お気に入りの鉢に選りすぐりの多肉植物を複数まとめて楽しむ「寄せ植え」は、お部屋を彩るインテリアとしてとても人気で魅力的です。

とはいえ、初心者がいざつくろうとすると、難易度高めなイメージがなきにしもあらず。リプランスタッフのハヤシさんも、憧れは強いけれどやり方が分からず、初めの一歩を踏み出せないでいる一人です。

そこで今回は「多肉植物を連続で3種枯らした(!)」という残念な過去を持つハヤシさんが、「Flower Space Gravel miredo店」を訪問。今回特別に自宅にあった多肉植物を持参して、同店スタッフの南 詩穂さんに多肉植物の知識や上手な寄せ植えの方法を教えていただきました!

大同生命保険札幌ビル miredoの1階にあるFlower Space Gravel miredo店
季節の切り花はもちろん、
大小さまざまな、多種多様な観葉植物が店内を彩る

そもそも「多肉植物」とはどんな植物なのか

ハヤシ 今回多肉植物の寄せ植えを教えていただけるということで持参した3種のうち、1つは「ハオルチア」だと把握しているのですが、ほかの2つは実は名前が分かりません…。これは一体何でしょう…?(謎植物のうち1種は、移動中に鉢から飛び出すという悲劇に見舞われる)

南さん この白い鉢の方はおそらくサボテンの「銀手毬(ぎんてまり)」という品種です。成長が進むとフォルムが丸くなり、硬く白い棘に覆われていくサボテンですね。

そしてこのガラスの器から飛び出してしまった(!)のは「アロエ」ですね。傷を治すイメージが強いですが、観賞用として育てることも多いんですよ。

ハヤシ このアロエは購入してかれこれ5年近く経つのに、この小ささ。育たないし、細くてヒョロヒョロしていて…。

南さん 銀手鞠は小さいながらも根が張っていますが、アロエは根がないですね…。寄せ植えは根が張っていないと、うまく発根できない可能性があるので、アロエは今回植えてみて、経過観察していきましょう。

ハヤシ 根がなくて、こんなに生きていられるものなんですか?

南さん 多肉植物はアフリカやメキシコの砂漠など、高温で乾燥した厳しい自然環境の中で生育する植物です。生長が難しい環境にいることを察知すると、自ら休眠期に入って一時的に生長を止めることもできるんですよ。

ハヤシ 多肉植物ってすごいですね!…って私の自宅は砂漠よりも過酷ということですか…。

寄せ植え成功のカギは、多肉植物の「生育期」を知ること

南さん 過酷な自然環境に耐えるため、葉や茎に水を蓄えられるよう進化した多肉植物は生命力が強いと言われています。その反面、夏場は遮光シートなどを使って直射日光を避けるなど、扱いが難しい側面もあります。

ハヤシ 私は植物を育てるのが苦手で、これまでも「レズリー」「セダム」「月兎耳」の3種を次々と枯らしてしまいました…。

南さん 多肉植物は園芸品種なども含めると2万種類以上あると言われていて、生育する季節によって

  • 春秋型
  • 夏型
  • 冬型

の3つのタイプに分類されます。

枯れてしまう原因の多くは日照不足や水やりの方法によるものですが、生育期のタイプによって水を与える時期も異なりますので、まずは「自分が育てる多肉植物の生育期を把握すること」がとても大切です。

ハヤシ 水を与える時期もそれぞれ違うんですか?!

南さん 植物には「生育期」と「休眠期」があります。生育期に水をあげなかったり、休眠期に水を与えすぎると枯れてしまうことがあるんです。

ハヤシさんが持参した「ハオルチア」と「アロエ」は春秋型。春と秋に生長し、30℃以上の暑い夏と10℃以下の寒い冬になると休眠期に入ります。なので、春と秋にしっかり水をあげて生長を促すのが正しい育て方になります。

「銀手毬」は夏型なので、夏に生育期を迎えます。春・秋・冬は休眠期なので、このときに水をあげすぎるのは禁物です。

ちなみに当店で販売しているこの「リトープス(令和の桃子)」は冬型です。コロっとした見た目が特徴で、主に冬にしっかり水を与えて、夏は寝かせておきます。

左上のアロエと右上のハルオチアは「春秋型」、右下の<span class="s1">銀手毬は「夏型」。店内にあった左下のリトープス(令和の桃子)は「冬型」</span>
左上のアロエと右上のハルオチアは「春秋型」、右下の銀手毬は「夏型」。店内にあった左下のリトープス(令和の桃子)は「冬型」

ハヤシ それは目から鱗です…。ということは、タイプが異なる種類の寄せ植えは避けるべきなのでしょうか?

