妥協しないものづくりと新たな柱の構築[生き抜く力編]

公開日:2025.9.29 最終更新日時:2025.9.29

家づくりの最前線で活躍するプロを訪ね、これからの家づくりにあらかじめ知っておきたい考え方や基礎知識をうかがう取材シリーズ。


地域に根づいて65年以上。道産木材を使った、性能・デザイン性に富んだ家づくりは、その先にあるお客様の「北海道での暮らし」をつくっています。年々厳しくなる住宅業界で生き抜くには「妥協しないものづくり」と「時代に合わせた新たな柱の構築」が大切だと3代目の田中裕基代表は語ります。


(株)三五工務店
代表取締役
田中 裕基さん

1982年札幌市生まれ。大学卒業後、東京の飲食コンサルティング会社勤務を経て、2009年祖父が創業した三五工務店に入社。現場経験を積み、2020年に代表取締役に就任。現在に至る

住宅事業を続けていくための新たな柱の必要性

三五工務店は、宮大工棟梁だった私の祖父が創業しました。地主から直接仕事を受けるようになったことをきっかけに工務店業を開始し、2代目の父の代には設計・施工の一貫体制を整えるとともに、高断熱・高気密住宅を実現し、三五工務店の礎を築きました。これまで65年以上変わることなく貫いているのは「ものづくりには妥協しない」ということ。大工にとって難易度の高い建築、いわゆる「手間ひまのかかる家」を建て続けてきたことで、三五工務店の木造建築の技術は磨かれてきました。

10年程前からは、性能とデザイン性の両方を兼ね備えた家づくりを実現し、北海道の持続的な発展にも貢献できるよう、構造材・外装材・床材をすべて道産木材に切り替えました。さらにより多くの方に私たちの家づくりの考え方が伝わるよう、飲食事業、店舗内装、家具の製作・販売といった住宅周辺事業を展開するなど、暮らしにまつわるさまざまな提案に力を入れています。

こういった事業の多角化は簡単なことではありませんでした。そのため長期目標を立て、社内に毎年のビジョンを明確に提示することで、社員全員が同じ目標に向かって走れるような環境づくりをしていきました。その過程でたくさんの失敗も経験しましたが、さまざまなチャレンジで得られた知見は今の三五工務店の血肉になっていると実感しています。

北海道の暮らしに寄り添った豊かな住まいづくり

近年では、長年の木造住宅建築で培ったノウハウを生かして、北海道ボールパークFビレッジにある複合施設「THE LODGE」をはじめとする商業木造建築にも力を入れています。

2025年5月には『北海道の暮らしが集まる山。』をテーマに、レストラン、ショップ、アート、そして宿泊施設が集う滞在型複合施設「山郷(さんごう)」をオープン。ここにあるライフスタイルショップ「ten to ki(テントキ)」は、家づくりの初期段階から「どんな家具と暮らすのか?」という視点を大切に、日々の豊かさを左右する家具や雑貨の提案も行っている三五工務店の想いを形にしたものです。

これらの場所は、三五工務店がつくる「北海道の暮らし」を体感できるいわばショーケースのような存在。これから住宅を建てる予定の方にも触れていただくことで、私たちの世界観が伝わるはずです。

三五工務店のコンセプトは「今日、北海道で生きている」。もっと北海道を好きになるような暮らしづくりを常に考えています。少し大きいことを言っているのではと思ったこともありましたが、数々の挑戦を経て、今の三五工務店はこれにかなり近づいてきたのではないかと思っています。

北海道を豊かにするということは私一人や会社だけで実現できることではありませんが、寄与することはできます。この最高な北海道が、三五工務店が関わることでより価値のあるものになればいいと思いますし、そうすることで地域や、一緒に働いている人たちも豊かになると信じています。その中でできるビジネスを行い、得たものをこの北海道に還元していくつもりです。

価値ある北海道の家を真剣に考え建てる

この5年間が「挑戦」の時期だったとすると、これからの5年間は「磨き」の時期。これまでのように新しい事業を増やすのではなく、丁寧に磨いていく時期だと思っています。

そして事業の多角化ばかりに目を向けられがちですが、三五工務店の主軸はこれからも変わらず住宅事業にあります。豊かな北海道暮らしを楽しめる家を建て続けていくために、地域とのつながりをさらに強めながら磨きをかけていくことで「北海道の工務店=三五工務店」といわれるような状況をつくる。北海道産の木をふんだんに使った木造建築だからこそ生み出せる価値を追求し続け、お客様に認められる企業になることが、私たちの目標です。

「妥協せず本質と向き合ったものづくりを続けること」、そして「時代に合わせて新たな柱を構築すること」が、三五工務店は考える住宅業界で生き抜いていく方法です。これからも私たちは、暮らしをトータルプロデュースする工務店として、本質と向き合ったものづくりにこだわりながら、北海道の暮らしに寄り添った家をつくり続けていきます。

Case.1 山郷 春 Villa-SHUN-

北海道の木材をふんだんに使い、周囲の自然と調和するように建つ「山郷(さんごう)」の5棟のヴィラのうち一つ。森に面した窓から見える四季折々の風景と薪ストーブの炎がゆったりとした贅沢な時間を演出します。ガルバリウム鋼板や道南スギ、ジョリパット、札幌軟石など、内外に多彩な素材を用いながら、タモの無垢床やカラマツの構造材といった三五工務店らしい素材を織り込むことで、北海道の森に応答する土着的な雰囲気に仕上げました。

Case.2 小樽市・Tさん宅

側には森が広がるロケーションながらも、南側には建物が隣接する敷地条件の中で、Tさんが希望する「中庭を囲むカーテンレスの暮らし」「組み込み車庫」「広い書斎スペース」を叶えた、コの字型プランの住まいです。全面にタイルを敷き、階段のステップに札幌軟石を設けた掘り込みフロアのリビングが中心となる男性的なテイストの空間に、高級感漂う白のフルオーダーキッチンがナチュラルさと上品さを添えるなど、素材の違いや比率の変化で豊かな表情を演出しています。

Case.3 札幌市・Kさん宅

川沿いに続く公園や山々の緑に囲まれた五角形の変形敷地に建つ住まいです。「夫婦で営んでいるヨガ教室を将来的に自宅でできるようにしたい」という希望に応え、1階にヨガスタジオ、2階にLDKを配して公私を分離したプランとしています。薪ストーブが鎮座する仕切りのないLDKは、無垢床や現し天井の木質感と白の内壁が調和する上質な空間。雑多な情報を取り込まず、緑や空だけを捉える窓計画を徹底し、住宅街でありながらも自然を享受する豊かなLDKを実現しました。

会社情報
株式会社 三五工務店
これまで65年以上にわたり三五工務店は、地産地消の考え方と本質に向き合ったものづくりへのこだわりを内包した、高品質な住まいをご提供してきました。北海道の素材を使って、もっと北海道が好きになる家・時とともに味わいが増す家を建てることを、私たちは常に心がけています。デザインと性能、そして暮らしやすさを兼ね備えた、理想のライフスタイルが実現できる北海道の家を、三五工務店は建て続けていきます。
対応エリア
札幌市、小樽市、岩見沢市、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、道央その他

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