カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現を目指した取り組みが加速している中、住宅分野ではこれまで以上に創エネと蓄エネの組み合わせが重要と言われています。

東北電力では、電化を通じた快適な住まいづくりはもちろん、省エネ・創エネ・蓄エネなど、カーボンニュートラルに合わせたさまざまなサービスの提供による「スマートライフ電化」を推進しています。

今回リプランでは、その電気とスマートライフ電化について、4組のつくり手にそれぞれお話をうかがいました。これから家づくりを考える方々は、このインタビューを参考に、エネルギーの観点からも暮らしの今と未来について考えてみてください。


(有)シーユーハウジング 代表取締役 中里 肇さん
人も住まいも、長きにわたって健やかで快適に。シーユーハウジングでは、自由な発想とお客様のこだわりを盛り込んだフリープランでつくりあげる健康で心地よく安心な、その環境が次世代までも変わらない家をご提案しています。エアコンを採用し、その暖気や冷気を床下に回す「ファース工法」を採用した弊社の高断熱・高気密の住まいは、大きな吹き抜けも自在につくることができます。開放的な空間やインテリアにこだわりをもっていらっしゃる方には「ファース工法」のスマートライフ電化住宅は最適だと思います。

脱炭素時代の住まいのエネルギー計画について、どうお考えでしょうか。

近年は太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーを活用した電気が積極的につくられるようになり、家庭にも太陽光発電が広く普及してきました。こうした電気はCO2を排出する化石燃料に依存しないため、脱炭素対策において有効なエネルギーであり、これからの家づくりを考えた際、「スマートライフ電化住宅」こそが最も脱炭素に近づける手段だと考えています。

設計・施工の面で、スマートライフ電化住宅ならではのメリットはありますか。

20年ほど前から、弊社ではエアコン1台で暖冷房を賄う「ファース工法」を採用したオール電化の住まいを提案してまいりました。かつての蓄熱暖房の時代は、放熱器の設置スペースを考慮しなくてはいけませんでしたが、現在の「ファース工法」の住まいは屋根裏にエアコンを1台設置するだけでよく、給湯機器のエコキュートも室外設置のため、設計上の制約が少なくなり、間取りの自由度が格段に向上しました。また、ほかのエネルギー源のように配管の必要がないのも、施工上の大きなメリットです。

太陽光発電などの創エネへの取り組みは、どうされていますか。

県内でも積雪が少なく日照時間が長い八戸エリアは、太陽光発電の適地。弊社では、現在のエネルギー情勢、化石燃料の高騰も考慮し、太陽光発電を活用した創エネを積極的にお勧めしています。

その際、イニシャルコストをかけずにお客様のご自宅に太陽光発電設備を設置し、自家発電したエコな電気をお使いいただける、東北電力ソーラーeチャージの「あおぞらチャージサービス」を採用した家づくりをご提案しています。15年の保証期間中はメンテナンス費も不要。「あおぞらチャージサービス」には、昼間に太陽光でつくった電気を夜に使いたい、万が一の災害にも備えたいという方のために、太陽光発電設備と蓄電池をセットにしたプランもあります。

私も15年前、自宅に太陽光発電パネルを設置しましたが、現在も問題なく稼働していますのでイニシャルコストは十分に回収できています。その使用実感からパネルの耐用年数は20年以上あるのではないかと考えています。一方、蓄電池に関しては、まだイニシャルコストと耐用年数のバランスが悪く、進化の途中だと感じています。蓄電池の性能が向上し、より身近な価格になったときには、さまざまなメリットをもたらす電気の時代がやってくるのではないでしょうか。


(株)大進建設 八戸店 店長 遠藤 敏彦さん
お客様にとって、家づくりは一生に一度あるかないかの大イベントです。今だけでなく、お客様が「生涯」にわたって幸せになれる家づくりをしてほしいという想いで、無理のない資金計画をもとに、決して好きなことを我慢せず、ご家族がずっと幸せに暮らせる家づくりをご提案しています。スマートライフ電化住宅を標準に、高性能な窓と断熱材を採用し、ZEH水準をクリアする断熱等級5相当の住宅性能を確保することで、自由度の高い間取りが実現できました。理想を叶えた住空間で、お客様に長く快適に暮らしていただくことが私たちの夢です。

