ゆとりある敷地に立つ一軒家で、子育てや庭のある暮らしをのびのびと楽しむ。札幌市に隣接する石狩市は、そんな暮らしを思い描く子育て世代の注目を集めるエリアです。この秋、花川北の閑静な住宅街に、築45年のコンクリートブロック住宅をフルリノベーションした一軒家が誕生しました。

北海道産の素材をふんだんに使い
健康によみがえった三角屋根の中古住宅

アレルギー症状に悩んでいる家族が、健康に暮らせる住まいを実現したい。その想いを胸に、ビオプラス西條デザインの西條正幸さんは30年ほど前から北海道産の自然素材を生かした「自然派住宅」を追求し、健康的で北海道らしい住まいをつくり続けてきました。

西條さんが近年注目しているのが、道内各地で見られるコンクリートブロック造りの三角屋根の家。「北海道の古民家」とも呼ばれています。「三角屋根の家は、昭和25年から約20年にわたって、当時の北海道住宅供給公社が建てた道内初の建売住宅です。雪に強く、冬も暖かく暮らせる家を実現するため、北海道産の礎石ブロックを構造体にして建てるという、一種の実験住宅でもありました」。

西條さんは、先達の遺産である三角屋根の家を自然素材でよみがえらせる「三角屋根プロジェクト」を立ち上げ、これまでに5棟をリノベーションしました。

リノベーション前の三角屋根の家の外観

そのうちの一軒が石狩市花川北にあり、現場に通う中で昭和期の分譲地らしいゆとりある街並みの中に、三角屋根の家が点在していることに気づきます。時を置かず、西條さんは知人を介してこの築45年の中古住宅に出会いました。

石積みの塀で囲まれた敷地は広さが100坪超あり、車2台の駐車が可能な南向きの角地。今や札幌では叶えられない好条件です。当時の住人が20年ほど前にリフォームをして、玄関ドアや窓サッシも交換済みでした。

「手間と時間がかかっても、使えるものを最大限に生かしてリノベーションしようといつも考えています。ただ中古住宅で築年数が経っていると思うようにいかないことも多いのですが、この家はそうした意味で優良物件でした」。

豊かな緑に抱かれるようにして立つ三角屋根の家は、木外壁で装い新たに。石造りの塀と立派に育った庭木が通りからの目線を遮り、家での時間をのびのびと過ごせる

2022年5月に工事を開始しましたが、しばらくすると西條さんは和室から防虫剤の臭いが流れ出していることに気づきます。既存の畳を切ってみると、間に虫除けのナフタリンが挟み込まれていて、その下の合板にも防虫処理がなされていました。

「断熱・気密性能を改善すると、建材から出る化学物質がこれまで以上に室内にこもります。想定外のことでしたが、将来ここに住む方々が安心して健康に暮らせるよう、一切を排除してつくり変え、畳も新品に交換しました」と、自然派住宅を実践する西條さんはきっぱりと語ります。

【Before】昔ながらの雰囲気だったリノベーション前の室内
【Before】昔ながらの雰囲気だったリノベーション前の室内

キッチンからLDKや和室、玄関方向を見た様子
間取りを大幅に見直した。写真はキッチンからLDKや和室、玄関方向を見た様子
LDKの隣には襖で間仕切りできる和室を配した。現しにした既存住宅の梁が、この家の歴史を物語る

3ヵ月の工期を経て、古い三角屋根の家は、冬暖かく夏涼しいローエネルギー住宅へと生まれ変わりました。「できるだけゴミを出さずに建物を再生し、寿命を延ばすリノベーションは、オーガニックの天然素材を使いながら新築よりも予算を抑えられ、健やかで快適な暮らしの場となります。このモデルハウスを通じて、その可能性を多くの方に知っていただきたいですね」と西條さん。

広さ約100坪と敷地にゆとりがあり、家庭菜園や庭づくりも存分に楽しめる
広さ約100坪と敷地にゆとりがあり、家庭菜園や庭づくりも存分に楽しめる

敷地にゆとりがあるため、ガーデニングや家庭菜園、バーベキューなどが楽しめ、遊歩道づたいに、近所の緑豊かな公園まで気軽に散歩することもできます。より良い生活環境を求めている子育て世代のご家族にぴったりの一軒家。自然派住宅の魅力を体感できるこのモデルハウスは、現在、好評公開中(予約制)です。

