今回、ご登場いただくのは、恵庭市を拠点に暮らしと地球にやさしい家づくりに取り組んでいる(株)キクザワ・代表取締役社長の菊澤里志さん。北国の暮らしを力強く支える「エネルギー」について、さまざまなエピソードを交えて語っていただきました。


(株)キクザワ
代表取締役社長

菊澤 里志さん

北海道恵庭市に生まれ、千葉県の大学で建築学を専攻。卒業後は本州の住宅メーカーで営業と設計、現場管理を学び、1989年に(株)キクザワに入社。地域に根ざす工務店グループ アース21や一般社団法人新木造住宅技術研究協議会、一般社団法人 北海道ビルダーズ協会に加盟し、次世代を見据えた家づくりを行っている

 

「暖房」「給湯」に多くのエネルギーを必要とする

北海道の住まい

積雪寒冷地である北海道では暖房・給湯に要するエネルギーが、他地域に比べて群を抜いて多いのが特徴です。つまり、エネルギーは北国の住まいの快適性と経済性を握る大きなカギともいえます。しかし意外なことに、私たちのお客さまは「暖かく、お湯が出ればよい」とおっしゃる方が大半です。

暖房・給湯に用いる主なエネルギーは、大きく分けて灯油・ガス・電気の3種類。灯油は道民が最も長く親しんできた身近な熱源ですが、市場動向で価格の上下が激しいという側面もあります。ガスは都市ガスとプロパンガスの2種類。いずれもボイラーはコンパクトですが、ガス漏れなどの心配が残ります。もちろん、現在はセキュリティーがしっかりしているので安心していいのですが。また、電気は炎のない安心感はあるものの、イニシャルコストが高く、給湯ボイラーの設置に大きなスペースが必要という一面も。家づくりの際には、メリットだけではなく、デメリットも十分に理解して、ライフスタイルにマッチするエネルギーを選ぶことが大切です。

キクザワで家を建てるお客さまの場合、近年は9割のご家庭がガスを選択。さらに、太陽光発電による電気などと併用することで、災害などによるリスクを分散させるケースが増えています。2年前のブラックアウトの際、灯油とガスを併用していたわが家では、停電の間もガスコンロが使え、日常に近い生活を送ることができました。打ち合わせの際には、そうした実体験も交えて、2種類のエネルギーを活用した家づくりをおすすめしています。

省エネルギーな暮らしは
巡り巡って地球環境にもやさしい

1年を通じてストレスのない室内環境を保ち、長く安心して暮らせる住まい。約30年前、故郷にUターンした私は、その理想を実現するため地域の気候風土に適した家づくりを先達に学び、志をともにする仲間と一緒に追求してきました。

そして現在、長期優良住宅はもちろん、北海道では最先端の基準となる北方型住宅2020に適合する住まいを手がけています。「冬の寒さや北側の結露、カビを何とかしたい」というこれまでのお客さまの要望に加え、近年は「夏も暑さを感じない住まい」が求められるようにもなりました。こうした問題をすべてクリアしたキクザワの高性能住宅は、エネルギーの無駄遣いをしません。トリプルサッシや付加断熱など、性能向上に必要な初期投資も、高い省エネ性によって10年で回収できます。つまり、性能と省エネは表裏一体。さらに、最小限のエネルギーで長く快適に暮らせる住まいは、結果論として、地球環境にも優しい住まいといえます。住まいの経済学は、地球の環境学にもつながっています。それを実現するのは、私たち、つくり手の責任だと考えています。

では、燃費の良い家をつくる近道はあるのでしょうか。「急がば回れ」という言葉通り、お客さまが大手から地域の工務店まで多種多様なつくり手を訪ね、話を聞いてください。その積み重ねの中でおのずとそれぞれの会社、ご自身の家づくりの考え方が見えてくるはずです。そこからが、エコノミーでエコロジーな家づくりの本当の始まりだと思います。

エネルギーを自給自足
一歩先ゆく未来型住宅がもたらす豊かな明日

2017年からキクザワでは、高断熱・高気密化や高効率設備の採用によって消費エネルギーを大幅に削減しながら、太陽光などを利用して電気エネルギーをつくりだすZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の建築にも積極的に取り組んでいます。それと歩調を合わせるように、キクザワを選んで訪れる勉強熱心なお客さまも増え、2020年にはZEHの採用率も50%に達しました。ZEHを採用したお客さまからは「省エネだけではなく、電気エネルギー節約の意識づくりにも役立った」という声が寄せられています。

私たちが目指しているのは「なるべくエネルギーを使わない」「長期にわたって住み続けられる長寿命」「使った分のエネルギーを自らつくりだす」住宅。今後、それをかなえるZEHの普及率を75%まで高めたいと考えています。北海道では日射量や冬季間の積雪など、太陽光の有効活用には本州に比べて多くのハンディを抱えています。しかし、暖房や給湯で多くのエネルギーを必要とする北海道だからこそ、豊かな明日の暮らしを実現するためにはエネルギーを自給自足できる未来型住宅、ZEHは必要不可欠なものと考えています。

その最前線に立つ社員に最新の情報を共有できるよう学びの機会を増やし、自社大工には北国にふさわしい温熱環境を実現する“断熱施工技術者(BIS)”資格取得をすすめています。20名の社員、大工が一丸となったキクザワ史上最強のチームが、住まいづくりを力強く次世代へとけん引しています。

そして私たちは何よりも、お客さまに家づくりを楽しんでいただくのは当然のこととして、社員も一緒に楽しみながら「理想の暮らし」を語り合う中で、よりよい住まいの形が見えてくると考えています。エネルギーのみならず、家づくりをさまざまな角度から見つめ、話し合いを重ねて、そのご家族にとってのたったひとつの住まいにたどり着いてほしいと願っています。

Case.1 恵庭市・Kさん宅

スキップフロアや開放的な吹き抜けがリズミカルに空間をつなぎ、ご夫妻が思い思いの場所でくつろぐことができる住まいです。住宅性能にもこだわり、太陽光発電を設置したZEH仕様。広いインナーガレージやプライベートなバーベキュースペースなど、遊び心あふれる「大人の隠れ家」です。


Case.2 恵庭市・Kさん宅

「キッチンがメインの家に」「土間を広く」「ルイスポールセンの照明をつけたい」など、ご夫妻が人生2度目の家づくりで望みを叶えた平屋住宅。キッチンからダイニング、土間へとひと続きになった空間はゆったりとした大人のくつろぎの場に。ペレットの炎やロフトからの星空に癒やされるぬくもりの住まいです。


Case.3 北広島市・Sさん宅

木と塗り壁の優しい素材感と、アイアンやデザインウォールをとり入れた洗練された雰囲気が同居する住まい。共働きのご夫妻のため無駄のない家事導線を熟慮し、2階と階段吹き抜けで結ばれたLDKの中心に配置したキッチンからは、家事をしながらでも子どもの気配が感じられます。機能もデザインも手を抜かない、遊び心満点のZEH住宅です。