みなさんの家に、インテリアグリーンはありますか?リプランで取材に行く多くのご家庭には、何かしら植物が置かれていて、素敵な空間をさらに魅力的に彩っています。一方で、植物を育てるにはそれなりの配慮や手間も必要です。

そこでこのコンテンツでは、インテリアグリーン初心者のリプランスタッフが植物のプロに聞いた、気になるグリーンの特徴や育て方のポイント、インテリアとしての飾り方のアドバイスなどをご紹介します。

ご協力いただくのは、札幌市と江別市に複数の店舗を持ち、多種多様な植物を扱うお花屋さんの「Flower Space Gravel」です。

札幌市中央区旭ヶ丘にあるFlower Space Gravel本店
札幌市中央区旭ヶ丘にあるFlower Space Gravel本店

今回は、リプランの20代スタッフで、コロナ禍を機に植物のお世話に目覚めたインテリアグリーン初心者のトミタくんが、今一番気になっている「ビカクシダ(コウモリラン)」について、本店スタッフの勝田 彩加さんにあれこれ教えていただきました!

グラベルの勝田さんと、インテリアグリーン初心者のリプランスタッフ、トミタくん

「ビカクシダ(コウモリラン)」って、どんな植物?

トミタ さっそくですが「ビカクシダ(コウモリラン)」ってそもそも、どういう植物なんでしょう…?

※トミタくんの言葉は、京都弁で脳内再生してください

勝田さん ビカクシダ(コウモリラン)は、世界の亜熱帯地域で樹木に着生して自生するシダ植物です。水を貯めたり、虫を避けたりするために根元を覆うように生える「貯水葉(ちょすいよう)」と、胞子をつける「胞子葉(ほうしよう)」の2種類の葉があるのが大きな特徴です。

「ビカク」は「鹿の角」って意味ですが、これはビカクシダの胞子葉が鹿の角のかたちに似ていることに由来すると言われます。この個性的な葉の美しさが、インテリアグリーンとしてのビカクシダの大きな魅力ですね。

トミタ たしかに、これ鹿の角っぽいですね!

勝田さん シダ植物は、葉がふわふわしていたり、ギザギザしていたりするのが多いですが、ビカクシダ(コウモリラン)は、葉の一枚一枚が大きくてダイナミック。植え方のバリエーションも豊富で、鉢植えで棚に置いたりハンギングしたり、水苔や板付けにして壁や天井から吊るしたりと、インテリアとしての楽しみ方の幅が広いのも人気の理由です。

鹿の角のようなダイナミックなかたちの葉が、ビカクシダの大きな魅力
鹿の角のようなダイナミックなかたちの葉が、ビカクシダ(コウモリラン)の大きな魅力。根元の茶色い葉が「貯水葉」で、緑色の大きな葉が「胞子葉」
可愛い葉が特徴のアジアンタムも、シダ植物
可愛い葉が特徴のアジアンタムも、シダ植物
一般的なシダの場合、この葉の裏についたツブツブが胞子嚢
一般的なシダの場合、この葉の裏についたツブツブが胞子嚢

トミタ お店には、どんな品種があるんですか?

勝田さん 一般に販売されているビカクシダは18種類ほどありますが、当店には「グランデ」「ネザランズ」「ステマリア」「エラワン」の4種類があります。グランデは巨大です(笑)。サイズ以外では、葉の出方や向きにそれぞれ特徴があります。

巨大に育ったビカクシダ グランデ。葉も全体も圧巻の大きさ
巨大に育った「ビカクシダ グランデ」(写真中央)。葉も全体も圧巻の大きさ

トミタ 貯水葉が茶色くなっているのがありますが、これって枯れてる…?

勝田さん あ、それは枯れてないです(笑)。貯水葉が茶色くなっていくのは生長で、悪いことでもダメなことでもないので、心配しなくて大丈夫です。根元を守っているので、取らずにそのままにしておいてくださいね。

水苔に覆いかぶさるように生えている貯水葉。茶色くても枯れたわけではないので、そのままでOK
水苔に覆いかぶさるように生えている貯水葉。茶色くても枯れたわけではないので、そのままでOK

ビカクシダ(コウモリラン)の「水やり」のポイントは?