自然派リノベーションのポイント3

1.  暮らしやすい「間取り」

住まい手は、30〜40代の子育て世代を想定。家族の暮らしの中心となる1階は、既存の間取りを一新した。北側にあった壁付けキッチンは、庭に面した明るい南側へ移動し、対面式に変更。オープンなLDKと水まわりを回遊動線で結び、家事動線を向上させた。2階の部屋の一つは、将来2室に分けられるよう設計している。

既存の間仕切りを取り払い、梁を現しにした開放的なLDK。暖房は既存の集合煙突を生かして、薪ストーブまたは灯油ストーブが使える。しっかりと断熱改修したことで、真冬でもストーブ1台で家中が暖かく、気持ちよく過ごせる
対面キッチンの奥には、パントリーを兼ねた収納を設けた
対面キッチンの奥には、パントリーを兼ねた納戸を設けた

この納戸は、キッチンから水まわりへの動線も兼ねている
この納戸は、キッチンから水まわりへの動線も兼ねている
そして水まわりから玄関・リビングへとつながる。この回遊動線が、暮らしやすさをサポート
そして水まわりから玄関・リビングへとつながる。この回遊動線が、暮らしやすさをサポート

2階には、廊下を挟んで2つの部屋を配置
2階には、廊下を挟んで2つの部屋を配置
そのうちの一部屋は、将来2部屋に仕切って使いやすいよう、出入り口を2ヵ所にしてある
そのうちの一部屋は、将来2部屋に仕切って使いやすいよう、出入り口を2ヵ所にしてある

2. こだわりの「メイドイン北海道」

トイレの床には、耐水性やメンテナンス性を考慮して天然リノリウムタイルを、浴室の壁には香りも良いヒノキを張って仕上げた。

トイレの床には清掃性の良いリノリウムタイル、腰壁は道産トドマツ材を採用
浴室の壁には、水や湿気に強く、香りの良いヒノキを張って仕上げた

北海道由来の自然素材でつくる家が、同社の大きな特徴。新たに外断熱を施した外壁には道産カラマツ材、室内の主な床には、自然塗料仕上げの道産ナラ無垢フローリング、壁には調湿・消臭効果に優れるホタテ貝殻の漆喰をはじめ、道産トドマツ材や下地材の呼吸を妨げない土佐和紙や麻布クロスを用いた。

寝室の窓は、既存の樹脂サッシ。布団を収納できるサイズの押入れの裏には、納戸が広がる。天井は麻布クロス仕上げ
調湿・消臭効果に優れるホタテ貝殻の漆喰が、素材特有の質感と風合いを醸す
調湿・消臭効果に優れるホタテ貝殻の漆喰が、素材特有の質感と風合いを醸す

3. 愛着が増す造作の「家具・建具」

対面式キッチンや洗面化粧台、書斎コーナーの棚やデスクはすべて同社のオリジナル。書斎コーナーは空間を自由に使いやすいよう、あえてカウンターではなくデスクに。住まい手の暮らしに寄り添った造作デザインも見どころの一つ。

書斎コーナーの棚やデスクはビオプラス西條デザインのオリジナル

既存の窓サッシと玄関ドアを除く建具類は、すべて新たにデザインを起こして、道産トドマツ材で造作。玄関と室内とを仕切る引き戸は、和モダンを意識した細縁の格子とすりガラスで製作している。

玄関の雰囲気を決める玄関の引き違い戸
インテリアとしても存在感を放つ
インテリアとしても存在感を放つ

自然派リノベーション・モデルハウス
三角屋根PROJECT No.6

現在、コロナウイルス感染予防のため、予約制で公開中です。花川北の緑豊かな環境とともに、自然素材がつくり出すやわらかな空気感をご体感ください。

玄関側から見た外観。レンガ色の車庫は20年ほど前に増築したもので、外物置も兼ねる
玄関側から見た外観。レンガ色の車庫は20年ほど前に増築したもので、外物置も兼ねる
車庫には広いロフトがあり、DIYで趣味空間に仕上げる楽しみも残されている
車庫は広いロフト付き。DIYで趣味空間に仕上げる楽しみも残されている

※見学のご予約・お問い合わせは下記HPからお願いします