざまな魅力を引き出し、個性を演出することもまた、安齋さんの得意とするところ。木の質感を前面に表現した外観や、木の優しさを生かした内装など材料としての木とともに、植栽の木も、家づくりでは大きな役割を果たします。「例えば目隠しのために大きな擁壁を建ててしまうと、閉鎖的な家になってしまう。植栽ならレースのカーテンのように優しく外部と隔てることができます」。状況に応じたアイデアで、安齋流の家づくりは進められます。

近い将来、住宅のあり方は変わるだろうと安齋さんは考えています。「ITや自動車など、人の暮らしを支える他のものと比べ、建物というのは意外に変化していないと思うのです。でも今後は住む場所も、住み方についての考え方も多様化するでしょう。それに伴って住宅は目的のための手段となり、その価値や形を変えるのではないかと思います。当然、建築家の役割も変わっていく。さまざまなジャンルのプロがチームを組んで家づくりを考えたり、あるいは地球の反対側で仕事をすることもあるかもしれません」。

既に日本全国のみならず、海外も飛び回っている安齋さんですが、原点はあくまで安達太良山の麓。その豊かな自然の中でプランを練り、発想を巡らす時間が大きな力になっています。

(文/畠山 久美)

大屋根の下から、地元の田畑や民家の向こうにそびえる雄大な安達太良山が望める
レッドシダーの屋根、ドアの形、エントランスなど、社屋には家づくりの参考にもなる見どころが満載
5つの建物を大きな屋根が1つに繋ぐ。行き来の際に季節や自然を感じられるという
〈株式会社Life style工房 社屋〉
■福島県二本松市
■設計・施工/株式会社Life style工房