スマートライフ電化住宅ならではの、デザインのメリットを教えてください。

八戸の場合、冬の積雪が少ないためエコキュートを屋外に設置できます。弊社の住宅は、天井にビルトインする全館空調が標準仕様。その全館空調との相乗効果で間取りやインテリアもお好みに合わせて実現できます。壁付けエアコンを2階に設置した場合、室外機も2階の外壁に取り付けますので、どうしても外観のデザインが損なわれがちですが、全館空調の場合はそうした心配もありません。空間も外観もお好みに合わせてすっきり美しく仕上げながら、少ないエネルギーで快適な室内環境を実現できるのが、大進建設のスマートライフ電化住宅です。

さまざまな熱源の中で、ライフラインとしての電気の強みは何でしょう。

東日本大震災時、最も復旧が早かったのが電気でした。災害時のライフラインとして、この復旧のスピーディーさこそが電気の一番の強みではないでしょうか。また、ほかのエネルギー源とは異なり、太陽光発電と蓄電池を備えることで、暮らしに必要なエネルギー源をつくり、ためることもできます。これも大きな利点だと感じています。

以前から電化住宅に取り組まれていますが、電化機器の性能の進化はどのように感じますか。

弊社は電化住宅が標準。私が家づくりに関わり始めた20数年前は、電化の家といえば「電気温水器と蓄熱暖房機」が当たり前でした。暖房機の設置場所が必要、温度調節が難しいなどいろいろな短所はありましたが、当時は深夜電力の料金設定が格段に安く、料金の割引制度もありましたので、オール電化住宅の普及が進みました。

現在はエアコンの性能、省エネ化が進み、創エネとの相乗効果を期待して採用される方が増え、ますます電化住宅は身近な存在になったように感じています。今後、電化機器の性能、利便性がさらにアップして、スマートライフ電化住宅が暮らしのスタンダードになると考えています。

脱炭素の取り組みは、今後の住宅の資産価値に影響するでしょうか。

創エネと住宅の高性能化が後押しして、これからは電化住宅が当たり前といわれる時代が来ます。「電気代はかからないけれど、快適な暮らしが実現できる」ことが、住宅の価値につながると考えています。これからも私たちは、お客様にとって本当に価値あるものを選んでいただけるよう努めてまいりたいと考えています。その積み重ねがあってこそ、私たちがつくる電化住宅の価値もさらに高められていくのではないでしょうか。


(株)ヤマノアーキデザイン 代表取締役 工藤 晃史さん
(株)ヤマノアーキデザイン 代表取締役 工藤 晃史さん
「デザイン=見た目」だけではありません。動線、暖冷房、空気環境など、すべてを総合的にデザインすることこそ真のデザインというのが、私たちの考え方です。弊社では、電化住宅を前提にした家づくりをご提案していますが、電化機器の進歩は目覚ましく、ヒートポンプが採用されてからは省エネ化が一気に進みました。電気は生活するために必要なエネルギー源ですが、使い過ぎないことも大切。低炭素社会の実現に向けて、エネルギーを無駄遣いしない住まいづくりに取り組んでいきたいと考えています。

住宅のカーボンニュートラルと電気について、どうお考えでしょうか。

私たちが考えている「低炭素住宅」とは、高断熱・高気密の優れた性能に省エネ機器を備え、燃焼を伴わないクリーンな電気をエネルギー源に採用した住まいです。暮らしに必要な電気は太陽光発電でつくり、蓄電池や電気自動車も併用するのが、これからの低炭素時代のエネルギーの主流になっていくと考えています。私たちがつくる住まいも、その歩みに合わせたものでありたいと思っています。

HEMSやloTなども積極的に取り入れられていますか。

HEMSの採用は、10年前から電気の流れや使用量をお客様自身に把握していただくためにご提案しています。外出先からエアコンのオン・オフやエコキュートの自動湯張りなどの操作ができるIoTは、スマートスピーカーを活用すると家にいて家事をしているときにも重宝します。照明のオン・オフやカーテン類の開閉も可能です。海外と日本、2拠点で暮らしているお客様は、日本の住まいにIoTを採用。「海外にいても日本の留守宅の様子が分かり、照明の点灯で防犯対策もできる」と喜ばれています。これからは、こうした近未来的な住まいの在り方も普通になるのではないでしょうか。

創エネと蓄電についての考えをお聞かせください。

電気料金が上がり、太陽光発電と蓄電池が住まいの必需品になったように感じます。弊社では、14年前に初めて太陽光発電システムを導入して以降、毎年2〜3棟の住まいに採用していますが、パネル自体のトラブル、故障はほとんどありません。

