好きをひもとき、二人三脚で暮らしをデザイン[家づくりの本質編]
家づくりの最前線で活躍するプロを訪ね、これからの家づくりにあらかじめ知っておきたい考え方や基礎知識をうかがう取材シリーズ。
目次
恵庭市を拠点に、北海道で快適に暮らせる高性能住宅づくりに取り組んでいるキクザワ・専務取締役の菊澤 章太郎さんに、ハード面のみならず暮らしと生き方のデザインまでサポートしていく工務店としての、「家づくりの本質」に対する考え方を語っていただきました。

専務取締役
菊澤 章太郎さん 1991年生まれ。2018年に愛知県の工務店での修行を終えUターン。キクザワの家づくりを継承しながら、設計はもちろん人材育成に至るまで、時代に即した改革を行いながら幅広い業務を担っている3代目。一級建築士
もはや高性能住宅は当たり前。建築を言語化するのがプロの仕事
北海道の住宅はもはや、高断熱・高気密といった性能面を価値として訴求する段階ではなくなってきました。キクザワでもいち早く高レベルの標準性能を実現し、現在は耐震等級3やZEHなど、ニーズを先取りした仕様で家づくりを行っています。では高性能を前提にした家づくりにおいて、大切なのはどういった点でしょうか?
キクザワが創業当初から大切にしてきたのは、「住まいは、お客様と共に創り上げるもの」という定義です。私たちの役割は“暮らしをデザインすること”。それは、単に見た目を整えることではなく、お客様の「こう在りたい」「こう暮らしていきたい」という想いを、プロの知識やセンスを生かして建築の言葉で形にしていくことです。動線の工夫や居心地のよさまでを含めて、家族の生き方そのものを住まいに映し出していく―。それが、私たち専門家に求められる仕事だと考えています。
そのために必要なのが、プランに入る前のカウンセリング。会話の中からお客様が重視するもの、望んでいることをくみ取って図面に起こし、それを介してキャッチボールする。そのプロセスを重ねたからこそ出てくる疑問や要望を引き出し、優先順位づけを一緒にしていく作業を大事にしています。予算も含め、総合的なバランスを見て整理することが最初の段階で必要です。
情報だけにとらわれすぎない肌で感じる心地よい暮らしを
今は誰もがインターネットで膨大な情報にアクセスできる時代。その分、完成形やカタログスペックにこだわりすぎて、家づくりの本質を見失ってしまうケースも少なくありません。情報の取捨選択をする際には、まず自分たちの暮らし方をきちんとイメージすることが大切です。
そのためには「自分の好き」をひもとくこと。SNSで家の写真を見て「いいな」と思ったら、何が気に入ったのかについて分析してみる。雰囲気なのか、素材なのか、デザインなのか。また、自分たちの暮らしにどのように生かしていきたいのか。そのうえで建築のプロの知識やセンスを借りて、一緒に暮らしをデザインしていくのです。
また、数値などの情報に頼りすぎないこと。例えば、「広さは絶対に35坪以上」とこだわる方がいて、では何を根拠にしているかとお聞きすると、インターネットやテレビなどで得た知識だったりします。家というのはあくまで住む方の暮らしありき。ライフスタイルに合わせたスペースや間取りを積み上げた先に、結果として面積が出てきます。
「データで見ていいと思ったけど、建ててみたらイメージと違った」ということにならないようにするためには、実際にモデルハウスやショールームに足を運び、その空間の雰囲気を体感してみることも大切です。居心地の良さというのはアナログで感覚的なもので、モデルハウスに行ってみると、図面の数字では狭いと感じたLDKが、吹き抜けや窓の位置、動線の工夫などで、広々と開放的に感じたりします。肌で感じる心地よさは、暮らしやすさにも直結します。
100点じゃなく80点でいい。「余白」を残した家づくり
キクザワではお客様に、「最初から100点ではなく、80点の家でいい」とお伝えしており、その20点分の「余白」を残しておくことを大前提に、ご提案をしています。
家は、何十年と住み続ける場所。今は小さな子どもがいて子育て中心の生活だとしても、10年後、20年後には夫婦二人の暮らしになったり、将来的に両親を引き取るかもしれない。そういったライフステージの変化が必ず出てきます。また住んでみて初めて分かることも多く、そのたびに柔軟に変更できる余白がないと、きっといずれ住みにくい家になってしまいうでしょう。
「今」だけを見た家は一瞬100点のように感じても、時間が経てば暮らしに合わなくなることがあります。だからこそ、長い時間軸で暮らしを見据え、自分の「好き」を丁寧にひもときながら、プランや意匠・設備といった“人によって異なる価値”をどう選び取るか。また、残した“余白”を、日々の生活の中でどう育てていくかが、暮らしの豊かさにつながります。
それを踏まえて私たちが大切にしていることの一つにアフターケアがあります。何かあったらいつでも相談できる、駆けつけられるという地域工務店ならではの強みを生かしながら、お客様との関わりの中から生まれる信頼関係を大切に、長いお付き合いを支えていきます。家づくりは人と人との営み。「この人と一緒に家をつくりたい」と思っていただける工務店であるために、私たちも日々、家づくりの本質を探求しています。
Case.1 恵庭市・菊澤さん宅


高性能・高機能であり、子どもたちが安心して過ごせる環境を未来へ引き継げる家としてつくった自宅です。UA値0.19、C値0.15という高い断熱・気密性能に加え、自家消費専用システムを設け、蓄電池や電気自動車から住宅に配電できるV2Hシステムも導入しています。造作はつくり込みすぎないことを心がけ、家族の暮らしの変化を楽しみながら、ゆっくり育てていけるような住まいを目指しました。
Case.2 札幌市・Tさん宅


築30年以上経った約56坪の二世帯住宅を、子育てを終えたご夫妻の暮らしに併せてフルリノベーションしました。性能向上に重きを置き、断熱等級7をクリア。太陽光発電パネルも備え、ZEH仕様を実現しています。プランは、2階部分を約14坪減築し、1階で日常生活がすべて完結できる平屋的な間取りに改めました。奥さんの居場所になったのは広くて明るいダイニング・キッチン。アイランド型のキッチンを中心に、水まわりから玄関、リビングへぐるりと回れる回遊動線も便利です。
Case.3 石狩市・Tさん宅
Tさんがキクザワと二人三脚でつくり上げた新居は、タモ材の木格子(ルーバー)が随所に映える北欧ナチュラルテイストの住まい。このルーバーをはじめとし、適材適所にデザイン性と機能性を兼ね備えた造作を施しているのが特徴です。リビングは、2本の梁が存在感を放つ大きな吹き抜け空間が圧倒的な開放感を演出。UA値0.19・C値0.21の高い断熱・気密性能を確保しているため、オープンな間取りでも、一年中均一・快適な室内環境で暮らせる居心地のいい住まいになっています。
- 株式会社キクザワ
- キクザワは、恵庭の地で48年間、住まいに求められる「性能」「デザイン」「安心」を三つの軸として、お客様と“共に創る”家づくりを行ってきました。北海道の気候に適した高断熱・高気密の家は、四季を通じて快適な暮らしを支えるとともに、木の温もりと優しい光を生かした設計が空間に自然の美しさを添え、自社大工の丁寧な施工が確かな安心を届けます。一生に一度の家づくりだからこそ、私たちはこれからも『住まいはお客様と共に創り上げるもの』を社是としてお客様の想いに寄り添い、ご家族が笑顔で暮らせる住まいを築いていきます。
- 対応エリア
- 石狩市、苫小牧市、札幌市、岩見沢市、江別市、三笠市、千歳市、恵庭市、北広島市

