今回、ご登場いただくのは札幌市を拠点に自然の力を生かした家づくりに取り組んでいる大平洋建業(株)代表取締役社長の佐藤 誠さん。健やかで快適な暮らしを支える「きれいな室内環境」の実現について、お話しいただきました。


大平洋建業(株)
代表取締役社長

佐藤 誠さん

北海道札幌市生まれ。札幌工業高校建築科卒業。一級建築士・1級建築施工管理技士の資格を持つ。2000年に大平洋建業(株)に入社。建築というお客様にとっての大事業のパートナーにふさわしい存在で在り続けられるよう、今現在も積極的に外部の講習・セミナーなどに参加。NPO法人パッシブシステム研究会の理事としてパッシブ換気住宅の普及・広報にも努めている

 

いつまでも安心して
住み続けるために大切な空気環境

私が入社した20数年前、世の中では「シックハウス症候群」という言葉がしばしば聞かれるようになりました。これは、室内の汚染された空気を吸うことでさまざまな体調不良を引き起こし、原因となる建物の外に出ると症状がなくなる、または軽くなることが特徴です。その原因の一つが、建材や内装材などに含まれる揮発性有機化合物(VOC)といわれています。

当時から私たちに家づくりを依頼されるご家族は、アレルギー体質という方が多くいらっしゃいました。これからの暮らしを夢見て、せっかく建てたマイホームなのに住むことができない。そういうふうになってほしくない。そんな想いから、できる限り健やかな室内環境を実現するためさまざまな対策を行ってきました。

しかし、どんなに厳しく建材を吟味しても、べニア類には化学物質が含まれているケースが多くありました。また当時は、24時間換気の採用も義務付けられていませんでした。そこで私たちは室内の空気環境を悪化させる揮発性有機化合物をはじめとするアレルゲン物質を効率良く排出する換気方式に改めて着目。北海道の大学や公的研究機関の研究者が提案していた自然の力を生かした「パッシブ換気システム」を取り入れた家づくりを進めていきました。さらに研究の最前線にいる専門家が多く関わる「NPO法人パッシブシステム研究会」にも参加。経験や勘に頼らない施工ができるよう、社内でも最新技術を共有しています。

無駄がなく持続可能な
アナログな換気方式でおいしい空気を家中に

現在、新築のほぼ全棟に採用され、大平洋建業の住まいの代名詞にもなった「パッシブ換気システム」。これは北海道のような寒冷地で冬の内外温度差によってできる室内の空気の浮力を利用した暖房・換気方式です。給気口から取り込んだ新鮮な外気は、床下に設置した暖房器で暖められることで、床下から屋根裏へ向かう空気の流れをつくります。暖かく、きれいな空気は自然循環しながら、全室の暖房と換気を行い、アレルゲン物質やウイルスなどを排気口から外へ排出。家の中は常に清浄でおいしい空気で満たされます。

機械式換気とは異なり、スイッチや室内汚染の原因にもなるフィルターやダクトがないので、メンテナンスも基本的に不要。機械的な設備もないため、経年劣化で壊れることもありません。換気量も自動でコントロールされ、必要に応じて排気口が開くため、省エネ効果も期待できます。さらに、立地条件によっては、床下の空気を太陽熱で暖め、より高い省エネ性を発揮する「ソーラーウォーマー」の併用も可能です。こうした自然の力を生かすことで結果的に多くの無駄がなくなり、地球環境への負荷軽減、エコにもつながると私たちは考えています。

パッシブ換気を計画どおりに機能させるため、私たちは新在来工法を採用し、北方型住宅ECOの基準をクリアする高断熱・高気密の住まいづくりにも力を入れています。また、住まいづくりにも脱炭素化が求められる今、お客様の多様なニーズに応えられるよう、付加断熱と床下エアコン、蓄電池を組み合わせたZEH仕様の住まいの実用化の準備も進めています。

暮らしの中で呼吸する天然由来の素材でつくる
人と環境に優しい家

私たちは健やかな室内環境を実現するため自然の力で稼働する「パッシブ換気システム」とともに、天然由来の素材をできる限り用いたいと考えています。特に壁や床は、日常の暮らしの中で直接体に触れる場所。それだけにアレルゲン物質を含まないものをお勧めしています。

例えば壁には調湿・消臭効果が高く、カビやダニ、ウイルスなどの発生を抑える北海道稚内層珪藻頁岩壁材やEM珪藻土、ホタテの貝殻粉末を利用した水性塗料・チャフウォール。床にはカバ、パイン、ヒバ、ナラ、ヒノキ、スギ、地産地消の道産材まで多彩に用意しています。こうした無垢材は木の質感とともに、素足の感触が心地よいのが特徴。これらの自然由来の素材の多くは石油化学製品のようにゴミにはならず自然に還る、人にも環境にも優しいエコ素材でもあります。

床をはじめとする木部の仕上げには、オスモカラーやアウロなど自然由来の健康的な塗料を採用。このほか、合板や新建材などから放出される有害ガスや臭いを封止する最も安全性の高い塗料、AFMセーフコートもシックハウス対策として用意しています。自ら呼吸する生きた自然素材は住まうご家族の身体に負荷のない室内空間をつくり、暮らすほどに味わいを増していくことでしょう。プランづくりでは、お客様の好みやご予算に合う素材を紹介しています。

自然の力が隅々にまで行き渡る健やかな住まいを、私たちと一緒に実現してみませんか。お客様のご要望に合わせ「安心して住み続けられる住まい」を提案させていただきます。

Case.1 札幌市・Tさん宅

住宅性能に注目し、建築会社を探されていたTさんご夫妻。健康的な室内環境を実現するパッシブ換気システムに加え、標準仕様で長期優良住宅レベルの性能を実現できる点が決め手となり、大平洋建業を選んでくださいました。新居には、空気熱を利用したヒートポンプ式暖房とLPガスの高効率ガス給湯暖房機を組み合わせた寒冷地向け給湯暖房システムを採用し、太陽熱を利用してパッシブ換気床下暖房システムの省エネ効果をより高めるソーラーウォーマーを導入。「高い断熱・気密性はもちろん、採光と風通しも抜群。窓の数や配置も住み心地を左右するのだと、改めて実感しました」と、嬉しいお言葉をいただきました。


Case.2 札幌市・Sさん宅

二世帯住宅の新築を検討していたSさんご一家。重要視したのは住宅性能で、温度差で起こるヒートショックや夏場に室内で引き起こす熱中症などの健康被害を考えると、高い性能を備えたパッシブ換気の住まいは同居する母親にとっても最適だという考えのもと、大平洋建業に家づくりを依頼くださいました。パッシブ換気システムをはじめ、上下階ともに心地よく降り注ぐ南からの光、玄関に設けた手洗い場やリビングに隣接するワークスペースなど、さまざまな快適さを備えた暮らしやすい住まいです。


Case.3 札幌市・Sさん宅

私たちがこれまで培ってきた技術力と仕事の丁寧さは、建築家の方々からの高い信頼につながっています。建築家とのコラボレーションにより完成したSさん宅は大きな吹き抜けが心地よく、モルタル調のフロアタイル、木毛セメント板の壁、高さのある合板現しの天井など、ラフな仕上げがDIYやアウトドアを好むご夫妻の暮らしにマッチしています。3匹の猫を飼われておりますが、パッシブ換気システムのおかげで、ペット特有の匂いがまったく気にならないそうです。室内も温度差がなく適温で、人も動物も暮らしやすい環境を実現しています。