良質な「薪」の会員制サービスが支える、快適で安心な薪ストーブ生活

公開日:2021.10.31 最終更新日時:2025.8.18

安心して、心地よく。薪ストーブとともにある日々を応援します。


薪ストーブライフに欠かすことができないもの、それが「薪」です。とはいえ、薪を自分でつくるとなると時間と労力が必要ですし、購入している場合でも、シーズン後半になると、薪の減り方を見ながら今年の分が足りるかどうか、不安が募ることも…。そんな薪ストーブのある暮らしの大前提となる薪を、季節を問わずにいつでも購入できる会員制サービスが十勝にあると聞き、訪ねました。

豊かな緑に囲まれた広大な敷地に建つ大坂林業。苗木をイメージしたロゴが描かれたサインが目印
豊かな緑に囲まれた広大な敷地を有する大坂林業。森をイメージしたロゴが描かれたサインが目印

周囲の声を受けて、薪の生産・販売をスタート

「とかちファイヤーウッド」は、薪ストーブユーザーを対象にした薪の販売・配送を行う会員制サービス。運営するのは、造林用の苗木を中心に年間200万本以上を生産している大坂林業です。創業から70年以上、気候の厳しい十勝に腰を据え、現在では「苗木を植え、育て、伐り、使い、また植える」という森の循環を担っています。

木を多用した入口。通路に置かれた紙の囲いは、ひょっこりと生えてきた若木を保護しているもの
木を多用した入り口。デッキに置かれた紙の囲いで、ひょっこりと生えてきた若木を保護
本業は造林用の苗木づくり。針葉樹、広葉樹合わせて年間200万本以上の樹木を育てている
造林用の苗木づくりの様子。針葉樹、広葉樹合わせて年間200万本以上の樹木を育てている

カラマツは、種まきから2年で苗木になるそう
カラマツの苗木。種まきから2年で苗木になるそう
出荷できる苗木は大きさなどを確認し、手作業で準備を進めていく
大きさなどを確認し、手作業で出荷準備を進めている

豊かな自然に憧れて大学入学を機に香川県から北海道に移住したという同社代表の松村幹了さんは、薪ストーブ歴25年以上のベテランユーザー。同サービスの運営を始めたきっかけについて「この辺りは古くから薪ストーブを使っている方が比較的多く、ほとんどの方がご自身で薪の調達をしていました。しかし、月日の経過とともにみなさん高齢になられて、徐々にそれが難しくなってきました。その結果、林業を生業とする弊社で薪をつくってくれないか、という声が徐々に届くようになったんです」と話します。

代表の松村幹了さん。林業の一連のサイクルを自社で担える体制を整え、若い世代でも仕事がしやすい環境づくりに取り組んでいる
代表の松村幹了さん。林業の一連のサイクルを自社で担える体制を整え、若い世代でも仕事がしやすい環境づくりに取り組んでいる

さらに、本業である苗畑の仕事は、冬はシーズンオフ。この業界も高齢化が進んでおり、担い手を育てて雇用を維持していくために、冬場の仕事を考える必要があるという事情も手伝い、2015年に薪販売の会員制サービス「とかちファイヤーウッド」を立ち上げました。

広大な敷地内には、苗木を育てるビニールハウスと、出荷待ちの薪のためのビニールハウスが並んでいる
広大な敷地内には、苗木を育てるビニールハウスと、出荷待ちの薪のためのビニールハウスが並んでいる

森林から刈り出した樹木を、余すことなく活用

取り扱っている薪の樹種は、十勝の森林から刈り出されたナラ材が中心。同社では現在、小規模の森林を維持しながら必要な広葉樹を必要な分だけ伐り出す「自伐型林業」にも取り組んでいて、自社で管理する広葉樹林の木の一部も、薪として販売しています。

ミズナラやカシワなどの広葉樹は、冬に向けて水が下がる10月以降に切ると、翌春に切り株からたくさんの芽が出て生長し、森林全体の若返りにつながります。この「萌芽更新(ぼうがこうしん)」を促して、森の若返りを図ることも林業の大切な役割の一つです。

大樹町にある大坂林業が管理している森での伐採風景。同社の社員がチェーンソーを使っておよそ80年生のミズナラの木を切り倒す
大樹町にある大坂林業が管理している森での伐採風景。同社の社員がチェーンソーを使っておよそ80年生のミズナラの木を切り倒す
今回伐ったこの木の根本から二股のところまでの太い幹部分は、カウンター材に製材して使う予定
この木の根本から二股のところまでの太い幹部分は、カウンター材に製材して使う予定
木の先のほうの細い幹や枝で、家具材にできない部分はシイタケのホダ木や薪に加工し、木を無駄なく使い切る
木の先のほうの細い幹や枝で、家具材にできない部分はシイタケのホダ木や薪に加工し、木を無駄なく使い切る

「太くて状態の良い幹は家具材、細い部分は椎茸の榾木(ほたぎ)、それ以外を薪として、樹木を余すことなく大切に使い切りたいと思っています。薪をつくることは、木の利用価値を高めることにもつながります」と松村さんは話します。

また、皆伐の多いカラマツは、広葉樹よりも一気に燃え上がって高温になりやすい木の特性を生かして、焚き付け材やサウナ用の薪として有効活用。主に追い上げ材(伐採時に出る丸太の端材、ドンコロ)を山から下ろして加工しています。

