二世帯住宅にもいろいろありそう?

高齢化社会、少子化、核家族化、大都市への人口流入…。日本の現在の社会状況の中で、これらの言葉がよく使われます。こうした中、地方で二世帯住宅をこれから建てることができる人たちは、幸せな人たちでしょう。普通は親世帯と子世帯の同居する住宅です。かくいう私も、子どもたちは二人とも結婚して東京で働いていて、二世帯住宅に住む可能性はまったくありません。親子が同じ町で生活し、同居住宅を構想する可能性のある人は日本にどれくらいいるのでしょうか。昔はよくある話でしたが、今は違うようです。もっとも二世帯住宅といっても、最近は親子とは限らないことも考えると、そうでもないのかもしれません。

何はともあれ二世帯住宅には、建築的にいくつかのパターンが考えられます。

①大きな住宅で単に二世帯が同居する
②共用部を残しながら、ある程度空間を各世帯専用にする
③完全に二世帯別々に仕切る
④2棟の住宅を独立させてつくる

①は以前にはよくあったケースです。大きな親の家に子世帯が同居するパターンで、サニタリーやキッチンは1つしかありません。この場合生じるかもしれない家族間のいろいろな葛藤を避けるため、②の形が最近は多くなっています。ここでサニタリーやキッチンをどれだけ別にするかで設計もいろいろ工夫が必要になります。それでもこのケースでは共用部も多く、世帯間の接点もかなり残るでしょう。

これに対し、二世帯を完全に別々につくるのが③です。1階と2階に分けたり、2つの住戸が隣り合うように分割したりします。2つの住戸を隣り合って密着するのではなく、離してしまう④のような形では、将来貸家にすることも十分考えられるわけです。建設費で考えれば、①から④の順に金額が増えていきます。

二世帯住宅は、ある意味集合住宅でもあるわけで、極端にはアパートを建てて、そのうち2つの住戸を使うという場合もあるわけです。

Q1.0住宅を設計する立場から、二世帯住宅を考えれば?

二世帯住宅をQ1.0住宅で建てて、夏や冬の快適な暮らしを実現し、かつ暖冷房費がかからない省エネルギーな家にしたいという思いは、今では当たり前になってきました。

省エネにするためには熱損失の小さな家にする必要があります。この点からいえば、①~③の二世帯住宅は、普通の戸建て住宅よりはかなり有利です。普通、二世帯住宅は50~60坪ぐらいの大きめな家になります。一般論として大きな家は、同じ厚さの断熱で構成されていれば、小さな家より床面積当たりの熱損失が小さくなります。例えば50坪の1棟の二世帯住宅と、④のような25坪2棟の住宅を考えれば、2棟の住宅をぴったり付ければ、その分外壁がなくなることから、おわかりになると思います。だからといって④のケースを否定するものではありません。④は二世帯の独立性が最も高く、それなりに断熱を厚くすればいいだけです。要は、しっかりと目標性能を定めて、必要な熱性能を確保すればいいのです。

Q1.0住宅の二世帯住宅を、暖冷房設備と暖冷房費という点から考えると、今までの常識からは異なる視点が生まれてきます。これまでの考え方だと、暖冷房費はかなりの金額になります。特に寒冷地では暖房費が結構かかっていました。したがって二世帯住宅の場合、設備や灯油タンクも別にして、それぞれの世帯がかかった分だけ負担するのが一般的でした。

それがQ1.0住宅では、暖房費が半分以下になります。特に大きめな住宅になる二世帯住宅では、熱損失を小さくしやすく、暖房費は二世帯で負担するとしても、一世帯分はこれまでの暖房費の1/2〜1/3にすることも可能になります。暖房費を節約するために暖房を切ったり入れたりすることもなくなり、どちらの世帯も同じような温度環境になりますから、①~③の二世帯住宅では、設備も共用にして、暖房費を面積割りで分けて負担することも可能になります。寒冷地では、冷房費は総額としても小さく、エアコンを別々に設置することが多く、この電気代はそれぞれで払えばいいわけです。特に暖房を温水暖房とする場合などは、ボイラー設備を1つで済ませることが可能になり、建設費は大幅に節約できます。

以前、室蘭に2階が6戸のアパート、1階が保育園という建物を設計したことがあります。この建物の暖房はボイラー1台でまかない、アパートの暖房費を毎月定額制として、非常に好評を得たことがあります。