トミタ シダ植物って、日陰の湿っているところに生えている印象ですが、水やりの方法や頻度ってどんな感じですか?

勝田さん 「鉢植え」と「板付け」や「水苔に巻いた状態」では気をつけるポイントや水やりの方法が違います。「鉢植え」は、水苔やチップの乾き具合が見えなくてわかりにくいから、ついつい水をあげすぎちゃう方が多くて…。中が乾いていることを確認するのが大事ですね。

トミタ それってどうやって確認すれば…。

勝田さん 水苔やチップの表面を指でスポンジを押すみたいにぎゅうっとして、水分がにじみ出てこない状態が、一つの目安になります。「鉢植え」の場合は、深めの受け皿を用意して、そこに水を張って下から吸わせてあげる方法がおすすめです。一定時間おいて、受け皿に貯めた水を吸わなくなったら、残った水を捨てればそれでいいので、初心者の方でもやりやすいと思います。

「水やり頻度は、1ヶ月に1度」とか、わかりやすければいいんですけど、部屋の環境や時期によって変わるので、なかなかはっきりと言えないんです…。やっぱり直に触って様子を見ながら判断することが重要です。

鉢植えは、土の乾燥状態が外からわかりにくいので、しっかり触って確認することが大事
「鉢植えは土の乾燥状態が外からわかりにくいので、しっかり触って確認することが大事」と勝田さん

トミタ 「板付け」や「水苔に巻いた状態」の場合はどうですか?

勝田さん 「板付け」や「水苔に巻いた状態」は根元が全部外に出ていて、鉢植えと比べて乾きやすいので、水やりの頻度が高くなります。全部見えている分、乾き具合の判断はしやすいです。

水やりのときは、水苔ごと(板付けなら板ごと)、バケツに貯めた水にドボンと浸して、ぶくぶくぶくっと空気が出切るまでしっかり水を吸わせます。10分ほどで水から上げて、水の滴りをしっかり切ってから元の位置に戻してください。

トミタ 僕は雑なんで、そこ、水しっかり切らないままいって、ぼたぼたぼたって水をこぼしがちなとこですね。。ちなみに冬も水やりは必要ですか?

勝田さん 北海道の場合、気候が暖かくなる4月〜10月は定期的に水やりをしますが、11月〜3月は冬眠のような状態になるので断水気味にします。とはいえ「水をあげなくていい」というわけではないです。乾き具合を見ながら、葉水を吹き付けたり、水やりをしてもらえればいいと思います。

水苔に着生させて板付けにしたビカクシダ。水やりの際は、この板ごとドボンと水にしっかり浸す
水苔に着生させて板付けにしたビカクシダ(コウモリラン)。水やりの際は、この板ごとドボンと水にしっかり浸す

ビカクシダ(コウモリラン)の「陽当たり」のポイントは?

トミタ ビカクシダ(コウモリラン)の場合、陽当たりってどのくらいが適しているんでしょう?

勝田さん シダ系だと暗くてジメジメしたところがいいという種類もありますが、ビカクシダは「明るくて暖かいところ」を好みます。ただし、直射日光はNGです。

ビカクシダをよく見ると、葉の表面に白い産毛が生えていて、これが葉の表面を乾燥から守っています。直射日光を長時間浴びると葉焼けして、この産毛がダメージを受けて生育に影響するので気をつけてください。

トミタ 直射は避けつつ、暖かいところに置いておくと元気になるんですね!いいこと知りました。

勝田さん 基本的には「レースのカーテン越しのやわらかい光」が最適です!

ビカクシダの胞子葉の表面には白い産毛が生えていて、これが葉を乾燥から守っている
ビカクシダの胞子葉の表面には白い産毛が生えていて、これが葉を乾燥から守っている

ブラインドの場合は、隙間からの直射が当たるブラインドの前は避けて、その近辺の陽射しの明るさが感じられる日陰に置いたほうがいいです。直射日光が当たるのが1時間ぐらいなら問題ないですが、長時間直射日光にさらされるところは、なるべく避けたほうがいいです。

ビカクシダ(コウモリラン)は、冬越しできる?

