「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2023」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、岩手県一関市を拠点に注文住宅を手がける佐藤工夢店の佐藤 誠さんです。

仕立て直したオーダーメイドの住まい

建売ではない住まいをオーダースーツや着物に例えると、私たちはテーラーであり仕立て職人です。採寸して腕の長さや体格に合わせるように、暮らし方や今の生活スタイルに合わせた仕立てをして、新築でもリノベーションでも暮らし始めても違和感のない住まいをつくることができます。

1:1.618の黄金比率は屋根の形に意味をもたせる。大きな片流れ屋根の一面にIさんが設置した太陽光発電パネルが載せられている
1:1.618の黄金比率は屋根の形に意味をもたせる。大きな片流れ屋根の一面にIさんが設置した太陽光発電パネルが載せられている
両世帯の緩衝地帯となる広々とした玄関ホール。ねじれた木材は前の建物からの継承
玄関ホールの一角にはピアノが。暮らしに音楽と笑い声のBGMが鳴り響く
玄関ホールの一角にはピアノが。暮らしに音楽と笑い声のBGMが鳴り響く

新築だけじゃない選択肢。黄金比とリノベーション

Iさんからの家づくりのご依頼で最重要事項だったのは「性能面と設備機能面の充実」でした。そこで性能値はもちろん、デザイン性やプランニング、環境、そして新しい暮らしを考慮し、リノベーションをご提案しました。 

週末は家族全員で食事会をする場になる親世帯のリビング・ダイニング
畳スペースからの目線。リビングとフラットにつながっていて、使い勝手がいい
畳スペースからの目線。リビングとフラットにつながっていて、使い勝手がいい

今回のリノベーションには、美しく見える形として、西洋建築やデザインでよく使われている技法の黄金比(1:1.618の比率)を取り入れました。大きすぎて扱いに困っていた余分な部屋を減築することで「1.618」、採風の流れを取り入れるために高さを出すことで「1」の比率を生み出しました。先人たちが培ってきた技法と技術をリノベーションで活かすことで、歴史と思い出も感じられる新たな住まいをつくることができます。

家族一人ひとりのくつろぎ方に合わせた子世帯のリビング
家族一人ひとりのくつろぎ方に合わせた子世帯のリビング

住宅性能面は、断熱性能UA値0.25・気密性能C値0.105で、新築以上の性能値を確保しています。高断熱・高気密化により消費エネルギーを少なくした上で、施主工事として太陽光発電システムを設置し、またV2H機器とEVで半オフグリッドの暮らしを実現。昨今のようにエネルギー価格が上がっている状況であっても暮らし方が左右されることのない、今のような時代の一つの最適解といえる住まいになりました。  

ユーティリティは、あえて窓をなくし日射による陰がつくられないようにした

高性能で得られる快適性に加えて、ご先祖様から受け継いだ歴史を次世代に残せる付加価値として考えました。アンティーク家具や機械式時計と同じように、次世代に歴史も紡いでいける暮らしの器として、新築では得られない価値がリノベーションにはあります。

建物最頂部に設置した窓による上下温度差換気で、風を感じることができる2階書斎
夜明けを迎える寝室の窓は広葉樹林の景色を切り取る

■建築DATA
岩手県一関市・Iさん宅 
家族構成/夫婦30代、子ども1人、両親、祖母
構造規模/木造・2階建て
延床面積/185.11㎡(約55坪)

設計/佐藤工夢店(株) 佐藤 誠
施工/佐藤工夢店(株)

撮影/小川 祐


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