木肌の温もりや木目の美しさに魅せられて、私たちは内装材や家具、インテリアなど住まいの随所に木を取り入れています。

こうした木はいずれも貴重な森林資源を利用しているもので、その多くが輸入木材です。外材に頼らざるを得ない国内の森林資源の現況は私たちが抱える課題の一つでもあります。そこで今回は、北海道産木材を使い、植え育てるエシカルインテリア「ikumori」プロジェクトをご紹介します。

森林資源を利用する企業として果たすべき役割

自然と産業が調和した山口県周南市に本社を構える株式会社ニッシンイクスの理念は、「快適な生活環境づくりに貢献すること」。「自然」と「本物」にこだわりを持ち、無垢フローリング材やデッキ材、パネリング材など、国内で入手が難しいものは世界各地から選りすぐり、自社で直輸入しています。

また、本物の天然木を使用した内装用不燃ボードは、不燃内装制限のある場所でも利用できるため内装デザインの幅が広がり、豊かな木質空間の表現を実現。さまざまなニーズに応える製品提案は、多くの建築家やビルダー、工務店から信頼を得ています。

自然の素材にこだわった製品をつくり続けるニッシンイクス。同社が今、積極的に取り組んでいるのが森林資源の持続可能な利用と森の多様性維持への貢献です。

「私たちの製品はいずれも貴重な森林資源を利用してつくられているものです。森の恩恵を受けている企業として、私たちには何ができるのかを考えました」と話すのは、同社の販売促進グループ グループ長の加藤 学さん。地球環境への配慮や思いやりが必然となった今、森林資源を利用する企業として果たすべき責務を考え、始動したのが使用した原木の量に見合う苗木を植樹するエシカルインテリア「ikumori」プロジェクトです。

株式会社ニッシンイクス 販売促進グループ グループ長の加藤 学さん(写真中央)

北海道の広葉樹を使い、育てる循環プロジェクト

「ikumori」プロジェクトがスポットを当てたのは「広葉樹」。

広葉樹は豊かな表情や質感、木目の美しさなどからインテリアとしても非常に人気が高い一方で、針葉樹に比べて国内自給率が低く、多くが海外からの輸入に依存している状況です。国内のものを使用する場合は、自然更新した広葉樹に頼るしかなく、資源の持続性は大きな課題となっていました。

こうした背景を踏まえ、プロジェクト発として誕生した製品が北海道産広葉樹としてなじみの深いナラ、ニレ、センの3種を使用した天然木フローリングと、内装用パネル材です。

左:ナラ 中央:ニレ 右:セン

プロジェクトパートナーには、北海道赤平市で単板や合板をつくり続けている木材のプロフェッショナル「空知単板工業株式会社」を迎え、二人三脚で製品の開発や、植樹、育林を進めていきます。

空知単板工業株式会社 代表 松尾和俊さん

「ikumori」プロジェクトでは、北海道を舞台に国内で希少といわれている広葉樹植林の森づくりに挑戦。木材利用のために伐採した跡地に植林をしながら、次世代が使うことのできる森林もつくっていくことで、森林資源の持続可能性や森の多様性維持に力を注ぐとともに、インテリア素材を選ぶ際のエシカルな選択肢を提案します。

「長い成長の過程で生じるさまざまな「キャラクターマーク」を自然がもたらす意匠としてあえて活かし、限られた資源の利用率も上げていきます」と加藤さん。本プロジェクトの立ち上げをきっかけに、伐採や苗木づくりの現場に足を運び、「木を扱う仕事をしているにもかかわらず、これまで伐採や苗木づくりを実際に見たことがありませんでした。直接目で見て、現場に立つことで、森の恩恵を受けているという実感を再確認することができました」と語ります。

第一回「ikumori」植樹祭を開催

2021年10月29日。プロジェクトパートナーである空知単板工業株式会社の本拠地、赤平市にて「ikumori」プロジェクトの第1回植樹祭が開催されました。

植樹祭には空知総合振興局や、なかそらち森林組合の皆様など20名以上が参加。

天気は曇りで、前日に雨が降り足元には湿り気がありましたが、実はこれが植樹に適した天候。日照りは植樹の際に水分が必要になってしまうため、雨上がりの曇り空はまさに好条件だそう。湿り気のある土は苗木を入れる植穴も掘りやすく、作業効率も上がります。

今回植樹したのは、ナラ、ニレなどの広葉樹。なかそらち森林組合の皆様からの丁寧な指導を受けながら、参加者は約1時間かけて30本を植樹しました。

後日、プロの手によってさらに250本を追加する予定となっていて、約1,000㎡の敷地内に植樹される広葉樹は合計280本。「ikumoriプロジェクトのフローリングの場合、約11畳分のフローリングを作るのに1本の成木が必要なため、植えた苗木の20%が成木になるとすると、今回の植樹は単純計算で約600畳分以上のフローリングに値します」と加藤さんは話します。

「自然の中で土に触れるのは気持ちがいいものですね。植樹は森の命を支えるという実感が湧いて、心に栄養がもらえます」と笑顔を浮かべるのは、プロジェクトパートナーである空知単板工業株式会社の代表・松尾和俊さん。「広葉樹の主力が海外とされる中、こうして地元の広葉樹を使った製品の開発に携われることを非常に嬉しく思います」と話します。1回目の植樹を無事に終えた加藤さんと松尾さんは「森林資源に感謝をして、愛情を注ぎながら森を育んでいきたい」と声を合わせて「ikumori」プロジェクトへの想いを新たにしました。

植樹をした苗木の育林経過は今後も定期的に発信予定。植樹を通して森林がもたらす景観づくりや自然の大切さも広くアピールし、プロジェクトを通して森林資源や環境に対する意識の種を撒き続けます。

◎ikumori 特設サイト
https://www.nissin-ex.co.jp/lp/ikumoripj/

(文/Replan編集部)