南さん そのとおりです。寄せ植えは基本的に「生育期が同じもの」でそろえます。例えば夏型のサボテンと冬型のリトープスを一緒に寄せ植えしてしまうと、水やりのタイミングが異なるもの同士なので、どちらかが枯れてしまうでしょう。

ハヤシ じゃあ、私が持ってきた中の「銀手毬」は、ほかのと一緒に寄せ植えしないほうがいいんですね…。危なかったです。

多肉植物の水やりの頻度やタイミングは?

ハヤシ 生育期の水やりは、どれくらいの頻度が適していますか?

南さん 基本的には植物の状態を見て水を与えるのがベストですが、だいたい10日に1度程度で問題ないと思います。多肉植物は乾燥が好きな植物なので、葉にシワが寄ったり、少しくたっとしたら水をあげるタイミングです。

あと、霧吹きで葉水をするのはNGです。基本的に土だけに水を与えてください。冬の乾燥している時期であれば、ときどき霧吹きで様子を見るのもいいですが、暖かい時期だと葉と葉の間にたまった水が蒸れて、腐れなどの原因になります。

ハヤシ !! 毎日、霧吹きで葉に水を与えていた私って…。

南さん ちなみに多肉植物の葉には「気孔」と呼ばれる小さな穴があって、日没を迎えた涼しい時間帯になると気孔が開くと言われています。気孔が開いているときに水を与えたほうが水分をよりしっかり蓄えられるので、水やりは「夕方や夜の時間帯」が適しています。

ただ「冬型」の多肉植物の場合、北海道は寒くて気温が下がる夜に水やりをすると根が冷えてしまうので、朝方のほうが適しています。

多肉植物は、霧吹きでの葉水はNG。水やりは日没以降が適している
多肉植物は、霧吹きでの葉水はNG。水やりは日没以降が適しているが、冬型の多肉植物の場合は、寒冷地だと朝方がおすすめ

ハヤシ 季節だけでなく「時間帯」も気をつける必要があるんですね。与える水の量は、どれくらいが目安ですか?

南さん 「受け皿に水が染み出す程度」が最適です。注意してほしいのは、受け皿に水をためないこと。水をためたままにすると根腐れを起こしてしまうので、受け皿にたまった水は捨てて、常に乾燥状態を保つことを心がけてください。

多肉植物の寄せ植え用の鉢選びのコツは?

ハヤシ せっかくなのでオシャレな鉢に寄せ植えをしたいのですが、多肉植物を育てるのに適した形や材質はありますか?

南さん 形に関してはお好みで選んで問題ありませんが、

・鉢底に水を染み出すための穴があること
・植物に対してひと回りくらい大きいものを選ぶこと

この2点は配慮したほうがいいですね。植物の根は真下に張るので、器が大きすぎると横に広がって、うまく根が張れずに弱ってしまうんです。

材質は素焼きやコンクリート、切り込みが入っているスリット鉢など「通気性の良いもの」がおすすめです。金属などの通気性の悪い素材の鉢は、底石の量を増やしたり土の配合を変えて排水性や通気性を調整する必要があるので、初心者が扱うには難しいです。

ハヤシ 「底の穴」「大きさ」「通気性の良い材質」が鉢選びではマストですね!寄せ植えをする際の道具は、何をそろえておけばいいですか?

