庭が暮らしに溶け込む 職住一体のカラマツの家

公開日:2025.12.24 最終更新日時:2025.12.24

Replanが取材した、北海道・東北の素敵な住まいづくりの話をご紹介します。

14年前、岩見沢市内で中古住宅を購入し、3人のお子さんを育てていたHさんご夫妻。「終の棲家と思って購入した家でした。でも、長女と長男が巣立つめどが立つと、延床面積約56坪という広さや経年劣化が気になり始めました」というご夫妻は、住み替えを検討。

傾斜地の土地なりに設えた建物は、緩やかな坂道を上り、見えた景色にすっきり納まる配置にこだわった。外壁は経年変化が楽しめるカラマツ荒木材の下見板張り
傾斜地の土地なりに設えた建物は、緩やかな坂道を上り、見えた景色にすっきり納まる配置にこだわった。外壁は経年変化が楽しめるカラマツ荒木材の下見板張り

若い頃から「何かモノづくりをライフワークにしたい」と考え続けていた奥さんは、戸建て暮らしを始めてから庭で育てた草花を生かしたドライフラワー製品の販売を手がけるようになっていました。「もっと広く、環境のいい土地で、思う存分モノづくりに没頭できる住まいを建てたい」。その想いも、住み替えの後押しになりました。2021年、雑木林に隣接した約300坪の土地を購入したご夫妻は、旧居の外装リフォームを依頼した武部建設とともに、新居のプランづくりを始めました。

土間仕上げのリビングは、奥さんのモノづくりスペースとして活用されている
土間仕上げのリビングは、奥さんのモノづくりスペースとして活用されている
現しの梁にガイシ配線を採用したダイニングキッチン。住まい手の使い勝手に柔軟に寄り添えるよう、キッチンの設備も最小限に留めた
現しの梁にガイシ配線を採用したダイニング・キッチン。住まい手の使い勝手に柔軟に寄り添えるよう、キッチンの設備も最小限にとどめた

「リフォーム以来、武部建設がいつも近くで住まいを見守ってくれているという安心感があり、迷うことなく新築をお願いしました」。そう語る奥さんは、プランづくりにあたり、植物がスクスクと育つ職住一体の住まいを要望しました。また、1階に薪ストーブを備えた庭と一体となる店舗スペースを設け、いずれ夫婦2人暮らしになる居住スペースはミニマルに、内外装にはできる限り木をたくさん用いたいと伝えました。武部建設は、庭や雑木林を室内からも存分に楽しめる開口プランや古建具や新旧のストック材をポイントに用いた内装仕上げを提案。「つたない言葉で伝えた要望も、武部建設はしっかり読み取って、思い描いていた以上の提案をたくさんしてくれました」と、奥さんはプラン時を振り返って話します。

居住スペースの階段は、吹き抜けの3連窓からの自然光がきれいに射すようにスケルトン仕上げに。武部建設でストックしていたナラとタモ、キハダ、エンジュの無垢材を使用し、親柱の婆娑羅(ばさら)継ぎという伝統手法で材をつなぎ合わせて意匠とした
居住スペースの階段は、吹き抜けの3連窓からの自然光がきれいに射すようにスケルトン仕上げに。武部建設でストックしていたナラとタモ、キハダ、エンジュの無垢材を使用し、親柱の婆娑羅(ばさら)継ぎという伝統手法で材をつなぎ合わせて意匠とした
2階は家族のプライベート空間を集約。北側の庭と雑木林を望む開口を設置した廊下に沿って、次女の個室、水まわり、寝室を配置
2階は家族のプライベート空間を集約。北側の庭と雑木林を望む開口を設置した廊下に沿って、次女の個室、水まわり、寝室を配置
カラマツの屋根なり勾配天井の寝室。Hさんの書斎としても活用できるよう、窓にはデスクも備えた。冬は開口からの陽射しと薪ストーブの煙突から伝わる熱が空間を優しく暖める
カラマツの屋根なり勾配天井の寝室。Hさんの書斎としても活用できるよう、窓にはデスクも備えた。冬は開口からの陽射しと薪ストーブの煙突から伝わる熱が空間を優しく暖める
ワイドスパンの造作洗面台を設えた2階ユーティリティは、洗濯室も兼ねる。右手手前は、浴室
ワイドスパンの造作洗面台を設えた2階ユーティリティは、洗濯室も兼ねる。右手手前は、浴室
店舗の造作手洗いとトイレにも、木をふんだんに用いた。カラマツ無垢材の色が際立つよう、店舗の壁はグレーの珪藻土で仕上げた
店舗の造作手洗いとトイレにも、木をふんだんに用いた。カラマツ無垢材の色が際立つよう、店舗の壁はグレーの珪藻土で仕上げた

