余白の中で可変する都市と自然を媒介する住まい
10年後、15年後のあなたの暮らしはどんなものになりそうですか?
「家を持ちたい」と思ったとき、今どんな暮らしをしたいかをイメージしながらあれこれと計画を練る楽しみは家づくりの醍醐味です。しかし、その家で過ごす10年後、15年後の暮らしがどんなものになるか、イメージすることは少し難しいかもしれません。
注文住宅を建てたり、リノベーションをして長年住んでいる人の暮らしはどんなものなのか。新築時に思い描いていたとおりなのか、思わぬ変化が訪れているのか。築10年以上のお宅を訪問し、日々の暮らしぶりと年月を経て変わらないこと、変わったことを聞いてみました。これから家づくりを考える人に参考になるお話が、あふれています。
豊かな緑が残る札幌市中央区の住宅街。道南スギの外壁が周囲に溶け込むその家は、建築家の弘田亨一さんが10年以上前に建てた自邸兼事務所です。新築工事中に生まれた娘さんとともに、月日を重ねていった弘田さんご一家。時の流れに寄り添い、住まいもご家族の暮らしも変化していきました。


コンセプトは「都市と自然の媒介」。住宅街と自然を等しく受け止めるよう、緻密に計算された開口が室内を貫いています。南北に長い敷地は1.5メートルの高低差があり、内部はスキップフロアで構成。北側に事務所、南側に住居を配し、2階のテラスでつながるプランです。内部での往来を避けることで暮らしと仕事に自然な切り替えをもたらしました。


完成から10年あまり。弘田さんの住まいは豊かな変化を重ねています。外壁の道南スギは赤みが抜け、落ち着いた風合いに。2021年には隣家を購入してリノベーションを行い両親の住まいへ。庭を介して両家が行き来するにぎやかな日々が生まれました。

内部も暮らしに応じて柔軟に変化しています。広いエントランスは、スキー道具の手入れの場から今は娘さんのグランドピアノの居場所に。隣接するオープンな個室はご夫妻の寝室に。中二階の個室は家族3人の寝室から子ども部屋へと役割を変えました。

LDKも素材更新で印象を一新。ダイニングは既存のテーブルにワーク用のテーブルを加えて長テーブルとし、天板をモールテックスに。ダイニング一角のワークスペースには同素材のデスクを造作し、娘さんの勉強や奥さんの作業場に活用しています。

「暮らしの変化に対応するには、決め過ぎず余白を持つことが大切です」と弘田さん。仕切りを最小限にとどめ、敷地の高低差を生かしたレベル差によるゾーニングもまた、暮らしの可変性を支えています。

「当初は事務所も私一人でしたが、今はスタッフもいます。テラスを介した行き来もなくなったので、テラス部分に増築を検討中です」と弘田さん。完成から10年を経てもなお、この住まいは進化を続けています。

● Before・After
変わらないこと。|各エリアの使い方は、家族の暮らしの変化に応じて柔軟に可変して来ました。対して、キッチンや回遊動線を持つ水まわりなど用途が明確な空間は、この10年間ほとんど変わっていません。洗濯や料理といった家事を支える確かな軸を守りつつ、内部の活動はおおらかに変化し続けます。


変わったこと。|素材の変化とともにご家族の暮らしも変化。隣家は両親の住む家となり、庭を介して行き来きするにぎやかな日常となりました。竣工間近に生まれた娘さんも小学生となり、広いエントランスにはピアノが置かれ、自室もできました。住まいの余白を生かして、ライフステージに応じて柔軟に可変します。


DATA
札幌市中央区・弘田さん宅
家族構成 夫婦40代・子ども1人
設計 弘田亨一設計事務所
施工 常磐工業
- 会社情報
- 社名 弘田亨一設計事務所
- URL https://khao.jp
- Replan SUMAIナビ https://www.iloie.com/companies/d10199
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