家族の暮らしに寄り添い続け、心地よくのびやかに暮らせる空間を実現するため、住まい手と時間をかけて対話を重ねるアクト建築工房。2021年10月に完成したHさんの新居も、構想から3年近い歳月をかけてつくられました。

石材を採用した玄関土間には、容量たっぷりのシューズクロークを設けた
石材を採用した玄関土間には、容量たっぷりのシューズクロークを設けた
天井高を抑えた玄関ホールは間仕切りの扉を設けず、そのまま吹き抜けのあるLDKにつながる
天井高を抑えた玄関ホールは間仕切りの扉を設けず、そのまま吹き抜けのあるLDKにつながる

「家具は二生もの」。家具は吟味して買い、次の世代に引き継ぎながら大事に使っていくという、椅子研究家・織田憲嗣氏の言葉に触れたのがきっかけで、北欧の家具やインテリアに興味を持ったHさんご夫妻。お子さんの進学を考慮し、3年前に旭川で北欧家具が似合う住まいを新築しようと決めました。

玄関とLDKをつなぐ廊下の右手に、裏動線を設けた水まわりスペースがある。扉を閉めれば、生活感もにじまない
玄関とLDKをつなぐ廊下の右手に、裏動線を設けた水まわりスペースがある。扉を閉めれば、生活感もにじまない
玄関ホール直結の洗面コーナーは、タモ材と大理石を採用した造作仕様。ワイドスパンの洗面台は、化粧台も兼ねる
玄関ホール直結の洗面コーナーは、タモ材と大理石を採用した造作仕様。ワイドスパンの洗面台は、化粧台も兼ねる
淡いグレーと白を基調にしたトイレには、サブウェイタイルをあしらった。照明は、ルイスポールセンのVLリングクラウン
淡いグレーと白を基調にしたトイレには、サブウェイタイルをあしらった。照明は、ルイスポールセンのVLリングクラウン

「中富良野でアクト建築工房が建てていた家を見て、探していた依頼先はここだったんだと思いました」というHさん。会社を初めて訪問した折には、フィンランドのアルヴァ・アアルトの自邸の話で澤田さんと意気投合し「最高のパートナーに出会った気がした」と言います。

ルイスポールセンの照明、カール・ハンセン&サンの家具が美しい調和を見せるリビング・ダイニング。無垢の真鍮と木材、乳白色のガラスを基調に内装を整えた
ルイスポールセンの照明、カール・ハンセン&サンの家具が美しい調和を見せるリビング・ダイニング。無垢の真鍮と木材、乳白色のガラスを基調に内装を整えた
床や階段のナラ、造作のタモ、チェリーなど、自然の木肌を生かしたLDK。ダイニングの椅子は家が完成する2年前にHさんが初めて買ったものだそう
床や階段のナラ、造作のタモ、チェリーなど、自然の木肌を生かしたLDK。ダイニングの椅子は家が完成する2年前にHさんが初めて買ったものだそう

公園に隣接する宅地を入手したご夫妻は、澤田さんにプラン作成を依頼。「北欧テイストの家づくりに加え、共働きなので家事効率の良い動線と間取りも希望。また、転勤先で住まいのカビや寒さにも悩まされていたので、健康的で快適な室内環境も実現したいと伝えました」と奥さん。

Hさんは打ち合わせと並行して、オークションサイトなどを活用して、気に入っていたカール・ハンセン&サンの家具やルイスポールセンの照明を収集。「そうした家具選びや補修にも、澤田さんが相談相手になってくれて心強かったです」。

タモ材で仕立てた造作キッチンは収納もたっぷり。家族で料理を楽しむことを想定し、通路幅を広く取り、多目的に利用できるアイランド型の作業台を設けた
タモ材で仕立てた造作キッチンは収納もたっぷり。家族で料理を楽しむことを想定し、通路幅を広く取り、多目的に利用できるアイランド型の作業台を設けた
キッチンに隣接して設けたユーティリティ。洗濯物を洗う・干す・アイロンかけがこのスペースで完結できる。カウンターの壁にはプリント類の掲示に便利なマグネットボードを採用
キッチンに隣接して設けたユーティリティ。洗濯物を洗う・干す・アイロンかけがこのスペースで完結できる。カウンターの壁にはプリント類の掲示に便利なマグネットボードを採用
ユーティリティと脱衣室の間には、家族共用のウォークインクローゼットをレイアウト。脱いだ衣類も乾いた洗濯物も、すぐに片付けることができる
ユーティリティと脱衣室の間には、家族共用のウォークインクローゼットをレイアウト。脱いだ衣類も乾いた洗濯物も、すぐに片付けることができる