トミタ 北海道の冬ってかなり厳しいですけど、耐寒性ってどうなんですか?

勝田さん 冬をうまく乗り越えられるかは、北海道で植物を育てるときの最大の課題なので、気になりますよね…。ビカクシダ(コウモリラン)は亜熱帯の植物で基本的には暖かいところを好みますが、比較的強い性質なので、ある程度の寒さには耐えられます。

とはいえ、室内の1日の寒暖差が激しくて、乾燥もひどいとなると、植物としてはかなりツライ状態です。これは観葉植物全体に言えることですが、なるべく室温が一定で、湿度もある生育環境だとストレスが少なくて、ビカクシダ(コウモリラン)をはじめ植物は冬越ししやすいです。…人と同じですね。

春先になると「葉の調子が悪くて、茶色くなってきた」など、観葉植物の相談に来られるお客様が多いですが、それは冬の室内の寒暖差や乾燥が大きな理由です。最近の新しい住宅は温熱環境が安定しているので、一年を通して植物を育てやすくなっていると思います。

トミタ 暖冷房機器の中には風が出るものもありますが、温風や冷風って葉にダメージを与えたりするんですか?

勝田さん 影響はあります。なので当店ではサーキュレーターで空気を循環させています。エアコンやヒーターの風が直接当たると葉が乾燥して良くないので、家の中でもサーキュレーターなどで空気が自然に動くような環境をつくってあげられるといいですね。

初心者向きは、鉢植え?板付け?

トミタ 僕はビカクシダ(コウモリラン)を育てる場合、板付けのハンギングに挑戦したいと思ってるんですけど、どうやればいいですか?

勝田さん 一枚板を用意して、水苔に着生させたビカクシダ(コウモリラン)の苔玉部分を釣り糸みたいな腐らない糸で縛って固定すればOKです。

水苔に着生させたビカクシダの苔玉部分を、釣り糸みたいな腐らない糸で板にぐるぐる巻きに括り付けて固定
水苔に着生させたビカクシダの苔玉部分を、釣り糸みたいな腐らない糸で板にぐるぐる巻きに括り付けて固定

トミタ 難易度的には、板付けよりも鉢植えのほうが育てやすいんでしょうか?

勝田さん 感じ方は個人差があると思いますが、先にお話したように鉢植えは水やりが難しいので、板付けのほうが水やりのタイミングがつかみやすくて、初心者の方には育てやすいかなと私は思います。

トミタ ハンギングでビカクシダ(コウモリラン)を大きくしたかったら、土台の苔を大きくする必要があるんですか?

勝田さん ハンギングだと、苔を大きくしなくても自然に大きくなります。なのでビカクシダは、あまり植え替えの必要がないって言われているんです。剪定も不要で、基本的には適切に水をあげれば育ちます。肥料もそんなに必要ないですね。

ただ「カイガラムシが付いた」という悩みを聞くことは多い気がします。特に新芽はやわらかくて、虫が好むので。

トミタ たしかに新芽は食感、そこそこ良さそうですもんね…。ビカクシダ(コウモリラン)は、育てやすさ的に難易度は高くなくて、初心者でも手を出しやすい植物なんですね。いろいろ教えていただいて、育てるイメージがだいぶはっきりしました!

勝田さん 今はインターネット上に情報があふれていて、それを参考にするのももちろんアリですが、最終的には、目の前の植物をしっかり観察してほしいなと思います。

うまく育つかどうかって、育て方だけじゃなくて、手に入れた植物の個々の性質にもよるので、例えば同じビカクシダでも「この子はうまくいったのに、こっちの子ではうまくいかない…」というケースもあります。

ときには失敗するかもしれませんが、手をかけるほど大きく育ってくれて、成果が見えるのも植物を育てる楽しみ。インテリアグリーンのある暮らしでは、自分であれこれ試行錯誤しながら、その子に合う方法を見出していくことが大事かなと思っています。

取材協力/Flower Space Gravel http://gravel-4187.com

※札幌本店は2022年8月〜改装のためにしばらくの間、閉店します。
 詳しくはホームページでご確認ください。