土地探しをしていて見つけた場所が、立地はいいのに「すごく狭い」「変な形をしている」「すごい斜面」など難アリだったとき、「ここじゃ思うような家は建てられないな…」と諦めたりしていませんか?もしかしたらそこは、自分たちらしい家をつくるのに絶好の場所、かもしれません。

Replan北海道vol.127(2019年12月28日(土)発売)とReplan東北vol.67(2020年1月21日(火)発売)の巻頭特集は「楽しい変形敷地」。今回はひと足先に、変形地だからこそ生まれた個性あふれる住まいの実例をいくつかご紹介します。


建物に使える面積わずか11坪!
小さな部屋が連なる3階建て

■延床面積/88.50㎡(約26坪)
■家族構成/夫婦30代、子ども2人

札幌市に暮らすNさんご夫妻は、利便性を最優先に考えて街中の狭小地を購入しました。建築可能な面積はわずか11坪。そこで建築家が提案したのは、3〜4帖の小さな部屋がいくつも連なる分棟形式の3階建てプランでした。

建築できる面積わずか11坪を巧みに生かしたNさんのお住まい。丸みを帯びた外観デザインが目を引く。奥から手前へ建物のボリュームが小さくなっていて、3階建てながら軽やかな印象

小さな部屋と部屋をつなぐのは、「縁側」のような小空間。そこから外を感じられることで、広がりやつながりが感じられる仕掛けです。ご夫妻いわく「狭いと感じたことはなくて、むしろ私たち家族にはちょうどいいですね」。小さな建物の隙間に植物を植えたりしながら、心豊かに暮らしを楽しんでいます。

螺旋階段の途中から縁側のような小空間を通って隣の部屋へとつながる
螺旋階段の途中から縁側のような小空間を通って隣の部屋へとつながる
1階から2階へ上がる途中にある部屋は、お子さんたちの遊び場に
1階から2階へ上がる途中にある部屋は、お子さんたちの遊び場に
キッチンとダイニングは外部空間を挟んで窓越しに隣り合う。この距離感が心地よさを生んでいる
キッチンとダイニングは外部空間を挟んで窓越しに隣り合う。この距離感が心地よさを生んでいる
3階へ行く途中の階段踊り場から見た勉強室。小住宅のため収納棚やテーブル、ソファなどはスペースに合わせて製作している
隙間を使って上手にガーデニングを楽しんでいるNさん。この個性的な家を自分たちらしく住みこなしている

■設計/(株)五十嵐淳建築設計事務所
■施工/(株)丸繁 赤坂建築
<Replan北海道 vol.109>

 

間口が狭い縦長の変形地に建てた
スキップフロアのコートハウス

「利便性の高い街中のエリアに住みたい」と、Uさんご夫妻が4年の歳月をかけて見つけ出したのは、間口が狭くて奥行きのある「うなぎの寝床」のような細長い敷地。希望の住まいは「プライバシーが守られ、落ち着いた雰囲気で暮らせる家」でした。

狭小住宅のスキップフロアの間取り
玄関を入るとすぐに数段下がり、居間へ行くのに数段上がるなど複雑にスキップする間取り
間口7m、奥行き23mの細長い敷地。周囲にはアパートなどの集合住宅が立ち並ぶ
玄関に入ると奥までまっすぐに伸びる長い廊下。突き当りに射し込むやわらかな光が、家の奥へと人を誘う

Uさんご夫妻の希望を両立させる方法として建築家が提案したのは、中庭を介してリビングとダイニング・キッチンがつながるコートハウス。玄関から始まり、空間をつなぐためのスキップロアを複雑に用いながら、視線の抜けによる開放感を生み出しています。間口が狭くて縦長だからこそ実現した、この土地とご家族にふさわしい住まいといえるでしょう。

狭小住宅のスキップフロアのダイニング・キッチン
中庭が見える大きな開口部からの光が、ダイニング・キッチンを明るく照らす。左手の廊下は玄関へとまっすぐに続く
廊下から階段を5段上がったところにあるリビングは、コンパクトながら伸びやかな団らんの場
建物の真ん中にある中庭は広さ7.5坪ほど。中庭越しに家族の視線が交差する
狭小住宅のスキップフロアの2階テラス
2階の寝室テラスから中2階のリビング方向を見たところ。中庭は周囲を気にせず遊べる家族のプライベート空間

■設計/Sa design office 一級建築士事務所
■施工/岩田住宅商事(株)
<Replan北海道 vol.102>

地域の豊かな景観を守る。
斜面を生かした平屋のような2階建て

Aさん宅の建築地は仙台市中心街のほど近く、古くからある住宅街の一角でした。そこは斜面で、平場がほどんどない変形地。ただ南側と西側に保安林が広がっていて、自然公園のように緑豊かでした。美しい景観は地域の人たちにとっても大切な存在です。そこで建築家は景観に配慮して、前面道路から保安林までの視線の抜けを確保しつつ、家のなかに周囲の緑を最大限とり込めるよう設計しました。

近隣住民が親しんできた景観を変えないよう設計されたのは、高低差を生かした平屋のような家。前面道路の傾斜に合わせて道なりに続くような屋根は、人の目線をその先の緑へと導く
近隣住民が親しんできた景観を変えないよう設計されたのは、高低差を生かした平屋のような家。前面道路の傾斜に合わせて道なりに続くような屋根は、人の目線をその先の緑へと導く

景観への配慮から地上の高さを低く抑えた一方で、横方向にはぐっと広く空間を伸ばしています。地下あるのは、玄関と寝室のみ。大きな窓の外には青々と茂った木々が立ち並び、森のなかで暮らしているかのようです。土地条件の難しさを克服し手に入れたのは、何物にも代えがたい家族の暮らしの場でした。

建物横の緩やかな階段を降りると、ガラス張りで明るい玄関。地下は玄関と寝室のみで、ほかの部屋はすべて2階に配置
建物横の緩やかな階段を降りると、ガラス張りで明るい玄関。地下は玄関と寝室のみで、ほかの部屋はすべて2階に配置
地下の玄関から直階段で1階へ。北側の安定した光が玄関に届くよう階段上部の一部を吹き抜けにした
地下の玄関から直階段で1階へ。北側の安定した光が玄関に届くよう階段上部の一部を吹き抜けにした
緑のなかに浮いているかのように見えるAさんのお住まい。変形地の難しさを設計でクリアし、この特等席を手に入れた
緑のなかに浮いているかのように見えるAさんのお住まい。土地条件の難しさを設計でクリアし、この特等席を手に入れた
3方向に大きな窓のあるLDK。周囲の環境と一体化するようなおおらかさがある

■設計/(有)都市建築設計集団/UAPP
■施工/(株)プライム下舘工務店
<Replan東北 vol.46>

満足の家を建てるには、敷地条件を上手に家づくりに生かせる設計力が必須。家づくりのよいパートナーを見つけることが大前提ですが、変形地は利便性が高い人気エリアでも売れ残りがちで、価格が周囲の相場より安いことも多いようです。家づくりをお考えの方は「変形地だから無理!」と思わず、可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

今週末の12月28日(土)発売の最新号「Replan北海道vol.127」と来年1月21日(火)発売のReplan東北vol.67では、さまざまな特徴のある変形地で納得の家づくりをしたご家族を取材しています。そちらもぜひご覧ください!

(文/Replan編集部)

Replan北海道 vol.127
2019年12月28日(土)発売

北海道内の主な書店やコンビニのほか、
Replanの販売ページamazonfujisan
オンラインでもご購入いただけます。