「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしています。今回は、宮城県を拠点に注文住宅を手がけるSOY source建築設計事務所です。


人の動きと空間の関係を取り持つ

私たちの考える設計とは、人の動きと空間との関係を取り持つことです。「人の動き」とは文字どおり、どのように人が行動するかということであり、人とそれに関わるさまざまな物事の動きも含んだ概念です。建物の設計作業とはあらかじめ答えのあるものではありません。10人の建主がいれば10の違ったデザイン、空間があります。それは10の違った「人の動き」があるからだともいえます。SOY sourceではお客様との密な打ち合わせを通して、そこに想定される「人の動き」を研究し、それを空間へと結実させることをすべての設計の基本としています。

ガレージは2台分の駐車スペースを確保した
ガレージは2台分の駐車スペースを確保した

豊かな眺望が寄り添う住まい

段丘崖の岬のような地形の突端に位置する住宅です。土地の持っているポテンシャルを最大化することが、私たちに与えられた使命。仙台市街が一望できる北側の恵まれた眺望を、暮らしの中に豊かに取り込むことを主眼に設計が始まりました。

市街が一望できるリビング・ダイニング。北への眺望と南からの採光を両立させた
市街が一望できるリビング・ダイニング。北への眺望と南からの採光を両立させた
対面式のキッチンからも景色を存分に楽しめる。キッチンは天井高を抑え、落ち着いた空間に

土地の形状なりに幅いっぱいの空間を切り取り、切り取られた空間は眺望に正対できるように。そのうえで、南からの太陽の恩恵を受け取りながら、近隣からの視線を制御する必要がありました。

全長10mの門型フレームがリズミカルに反復し、北側の眺望に向かって全面開口を実現している
2層分の高さのあるリビング・ダイニング。上部のオープンな空間(写真右)は寝室

具体的には眺望に対して広がりを持つ東西に、幅の広い門型のフレームを構想。敷地の幅に応じた全長10mの門型のフレームが、北から南に反復配置されることで構造体を形成しました。南北に対しては開口を超えてフレームが延長され、日射をコントロールする庇であり、バルコニー、テラス、ガレージといったバッファーをなしています。このバッファーに守られた門型フレームの中にメインの生活空間、寝室、浴室を配置しました。

間接照明と直接照明を組み合わせた2ボウル仕様の洗面
間接照明と直接照明を組み合わせた2ボウル仕様の洗面
市街を一望できる浴室。大判の黒タイルとヒノキの天井で清掃性と心地よさを満たしている
市街を一望できる浴室。大判の黒タイルとヒノキの天井で清掃性と心地よさを満たしている

門型空間は施主からの提案により全館空調設備を採用しています。これによって温度差が小さく抑えられているため、LDKとプライベートリビング・和室・寝室がおおらかにつながる空間が実現しました。大きな門型の中に生活の場が散りばめられ、日々の暮らしに非日常とも思える豊かな眺望が寄り添う住まいができたと考えています。

リビング・ダイニングの照明計画は、ペンダントライトとスポットライトの組み合わせ
崖の上に建つシンプルな外観のボリューム。植栽により生活空間が外の視線から守られる
崖の上に建つシンプルな外観のボリューム。植栽により生活空間が外の視線から守られる

■建築DATA
宮城県・Hさん宅
家族構成/夫婦60代
構造規模/木造・2階建て
延床面積/231.73㎡(約70坪)

設計/(有)SOY source建築設計事務所 太田 秀俊、安田 直民、櫻井 一弥
施工/(株)巧友技建工業

写真提供/(有)SOY source建築設計事務所


\2022/4/18発売!「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」/

東北で活躍する建築家や建築会社によるデザイン性の高い住宅実例集のほか、2021年に宮城県石巻市で竣工したマルホンまきあーとテラス(設計/藤本壮介建築設計事務所)を取材した巻頭特集やインテリアアイテムに関するエッセイなど、住宅や建築を多面的に捉えたコンテンツで、家づくりの参考になる住宅のデザインを提案。

普段なかなか目にすることのないこだわりの注文住宅を多数掲載しています。ぜひ家づくりの参考にご覧ください!

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