メーカーによって性能が違う

ここで私たちが注目したのが太陽熱の透過率です。同じような性能のガラスをつくってきた大手ガラスメーカーが、高性能なArLow-Eのペア〜トリプルガラスをつくるにあたって、全く異なる性能のガラスをつくるメーカーが出てきました。熱損失は多少増えても太陽熱をより多く透過させるガラスを出してきたのです。図-1にそれを示します。熱貫流率を低くして熱損失を少なくすることを優先した「高断熱型」と太陽熱の透過率(日射侵入率)を高くすることを優先した「高透過型」ガラスで、これらを比べると熱貫流率と日射侵入率がそれぞれ10%ほど違います。どちらが良いのでしょうか。

図-1 ガラスの熱貫流率と日射侵入率
図-1 ガラスの熱貫流率と日射侵入率

結論は、北海道の道東など日射量の多い地域では「高透過型」が良く、日本海側の日射量の少ない地域では「高断熱型」のほうが良いようです。北海道の札幌市や旭川市はちょうど中間に当たり、どちらを使ってもあまり差がありません。しかし、南面の窓を大きく取ったパッシブソーラー的な設計では高透過型のほうが良く、同じ住宅でも東西北の窓では高断熱型のほうが暖房エネルギーが少なくなります。

私たちがQ1.0住宅の設計に使っているQPEXという暖房エネルギー計算ソフトを使うと、どちらが良いかは簡単にわかります。問題は、このガラスを自由に選ぶことができない点です。樹脂サッシは工場でガラスを組み込んでしまいますから、サッシメーカーが採用しているガラスしか選ぶことができません。残念なことです。

 

ペアよりトリプルのほうが性能が高い?

ペアガラスよりトリプルガラスのほうが熱損失は大幅に少なくなります。しかし同時にLow-E膜を2層使ったトリプルガラスでは、日射侵入率が20%近く少なくなります。これで暖房エネルギーを計算してみると、トリプルガラスのほうが若干少なくなる程度です。住宅の熱損失係数(Q値)は大幅に少なくなるのですが、暖房エネルギーはあまり変わらないようです。16mm空気層のトリプルガラスは、ガラスと空気層を合わせると厚さが41mmにもなりますからサッシ全体が厚くなり、窓の価格はとても高くなります。ここは十分検討する必要があるところです。

トリプルガラスの良い点は、ガラスの室内表面温度が高くなる点です。図-2にガラスの性能別表面温度を示します。外気温がマイナス10°Cの時、16mmArLow-Eペアで16°C、2Ar2Low-Eトリプルで18°Cとなり、2°Cも差があります。断熱された壁の表面温度が19°Cよりちょっと高いだけですから、18°Cというのはガラス窓としては驚異的な性能です。もっとも、ペアでも16°CなのでこれまでのLow-Eペアに比べて2°C高くなっています。

図-2 ガラスの室内表面温度
図-2 ガラスの室内表面温度

 

16mmArLow-EペアでもQ1.0住宅ができる

私たちは、省エネ基準の半分の燃費になるQ1.0住宅(レベル-1)を、16mmArLow-Eペア入りの樹脂サッシ窓、熱交換換気を採用し、壁の断熱厚さを高性能グラスウール210mmにするだけで実現します。この仕様の住宅を北海道の標準と考えています。もっと性能の高い、燃費が1/3〜1/4になるQ1.0住宅(レベル-2〜4)ではじめてトリプルガラスの窓を使います。熱損失を少なくするためにむやみに値段の高いトリプルガラスのサッシを使わなくても省エネ住宅はできるのです。レベル-1なら、省エネ基準の住宅に比べて坪2万円のコストアップで建設できるようにしたいと考えているのです。