南さん 道具は鉢、多肉植物用の土、ネット、鉢底石、スコップ(小)、ピンセット、割り箸などの棒ですね。割り箸は土の隙間をしっかり埋める際に非常に便利です。

ネットは鉢底の穴にかぶせて土が流れ出るのを防ぐために使うもので、キッチン用の水切りネットでも代用できます。鉢底石は最初に敷くことで、受け皿と土に隙間をつくり、通気性を良くして根腐れを予防します。

また寄せ植え作業では土がまわりに散乱します。汚れが気になる方は手袋をしたり、トレーにのせて作業を行うと良いですよ。

用意する道具は、鉢、鉢底石、多肉植物用の土、スコップ(小)、割り箸・棒、ピンセット、ネット。必要なら手袋も。土汚れが気になるなら、新聞紙や包装紙を敷いて、トレーを使うと片付けも楽
用意する道具は、鉢、鉢底石、多肉植物用の土、スコップ(小)、割り箸・棒、ピンセット、ネット。必要なら手袋も。土がけっこう散乱するので新聞紙や包装紙を敷いて、トレーを使うと後片付けがしやすい

寄せ植えする多肉植物選びのコツは?

ハヤシ 説明を聞いて、今回持参した「銀手毬」は夏型で、春秋型の「ハオルチア」「アロエ」とは一緒にできないことが分かりました。なのでサボテンの代わりに3種類ほど寄せ植えで使う多肉植物をお店で選びたいのですが、セレクトのコツってありますか?

南さん 大きいものや小さいものを組み合わせて「高低差」をつけると見栄えがぐんと良くなりますよ。また、形や色が異なるものを選んでメリハリをつけると、互いの魅力が引き立つのでオススメです。

いろんな種類を手にとって寄せ植えする多肉植物を吟味

お店のスタッフに確認するなどして生育期を把握したら、あとはお好みの多肉植物を選んで寄せ植えをめいっぱい楽しんでくださいね!

多肉植物、上手な寄せ植えの方法とは?

ここからは実際にハヤシさんが、南さんの手を借りながら行った多肉植物の寄せ植えの手順を、それぞれのポイントとともにご紹介します。

①鉢底の穴にネットを置きます。

①鉢底の穴にネットを置きます。

②鉢底石を、鉢底が見えなくなるくらい敷き詰めます。

②鉢底石を、鉢底が見えなくなるくらい敷き詰めます。

③その上に、多肉植物用の土を流し入れます。

※土の入れすぎに注意

③その上に、多肉植物用の土を流し入れます。※土の入れすぎに注意

④いよいよ多肉植物を配置していきます。ビニールポットを外したら、根を傷つけないように土を優しくほぐしてあげましょう。

※多肉植物は「サイズの大きいものから配置していく」と作業しやすいです

⑤植物を置いたら、根の周りの隙間を埋めるように土を追加して、指や割り箸でグイグイと押し付けます。

ちなみに、過酷な環境のハヤシ家でも元気な緑を維持していた「ハオルチア」は、このとおり、小さなポットの中に極太な根を張っていました。

過酷な環境を生き延びるために根を極太にしていたハオルチア

⑥土の隙間がなくなるように、植物を一つ植えるごとに「土を入れる」→「割り箸などの棒で土を押し入れる」を繰り返します。

※追加した土が、多肉植物の葉の間に降りかかったら、葉に傷が付かないよう、できるだけ砂粒をピンセットで丁寧に取り除きましょう

⑦そして完成したのが、こちら!

ハヤシさんがお店でセレクトしたのは

  • クラッスラの「紅葉祭り」
  • エケベリアの「銀明色」
  • センペルビウムの「ブロンコ」

で、すべて春秋型の多肉植物。持参した「ハオルチア」「アロエ」との相性もぴったりです。

本来、観葉植物の鉢植えは、水やりで土が膨らんでも表面から溢れ出ないように、鉢の縁から土の間を1~2センチほど空ける必要があります。ただ多肉植物の場合は、水やりの頻度が少なくて、土もそれほど膨らまないので、鉢の上端ギリギリまで土を入れても大丈夫だそうです。

鉢は、底に穴が空いていて、素材としても通気性のあるスタイリッシュな印象のコンクリート鉢にしました。

⑧家に持ち帰ったら、環境の変化に慣れさせるため、少なくとも1週間は水やりをせずに同じ場所に置いて様子見。その後植物の様子を見ながら水やりをします。

今のところ南さんのアドバイスで、ハヤシ家の多肉植物は順調に育ち、元気にしているそうです。

取材協力/Flower Space Gravel http://gravel-4187.com

※札幌本店は2022年8月〜改装のためにしばらくの間、閉店しています。
 詳しくはホームページでご確認ください。

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