いごこちの科学 NEXT ハウス

さらなる省エネ・省CO2が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。 本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前 真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、それまでの連載の発展形「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授 前 真之 (まえ・まさゆき)東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)


前回は全国の電力会社の状況をもとに、電気代高騰の実際を分析しました。その後、燃料費の高騰や円安も一服し、2月から激変緩和措置で電気代補助も始まっています。しかしひと安心するのは禁物。特に寒冷地は光熱費の負担が重く、しかも太陽光発電を載せても発電しないと思われがちで普及が遅れています。今回は、寒冷・多雪地域での太陽光の実際を考えてみることにしましょう。

電気代の上昇は一服?

前回お話ししたとおり、電気代の一部である「燃料費調整額」は、化石燃料の値段に応じて自動的に変化します。最近の世界的な燃料価格高騰と円安により電気代が全国で高騰してきましたが、ここにきてようやく落ち着く兆しが出てきました。

さらに2023年の2月から激変緩和措置として、電力量1kWhあたり7円の補助が開始。電気代の上昇も一服でひと安心という雰囲気が漂っていますが、この電気代補助の原資は国債、つまりは「借金」です。今の世代がちょっと楽をするために、次世代への重い負担以外に何も残らない小手先の対策へ大金を投入し続けるのは、果たして正しいのでしょうか?

電気代補助を吹き飛ばす規制料金の値上げ迫る!

かりそめの一服感を吹き飛ばすように、電気代値上げ申請のニュースが続きました。前回お話ししたように、多くの家庭が契約している「規制料金プラン」では燃料費調整額の上限が定められており、値上げ幅が低く抑えられてきました。その穴埋めで発生する巨額の赤字に耐えかねて、全国の電力会社が相次いで経済産業省に規制料金の大幅値上げ、および燃料費調整額の上限引き上げを申請しました。 申請の値上げ幅は、図1に示すように多くが3割を超えています。

図1 「規制料金」も値上げ申請ラッシュ!
中部・関西・九州を除く7社が、相次いで規制料金を中心に値上げの申請を経済産業省に提出しました。これまで燃料費調整の上限により安く維持されていた規制料金も、いよいよ大幅な値上げが不可避の状況です。2月から激変緩和措置により7円/kWhの補助がされていますが、その効果を吹き飛ばして余りある値上げになりそうです。

規制料金の変更には経済産業省の許可が必要で、申請のとおりに値上げが許されるとは限りません。しかし、昨今の燃料費高騰は電力会社の自助努力で解決できるレベルを超えており、電気代補助の効果を吹き飛ばす大幅な値上げが認められるのは間違いないでしょう。さらに、電気代補助も9月以降に半減される予定です。

光熱費の負担は寒冷地で重く

寒冷で暖房需要が多い地域ほど、光熱費の負担は重くなります。図2に、各地の光熱費の年間合計額を示しました。

図2 光熱費が高騰!寒冷地はますます厳しく
各都道府県の県庁所在地における「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」について「電気代」「ガス代」「他の光熱費」の合計値を示しています。燃調費の高騰を受けて、寒冷地を中心に年間30万円を超える地域が出てきています。
出展:総務省統計局 家計調査2022

全国平均では2022年に22.8万円となり、2021年の19.0万円から20%アップ。都道府県別ではやはり寒冷地ほど高額になっており、北海道の31.3万円が最高です。  

この連載でも繰り返し述べてきたとおり、光熱費の削減には、①建物の高断熱・高気密化、②設備の高効率化、③再エネの活用の「3点セット」が有効です。 寒冷地で光熱費の多くを占める暖房の節約には、やはり①の高断熱・高気密化が最も効果的です。②の設備の高効率化も大事ですが、寒冷地ではエアコンなどヒートポンプの効率が低くなりがちなのが悩みどころです。

太陽光発電は寒冷地でも有効?

③の再エネの活用は、さまざまなものがあります。薪ストーブも冬の暖房には有効ですが、年間を通して必要な電気をつくれる太陽光発電がやはり再エネの代表です。一方で寒冷地、特に多雪地帯においては、屋根上の太陽光発電パネルに雪が積もって発電しないイメージがありますが、本当のところはどうなのでしょうか。ゼロエネルギー住宅(ZEH)における太陽光の年間発電実績(容量1kW当たり)を、図3に示しました。

図3 太陽光発電の発電実績は日本中どこでも大差なし!
ゼロエネルギー住宅(ZEH)における太陽光発電の容量1kW当たりの発電量の「実績値」です。雪国や日本海側は太陽光が発電しないイメージがありますが、春・夏・秋はしっかり発電するので年間の発電量合計では東京と大差ありません。日本のどこでもちゃんと発電しているのです。積雪量が極端に多い地域以外はメーカー保証も受けられるので心配ありません。
出展:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2022
都道府県ごとのエネルギー消費量および創エネルギー量 実績データ

全国平均では1,205kWh、天候のいい和歌山は1,386kWh、長野は1,361kWhと発電量が多くなっています。一方、寒冷で雪の多い北海道は1,005kWhで、全国平均からの減少は約2割です。季節別にみると、北海道では冬季の発電量こそ雪の影響で少なくなっていますが、ほかの季節では順調に発電していることが分かります。6、7月には梅雨の東京より北海道のほうが発電しているほどです。多雪地帯であっても、太陽光発電は年間の光熱費を削減する効果は十分にありそうです。

実際に、北海道においても太陽光発電を積極的に搭載している工務店はいくつもあります。その実際の声を聞いてみましょう。

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