田園都市、江別のシンボル的存在となったライフスタイル提案型複合施設「江別 蔦屋書店」。住宅街に囲まれ、市民の憩いの場になっている飛鳥山公園や四季のみちにも隣接する、季節の移ろいを身近に感じられる環境。「街の皆さんが気持ちよく過ごせる居場所になってほしい」と、立地を最大限に生かし、自然と共存できるコミュニティーを育む空間としてつくられました。開業から1年半経った今も週末ともなると駐車場は車でいっぱい。地域の人々に街の「居場所」として愛されています。
ヒトとコトがつながる地域の特等席
設計を担当したヒココニシアーキテクチュア株式会社・建築家の小西彦仁さんは「江別ならではの空気感を建物にまとわせたい」と、地元で生産されているレンガを用いた牧歌的な三角屋根の建物を提案しました。延床1300坪超のレンガ張りの3つの建物は、食・知・暮らしのテーマに合わせて、空間を構成。中でも、圧巻なのは「森の中の図書館」と名付けられた「知」の棟。床から天井まで9ｍの本棚が巨木のように立ち並ぶさまは、訪れる人を未知の知へ誘います。本の木立を縫うように、読書や自習に便利なラウンジやワークスペース、カフェも設けられています。
「美味しいコーヒー片手に好きな場所、自分だけのとっておきの居場所を見つける楽しさも味わっていただきたいと思い、本の森の中に個性豊かな140もの椅子をちりばめました。今では地域の方々に学校や職場、家庭に次ぐ、新たな活動の場として活用されています」と、同書店副館長・企画営業チームリーダーの望月起一さんは話します。
一方、「本屋がつくる公園」と銘打った「暮らし」の棟では、カタログでは味わえない偶発的な出会いの喜びを大切にしながら、これからの時代の生き方、田園都市ならではのスローライフを提案しています。子育てや家族、遊び、趣味、コミュニティーなどテーマごとに展開する書棚まわりには、テーマを同じくする花と緑、アウトドア、インテリアなどの物販も。また、地域と暮らしに密着した多彩なイベントやワークショップが開催され、実用書をめくるだけでは伝わらない生活シーンをリアルにイメージすることができます。
誰もがほっとするわが家のような空間
蔦屋書店を訪れる人の滞在時間は、1時間から2時間にも及ぶといいます。思わず長居したくなる秘密は、建物そのものにもありました。「実は人が最も居心地よく感じられる空間は、住宅なんです。この建物の設計にあたっても、ヒューマンスケールを基本にしています。さらに、吹き抜けや大開口、スリットを多用しながら光をコントロールし、背後に広がる森の彩りや自然の息吹がにじむような空間づくりを心がけました」と、小西さん。
さらに、雪が多く、風が強い江別にありながら、独立した3棟の建物は吹きさらしの渡り廊下で結びました。内と外を行き来する渡り廊下は、風の気持ちよさや雨や雪、緑の匂いを五感で味わう装置として機能しています。冬は風除けのテントを張り、それが外れたら春が来る。そんな風土に密着した季節感の演出ともいえます。
外壁のレンガ、地場の工場で加工した天井の板金、薪火を使う暖炉など本物の素材に囲まれ上質な空気感が漂う店内で、審美眼が磨かれていく時間。単なる「書店での買い物」ではなく、さまざまな過ごし方を通じて自分だけの「居心地のよさ」を見つける旅に出てみませんか？
Idea.1 自分だけの椅子と過ごす
「訪れる人にそれぞれの過ごし方をしてもらいたい」と、館内にはさまざまな種類の椅子が設置されています。「知」の棟では、書棚の前にデザイナーズ・チェアが置かれ、コーヒー片手に読書ができます。お気に入りの椅子を探すのも、江別 蔦屋書店ならではのお楽しみ。
Idea.2 本と一緒に暮らしもイメージ
食・インテリア・アウトドア・ガーデニングといった生活シーンごとに書棚と物販を組み合わせ、興味をすぐに行動に移せる動線となっている店内。ガーデニングや花のある暮らしをテーマにした書棚には、フラワーショップが隣接。暮らしをイメージしながら自分に必要なものは何か、考えるヒントがちりばめられています。
Idea.3 冬の特等席は暖炉の周り
カフェのカウンターと暖炉のある「知」の棟1階は、背後に広がる森の四季が一望できる望月さんお気に入りの居場所。「いつ来ても気持ちがいいんですが、薪のはぜる音を聞きながら、降る雪を眺め、コーヒー片手に本を読むひとときは格別です」。
 江別 蔦屋書店所在地：江別市牧場町14-1 新型コロナウイルスの影響で営業時間が変更になっている場合がございます。 |