よりクリーンで快適な室内環境への進化を求めて[室内環境デザイン編]

公開日:2025.9.27 最終更新日時:2025.9.22

家づくりの最前線で活躍するプロを訪ね、これからの家づくりにあらかじめ知っておきたい考え方や基礎知識をうかがう取材シリーズ。


札幌市を拠点に自然の力を生かした家づくりに取り組んでいる大平洋建業(株)代表取締役の佐藤 誠さん。健康を左右する室内の空気環境に真剣に向き合い、パッシブ換気にプラスアルファの提案を行っています。健やかで快適な暮らしを支える「室内環境デザイン」について、語っていただきました。


大平洋建業(株)
代表取締役
佐藤 誠さん

札幌市生まれ。一級建築士、1級建築施工管理技士。2000年に大平洋建業に入社し、自然の力を生かした家づくりに取り組む。NPO法人パッシブシステム研究会の理事として、パッシブ換気住宅の普及にも努めている

目には見えない室内の空気環境が健康を左右する

室内の空気には、アレルギーの原因となる花粉やカビ、ダニのふん、ほこり、PM2.5、ウイルス、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエンなど、目には見えない有害物質が含まれている場合があります。一方で、人が取り込む空気の量は1日に約20㎏。食べ物の約10倍の空気を体に取り込んでいるともいわれています。想像してみてください。無意識に吸い込んでいる空気にアレルゲンとなる物質がたくさん含まれていたら、私たちの体はどうなるでしょうか。

私が大平洋建業に入社した当時、「シックハウス症候群」が社会問題になり始めていました。新築の住まいなのに、室内にいるだけで体調が悪くなる。屋外へ出ると症状がなくなったり、軽くなったりするのが、シックハウス症候群の特徴です。その原因の一つが、住まいづくりに用いられた建材や内装材に含まれる揮発性有機化合物(VOC)と言われています。シックハウス症候群が一般に周知されたことで、住環境と健康問題の関係、換気の重要性が一般社会でも大きく注目されるようになってきました。

ご家族の夢を託したマイホームに安心して住んでいただきたい。そんな想いから、私たちは調湿・消臭効果が高く、カビやダニの発生を抑える稚内層珪藻頁岩やEM珪藻土、ホタテ貝殻粉末を用いた水性塗料チャフウォール、木部の仕上げには自然派塗料を採用。できる限り健やかな室内環境を実現できるよう、体に優しい天然由来の素材を厳選し、さまざまな対策を行ってきました。

アレルゲン物質を効率よく排出する持続可能な換気方式

ところが、どれほど建材を吟味し尽くしても、ベニヤ類にアレルゲン物質が含まれていることが多くありました。24時間換気採用の義務付けもなかった時代に私たちが着目したのが北海道の大学や公的研究機関の研究者が提案していた「パッシブ換気システム」でした。

このシステムは、寒冷地での冬の内外温度差を利用した暖房・換気方式。給気口から取り込んだ新鮮な外気を床下に設置した放熱器で暖め、床下から屋根裏へ自然循環させることで全室の暖房と換気を同時に行う、北海道が生んだ画期的なシステムです。スイッチやフィルター、ダクトがないため、メンテナンスが基本的に不要。建物が存在する限り24時間、自然に換気し続けます。

私たちは多くの専門家が関わる「NPO法人パッシブシステム研究会」にも参加し、その研究の最前線で学んできました。また、経験や勘に頼らない施工ができるよう、最新技術を社内でも共有しています。その結果、北方型住宅ECOの基準をクリアする住宅性能も実現。気密性が高まったことで、空気が計画どおりに室内で循環し、より少ないエネルギーで快適な室内環境を保てるようになりました。

さらに、床下の空気を太陽熱で暖める「ソーラーウォーマー」の併用によって、より高い省エネ性を実現することができました。空気の流れや太陽熱などの自然の力を最大限に生かすことが、時代が求める住まいの脱炭素化、エコにもつながるのではないかと考えています。