12年前に設置し、毎年の発電量を記録しているお宅では、これまでの発電量ベスト10の1位は2年目、2位は11年目という結果だったそうです。つまり、太陽光発電パネルの発電能力は10年経っても変わらないということです。今後は蓄電池やその代わりとなる電気自動車のバッテリーなどを有効活用することで、地の利をもっと生かすことができると思っています。

弊社では現在、東北電力ソーラーeチャージの「あおぞらチャージサービス」の利用を前提に、太陽光発電と蓄電池を採用した住まいづくりをご検討していただいています。敷地条件によって屋根の向きや面積、蓄電池の配置場所などが大きく設計に関わってくるためです。その後、住まいの詳細プランと併せて、資金計画時に太陽光発電設備はリースにするのか、または自費で設置するのかを選んでいただいています。建築費が住宅ローンの借り入れの上限に達し、資金的に余裕がないという方でも、リース制度などを利用することで当初の計画どおりに太陽光発電が採用できます。


(株)リアルウッド 代表取締役 須郷 裕貴さん
リアルウッドが追求する「環境共存型住宅」で大切なのは、断熱・気密・換気のバランスがしっかり取れた器をつくること。そして、高効率なヒートポンプを利用し、大切なエネルギーを有効に使うこと。太陽光発電や地中熱を取り入れて、エネルギーをつくり出すことです。この3要素をクリアできる住まいとして、私たちは17年前の創業時から高性能な電化住宅を手がけてきました。お客様それぞれのライフスタイルに配慮しながら、時代の流れや環境の変化に対応できる住まいづくりを追究していきます。

電化機器の性能は、どれくらい進化していると思いますか。

弊社は17年前の創業時からオール電化住宅を手がけています。当時はエコキュートとパネルヒーターを基本にしていました。この十数年の間に寒冷地用エアコンの性能が大きく進化し、保険のために部分的に設置していたパネルヒーターも不要になりました。

また、床下エアコンと通風計画によって、エアコン特有の嫌な風を感じることなく、暖気も冷気も家中に行き渡ります。スマートライフ電化の時代になって、太陽光発電で電気が自給できるようになったこともあり、お客様の電気やエアコンに対する抵抗感がなくなったように感じます。エアコンを採用することで火災の心配もなくなり、小さなお子さんがいても安全。私たちも安心してお勧めできるようになりました。近年は、ランニングコスト圧縮のため、地中熱を利用したロードヒーティングも採用しています。

最近のお客様において、住まいの熱源に関する傾向はいかがでしょうか。

津軽地方では、性能が優れていない(予算を充てられない)住宅でもそれなりに暖かく暮らせるため、灯油をエネルギー源とするストーブが今も多く採用されています。エアコン暖房を採用する場合、高断熱・高気密な住まいであることは必須条件。住まいづくりの予算にゆとりがあり、性能にもこだわりたい。そうした場合には電気になります。ガスはプロパンガスになりますので、コストや手配の手間などから、選ぶ方は少ないのが実情ですが、炎を楽しむ暮らしを希望され、薪ストーブを設置する方は少なからずいらっしゃる印象です。

脱炭素の取り組みと電化住宅の資産価値についてどうお考えですか。

2024年4月から国の「省エネ性能表示制度」によって、住まいの性能や省エネ性が一般の関心を集めることになると考えています。そして、この制度が浸透することによって住宅の評価も変わり、性能に優れた住宅は25年経っても高く評価されるようになるのではないでしょうか。新築の場合、エネルギーコストの高騰を背景に、ランニングコストや省エネ住宅への関心が既に高まっています。

弊社の場合、デザインで選んで新築の依頼をされるケースも多く、住んでから数年経って、電気代が安いと気づいて、電話をくださる方も多いんです(笑)。電気は、自然の恵みでつくることができる安全でクリーンなエネルギー。今注目のSDGsにも合致し、長期的に見ると電気をエネルギー源にした低炭素住宅はもっともっと評価されると考えています。


スマートライフ電化暮らしを満喫している4家族の実際の住み心地や光熱費事情は?
・【シーユーハウジング】快適な住環境を実現した憧れの太陽光発電と電化を備えた高性能住宅
・【大進建設】家族にも環境にも優しい暮らしを長持ちできる電化住宅
・【ヤマノアーキデザイン】スマートデバイスとの連動で、電化の暮らしを軽やかに楽しむ
・【リアルウッド】木の温もりに満ち、開放的でありながら省エネを叶える高性能住宅