素材を一つひとつ吟味しながら、ゆっくりとつくり上げた新居は、2021年10月に完成。「時間をかけた分だけ、家づくりが楽しめました。施工を担当してくれた大工さんも、手仕事がとても丁寧。私たちとつくり手の情報共有ができていたので、安心して見守れました」と奥さんは施工時を振り返ります。

リビングに隣接して設けた和室も、琉球畳やアクセントウォールを採用し、北欧テイストのリビングに違和感なくなじませた
リビングに隣接して設けた和室も、琉球畳やアクセントウォールを採用し、北欧テイストのリビングに違和感なくなじませた
大型のウォークインクローゼットを設えて、すっきりとした寝室を実現
大型のウォークインクローゼットを設えて、すっきりとした寝室を実現
寝室には、ベージュのアクセントウォールを採用し、Hさんがオークションサイトで見つけ、澤田さんが補修した照明(AJウォール)を取り付けた
寝室には、ベージュのアクセントウォールを採用し、Hさんがオークションサイトで見つけ、澤田さんが補修した照明(AJウォール)を取り付けた

5.4mの吹き抜けと公園を望む大開口、ナラの無垢床が心地よいLDKには、ご夫妻が集めた家具と照明がしっくりとなじんでいます。敷地の良さを生かすため、北側の公園に開いた室内は明るく、開放感たっぷり。アイランド型の作業台を採用した造作キッチン、水まわりを集約した家事スペースも広々で、使い勝手が抜群です。「折々に床や造作部をメンテナンスしながら、自然素材の経年変化も楽しみたいと思います。家を建てて、織田先生がおっしゃっていた『生活を整える』ことの意味が分かりました」と、Hさんが感慨深げに話してくれました。

吹き抜け越しに階下のリビング・ダイニングを見る。壁には、チェリーの突板を用いた間接照明を設置。「淡いグレーの壁に灯りが反射して、夜もまたうっとりする美しさです」とHさん
吹き抜け越しに階下のリビング・ダイニングを見る。壁には、チェリーの突板を用いた間接照明を設置。「淡いグレーの壁に灯りが反射して、夜もまたうっとりする美しさです」とHさん
オープンな子ども部屋には、トイレとクローゼットも完備。子どもの成長に合わせ、間仕切りや家具などを整える予定
オープンな子ども部屋には、トイレとクローゼットも完備。子どもの成長に合わせ、間仕切りや家具などを整える予定
吹き抜けでつながる2階の子ども部屋。床は、構造用合板を丁寧に磨き、淡い白のオイル仕上げを施した。窓枠もデンマークの家をお手本に白くペイントした
吹き抜けでつながる2階の子ども部屋。床は、構造用合板を丁寧に磨き、淡い白のオイル仕上げを施した。窓枠もデンマークの家をお手本に白くペイントした

家族の暮らしに磨かれるほどに味わい深まる自然素材と普遍的なデザインを採用した住まいは5年、10年と歳月を重ねるほどに心地よさを増していくことでしょう。

造作の外物置や屋根も備え、機能性と美しさを両立させた玄関ポーチ。ポーチを抜けると、これから整備を行う予定の庭に出る
造作の外物置や屋根も備え、機能性と美しさを両立させた玄関ポーチ。ポーチを抜けると、これから整備を行う予定の庭に出る
外部の視線を遮るため、公道側の開口は最小限に抑えた。グレーと白のコントラストが効いた直線的なフォルムの外観はモダンな印象
外部の視線を遮るため、公道側の開口は最小限に抑えた。グレーと白のコントラストが効いた直線的なフォルムの外観はモダンな印象