よりクリーンで快適な室内環境へと進化し続けるために

大平洋建業がパッシブ換気システムに取り組み始めて20余年、これまでに約80棟の新築住宅をつくり上げてきました。その中には、何らかのアレルギー疾患で悩まれていた住まい手も多くいらっしゃいます。私たちは、そうした方々にもっと寄り添える家づくりがしたいと、常に新しい技術に目を向けてきました。

近年着目しているのが、プラチナチタン触媒と太陽光(紫外線)によって花粉、ハウスダスト、ウイルス、化学物質などの有害な物質を分解して空気中に返す「エアープロット」という特許技術です。こうした革新的な技術も取り入れながら、「安心して住み続けられる健やかな家」をさらに進化させていきたいと思っています。

また、多様化する住まい手のニーズに応えられるよう、パッシブ換気システムと北方型住宅ECOの基準を満たす住宅性能にプラスアルファの提案をしていきたいと考えています。例えば、外壁設置型の太陽光発電パネルと蓄電池を採用し、化石燃料に依存しないパッシブ換気の住まい。また、これまでの経験を生かした中古住宅のフルリノベーション。パッシブシステム研究会に参加している建築家との協業で実現するデザイン性に特化した住まい。アイデアは尽きることがありません。

雪対策のために、基礎高にしたMさんご一家の住まい。Mさんの好きな赤を採用した三角屋根が雪景色に映える。床下から給気した新鮮な空気は、室内をくまなく暖めたのち、2本の排気筒から排気される

まだまだ手がけてみたいこともたくさんあります。これからも、選択肢を多く用意して、自然の力を生かしながら「無駄と無理のない家づくり」を、住まうご家族とともに実現していきたいと考えています。

Case.1 札幌市・Sさん宅

Sさんご夫妻が叶えたかったのは、人も動物も周囲を気にせずにのびのびと暮らせる住まい。1階に大きな吹き抜けのあるオープンなLDK、2階には愛犬の留守番スペースを兼ねたセカンドリビングと寝室、水まわりをレイアウトした開放的なプランをご提案しました。24時間健やかな室内環境を実現するパッシブ換気は「空気感が自然で、ペット特有の臭いもまったく感じません。また、室温が一定に保たれているので、仕事の日も不安なく出かけられます」と、ご夫妻からも好評です。

Case.2 札幌市・Mさん宅

ワンフロアでの生活も可能な平屋ベースで設計した住まいです。どこもゆったり広々で、大きな窓からたっぷりの陽射しが注ぐ南向きのリビングは、明るく開放的。Mさんが大切にしている庭にも直接出入りできます。Mさん宅にはパッシブ換気に加え、陽当たりに恵まれた立地を生かし、取り込んだ外気を太陽熱で暖めることで省エネ効果を高める「ソーラーウォーマー」も採用しています。

Case.3 札幌市・Mさん宅

Mさんは長く住む家だからこそ、耐久性や住宅性能などのハード面を最優先されていました。長期優良住宅レベルの高い標準性能とパッシブ換気をベースに、ソーラーウォーマー、空気熱を利用したヒートポンプ式暖房とエコジョーズ(LPガスの高効率ガス給湯暖房機)を組み合わせた寒冷地向け給湯暖房システムを採用。健康的な室内環境のみならず、経済性も高い省エネ住宅を実現しました。

会社情報
大平洋建業(株)
伝統を継承しながらも、常に新しいことにチャレンジし、お客様に魅力的だと感じていただける住まいをご提案していきたいと考えています。大平洋建業では、仕事の質を高い基準で維持し細かな打ち合わせを重ね、一棟一棟丁寧な施工を心掛けています。 私たちは何かあればすぐに相談できる、信頼感と安心感のある地域ビルダーでありたいと考えています。家の新築や建て替えは、人生において、そう何度も経験するものではありません。だからこそ私たちは、お客様ひとりひとりの夢や希望を徹底してヒアリングし、ご家族が快適に暮らすための心地良い場所をカタチにしています。
対応エリア
室蘭市、苫小牧市、登別市

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