2024年8月に完成した新居で暮らし始めたご夫妻が驚いたのが、住み心地の良さ。「性能や設備の進化を実感しました。光熱費もぐっと安くなりました」と、奥さんは声を弾ませます。大きな窓を設けた店舗スペースは、厳冬期も薪ストーブに朝晩、薪をくべるだけで快適な室温を保つといいます。

店舗にはカフェも併設。カウンターには、武部建設がストックしていた古民家の解体材、タモを採用。既存の加工跡や節、割れもそのまま意匠として生かした
店舗にはカフェも併設。カウンターには、武部建設がストックしていた古民家の解体材、タモを採用。既存の加工跡や節、割れもそのまま意匠として生かした
庭との一体感、動線の良さを実現する大開口を設けた店舗スペース。掃除のしやすい土間仕上げの床には、ヨツールの薪ストーブも設置。木とモルタル、珪藻土で仕上げたシンプルな箱のような店内を、奥さんが育てた色鮮やかな花々と多肉植物が彩る
庭との一体感、動線の良さを実現する大開口を設けた店舗スペース。掃除のしやすい土間仕上げの床には、ヨツールの薪ストーブも設置。木とモルタル、珪藻土で仕上げたシンプルな箱のような店内を、奥さんが育てた色鮮やかな花々と多肉植物が彩る

玄関を中心にパブリックとプライベート、2つの空間をつなぐ土間仕上げの廊下が延びる。居住スペースの境目には、古建具をつくり替え再利用した引き戸を設置
玄関を中心にパブリックとプライベート、2つの空間をつなぐ土間仕上げの廊下が延びる。居住スペースの境目には、古建具をつくり替え再利用した引き戸を設置
カラマツの温かな木目に包まれるような玄関ポーチ。手すりや階段、軒天など細かな収まりにも気を配った
カラマツの温かな木目に包まれるような玄関ポーチ。手すりや階段、軒天など細かな納まりにも気を配った

雑木林を背景に広がる庭には、住まいの外壁とそろえたカラマツ板張りの小さな作業小屋も造作。「当初はコンテナを購入する予定でしたが、武部建設に相談したら、予算内で造作してくれることになりました。おかげで、住まいと調和のとれた庭になりました」。

庭から建物を見る。傾斜地ならではの高さレベルのズレによって、住宅街にありながら心地よい視線の抜けが生まれた。奥さんが丹精する草花が咲く庭に、大工の手仕事を生かした作業小屋がしっくりとなじんでいる
庭から建物を見る。傾斜地ならではの高さレベルのズレによって、住宅街にありながら心地よい視線の抜けが生まれた。奥さんが丹精する草花が咲く庭に、大工の手仕事を生かした作業小屋がしっくりとなじんでいる

2度目の夏を迎えた庭には、広葉樹や花木が植えられ、店舗から庭へ出入りしやすいようセルフビルドでウッドデッキも設えられました。「これからも、武部建設に助けてもらいながら、モノづくりを楽しむ暮らしをさらに充実させていきたいと思います」。庭の緑が濃さを増し、花々の彩りが増すほどに、手づくりの暮らしも実り豊かになっていくことでしょう。

会社情報
武部建設株式会社
自社設計・直営施工を基本に、デザイン・性能・機能そして環境を絶えず念頭に、物語性を重視して、お客様と共に「ものづくり」に励んでいます。木にこだわり、道産材や国産材だけでなく、地域の山から原木を仕入れるなど、多岐にわたる木材を使いこなす空間を提案できるのは、それを形にできる腕のいい大工がいるからこそ。住めば住むほどに愛着を増す手づくりの家、それが武部建設の家づくりです。
対応エリア
北海道

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