薪割り前の原木。ナラやカシワなどの広葉樹のほか、針葉樹も有効活用している。カラマツは着火性や火力が優れているので、春や秋に少し暖をとる際や焚き付け材、サウナ用に適しているそう
薪割り前の原木。ナラやカシワなどの広葉樹のほか、針葉樹も有効活用している。カラマツは着火性や火力が優れているので、春や秋に少し暖をとる際や焚き付け材、サウナ用に適しているそう
丸太を一度に適正なサイズに小割できる薪割り機で効率よく作業が進む
専用の薪割り機で、丸太を一気に適正なサイズの小割に
コンテナの中に溜まっていく薪はその状態で乾燥へ
割った薪はベルトコンベアで自動的に運ばれる
コンテナの中に溜められた薪は、そのまま乾燥のプロセスへ進む
コンテナの中に溜められた薪は、そのまま乾燥のプロセスへ進む

適切な乾燥、管理・保管で高品質の薪を生産

薪ストーブで燃やす薪は、木なら何でもいいというわけではありません。より長く快適に、安心の薪ストーブ生活を送るためには、良質な薪を燃やすことが重要です。

特に大事なのが、薪の「乾燥度」。乾燥が不十分で水分量の多い薪は、水分を蒸発させようとかなりの熱量を浪費します。それでも木は完全に燃え切ることはなく、大量のすすが発生して薪ストーブそのものを傷めたり煙突にたまったりして、煙道火災を引き起こすリスクを生じさせます。松村さんは「薪の乾燥の良しあしは、薪ストーブライフの質を左右します」と、薪づくりにおけるプロセスを重要視しています。

安心の薪ストーブ生活を送るためには、良質な薪を燃やすことが重要
安心の薪ストーブ生活を送るためには、良質な薪を燃やすことが重要

同社では薪割り後、風通しをよくするためにあえて乱積みにして、乾燥にムラがないように薪の位置が変わるような操作をときどき行いながら屋外で乾燥させます。広大な敷地内の一角には、乱積みされた薪を収めたコンテナがずらりと並んでいます。

加工後の薪は、乾燥薪の理想とされる「含水率20%以下」を目指して1年間しっかりと管理し、適切に保管。常に一定量のストックを確保しながら、高品質の薪を提供しています。

「薪」を通して伝えたい、北海道の森や木の価値

松村さんは「薪ストーブは、決して安くはない設備投資です。せっかくの薪ストーブを、薪調達の不安なく使っていただくためにも、高品質な薪を、一年を通して安定してお届けできるような仕組みを確立していきたいと考えています」と、薪ストーブユーザーとしての実感を持って、このサービスの意義を語ります。

とかちファイヤーウッドの会員になると、冬の間の薪の追加購入も可能。「薪の太さを細めにしてほしい」「太薪と細薪のミックスが欲しい」など、個々の要望にも寄り添って対応しているといいます。

乾燥中の薪が入ったコンテナがずらり。乾燥のムラが出ないように切り替えしながら、1年をかけて含水率20%以下になるようにしている
乾燥中の薪が入ったコンテナがずらり。乾燥のムラが出ないようにコンテナ内の薪の位置を動かしながら、1年をかけて含水率20%以下になるようにしている
薪を割ってすぐにきれいに並べてしまうと隙間が少なくなって乾燥しにくいため、このように乱積みにして野外でじっくりと乾燥させる
薪を割ってすぐにきれいに並べると隙間が少なく乾きにくいため、乱積みにして風通しの良い屋外でじっくりと乾燥させる
パン窯やピザ窯用に細く長く割った薪。こちらはオールシーズン需要があるという
同社では、パン窯やピザ窯用の細くて長い薪も受注販売している。こちらはそのための薪。オールシーズン需要がある
ここには出荷できる状態の薪が保管されている。通路を挟んで右手が薪、左手が焚き付け材などと、木の状態によって用途を分類して販売している
ビニールハウス内には出荷できる状態の薪を保管。通路を挟んで右手が薪、左手が焚き付け材などと、木の状態によって用途を分類して販売している

大坂林業は2020年春に北広島営業所を開設。2021年に「北広島薪販売所」を立ち上げ、道央エリアの薪ストーブユーザーを対象とした会員制薪販売事業も手がけています。 

▼北広島薪販売所については、こちらの記事をご覧ください
札幌圏の薪ストーブユーザーを支える「薪」の会員制サービス

「『林業』という、なかなか実態が見えにくい一次産業とエンドユーザーを結んで、より多くの人たちに身近にある北海道の森に目を向けてもらいたい。毎日使う薪が生まれた場所や木の物語にも思いをはせてもらえたら」と松村さん。

森林を取り巻く環境のより良い未来と森林資源の価値の向上を見据えながら、植林や広葉樹林整備の過程で伐採される樹木のさらなる有効活用を積極的に模索し、実践しています。

心地よく揺らぐ薪ストーブの炎。その一瞬一瞬に、長い時間をかけて育った木の命が宿る
心地よく揺らぐ薪ストーブの炎。その一瞬一瞬に、長い時間をかけて育った木の命が宿る

とかちファイヤーウッド
〒089-1707 北海道中川郡幕別町忠類錦町438((有) 大坂林業内)
Tel. 080-1897-7283(清瀬)
E-mail. tokachifirewood@gmail.com
https://tokachi-firewood.com

北広島薪販売所
〒061-1102 北海道北広島市西の里778((有) 大坂林業 北広島営業所内)
Tel. 070-1583-7266(山本)
E-mail. kitahiroshimafirewood@gmail.com
https://firewoodkita.theshop.jp

▼大坂林業の取り組みについては、こちらの記事もぜひご一読ください
「北海道の広葉樹」を家づくりに。大坂林業の新たな挑戦

会社情報
社名 有限会社 大坂林業
URL https://osakaringyo.com

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