「広場」に屋外の気配を感じる理由のひとつは、意識的に取り入れた「温度差」。LDKよりも冬は少し寒く、夏は少し暑い肌感覚が、外の気温や季節感をさりげなく伝える。また日々刻々と変化する光や窓の外の景色、四季折々に姿を変えるアオダモの木が自然と視界に入ってくる設計も、家の中にいながら外とのつながりを常に感じられる一因となっている

中庭を住まいの一部として取り込んだ「広場」のある家。広場の床はコンクリート土間で、奥に5帖ほどのフローリング敷きのフリースペースがあり、近いうちに奥さんが洋服と雑貨のお店を始める予定。広場の上部は吹き抜けの大空間。勾配屋根に連なるトップライトからたっぷりと光が入り、晴れた夜には満天の星空が望めます。

◎家族構成/夫婦20代、子ども2人
◎構造規模/木造・2階建て
◎設計/堀部太建築設計事務所
◎施工/(株)ササキ 

木のやわらかな素材感が心地よいLDK。4枚のガラス戸をすべて開けると「広場」とひとつながりの大空間になり、暮らし方の幅が広がる

無垢材とステンレスの天板を組み合わせて造作したオープンな対面キッチン。明るくて使いやすく、広々としていて、キッチンに立つのが楽しみに

造作の大きなガラス戸を介して「広場」とLDKが緩やかにつながるYさんの住まい
広場の上に設けたロフトは、収納にもくつろぎスペースにも使えるゆとりの広さ。2階から橋のような通路を渡ってアクセスできる

広場の吹き抜けのトップライトと洋室の室内窓、リビングのハイサイドライトと、多方向からの光が住空間をまんべんなく照らす

ダイニングのペンダントライトをはじめ、インテリアや家具などは、すべて奥さんが堀部さんに相談しながらお気に入りをセレクト。階段の造形には、オブジェのような美が感じられる
リビングの採光を意図して設けた大きな窓。階段の上り下りのたびに、自然に外へと視線がいざなわれる。雪の上に時折現れるシカやキツネの足跡を見つけるのも、日常のささやかな楽しみ

階段下に設けたワークスペースの四角い小さな窓は、遮るもののない原野の風景を切り取るピクチャーウィンドウに

コンクリート土間で仕上げた「広場」の奥に設けた5帖ほどのフリースペースは、フローリング仕上げで部屋としても使える仕様に。今はお子さんの遊び場になっているが、近いうちに奥さんが洋服と雑貨のお店を始める予定。プライベートゾーンと切り離した使い勝手のいい余白の空間が、暮らしの夢や楽しみを膨らませる

玄関に入ってすぐ右手に、広いパントリーを配置。定期的に稚内へ出向いて食料や日用品をまとめ買いするライフスタイルに合わせて、たくさんストックできるよう設計されている
玄関は、荷物の搬入・搬出や家族の出勤・帰宅、来客の出入りなど使い方が多様で、その動線の良し悪しは住まいの快適さを決める重要なファクターとなる。Yさん宅の玄関は、ガレージ・出勤準備室・水まわり・広場・LDK・パントリーと、実に6方向もの動線の起点として、目的の空間へストレスなくアクセスできる機能性を備えている
造作の洗面カウンターと収納棚を壁に沿って一列に配した洗面脱衣室。洗面台と向かい合わせでユーティリティがあり、洗濯の家事動線がコンパクトにまとまっている
ガレージの建物に組み込んで3方を囲んだアプローチが、吹きすさぶ風雪から家族を守る

清廉な冬景色に調和する白いガルバリウム鋼板仕上げの外観。ガレージと屋内は直接行き来できる