住宅街の小さな書店の物語
福島のリノベーションで注目の地域ビルダーをご紹介! 「活かす・変わる」という、リノベならではの魅力をお伝えします。
福島市の住宅街の中に、昨年小さな書店が誕生しました。地域の人たちのよりどころになりつつあるこの場所ができるまでのお話をうかがいに「はなみずき書店」を訪ねました。
自宅リノベーションで叶えた
小さな書店を開く夢
福島県立美術館で学芸員を長年務めたAさんは、リタイア後の2024年12月、折からの夢であった書店を開業しました。
その名は『はなみずき書店』。ご自宅の一部を改装した小さな書店です。基本構想やインテリア、全体のディレクションは、Aさんと旧知の仲であった福島市内のデザイン事務所FRIDAY SCREENが担当。同社の依頼で、二本松市の齋藤工匠店が実施設計と施工を担当しました。
当初は「どこか適当な場所に物件を借りよう」と考えていたAさんですが、条件に合うところがなかなか見つからなかったため「ならば自宅で」と方針転換。ご自宅周辺は閑静な住宅街で、学校や美術館、図書館が近い文教エリアであることも、決断の後押しになったといいます。


Aさん宅は、約30年前に大手ハウスメーカーによって建てられた住まいです。型式適合認定を取得している可能性が高いため、改修にあたっては、認定に関わる外壁や構造には手を加えることができないという制約が伴いました。
そこで新築時には自社での構造計算を必須とするなど、構造に精通した齋藤工匠店では、デメリットを回避しながらリノベーションを敢行。「築年数の割にはポテンシャルが高く、断熱も耐震も問題のない家でしたので、最小限の改修で素敵で快適な空間を実現できました」と、同社代表の齋藤守平さんは語ります。
デザイン事務所と工務店の連携で
生み出した地域の憩いの場
書店のスペースにあてたのは、収納部分を含めて10帖ほどになる西側の一室です。FRIDAY SCREENの鈴木孝昭さんと坂内まゆ子さんが、Aさんからお店のイメージを引き出し、齋藤さんも交えて話し合いながら、内装のコンセプトを「アート×植物」に設定。美術館のホワイト・キューブを思わせる白壁の空間の中に、造作した木製の本棚やテーブル、葉をデザインした手づくりの照明をあしらい、彩りと温もりを添えました。


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施工に関しては「本が主役なので、限られた空間の中でたくさん本が置けるよう心がけました」と齋藤さん。
非構造体の下がり壁や飾り柱を排除してできるだけスペースを確保するとともに、重量のある本を支えるため、床にも壁にも合板を張って補強。本棚の棚板の継ぎ目には、厚さを半分ずつ削り取った板材を相互に張り合わせる“あいじゃくり加工”を用い、本を載せたときにその重みでぴったり納まるよう、あえて隙間を空けて加工するひと手間も施されています。

「完成した空間は想像以上の素晴らしさでびっくり。明るく開放的で、気持ちよく働けています」とAさん。地域の人はもちろん、最近では「インスタを見た」と遠方から足を運ぶお客様も徐々に増えているそうです。「この素敵な空間を、本を通した交流の場として使ってもらえれば嬉しいですね」と語る笑顔が、日々の充実を物語っていました。

はなみずき書店をリノベした人たち
FRIDAY SCREEN
鈴木 孝昭 / 坂内 まゆ子
福島市清水町字東裏20
TEL 090-9308-9461
https://friday-screen.com有限会社 齋藤工匠店
二本松市針道字町47番地3
TEL 0243-46-2323
https://saitocoshoten.co.jpはなみずき書店
福島市森合字丹波谷地前29-10
https://hanamizukibs.square.site
Instagram:https://www.instagram.com/hanamizukibs
- 会社情報
- 社名 有限会社 齋藤工匠店
- URL https://saitocoshoten.co.jp
