人類の進化を促したことの最大の要因は、道具を発明したことであろう。動物を獲る際の槍の先端や矢に取り付ける矢尻、そして捕獲した獲物を解体するための石斧や石包丁など、黒燿石を鹿の角などで加工した石器は、食物の加工だけにとどまらず、生活のあらゆる場面で使われ、暮らしを豊かなものにしたのだ。

様々な物体を人間の手の力だけで加工するためには、様々な動作が必要である。そうした動作は、道具を最も使い易く加工することで道具の機能性を生み出したのである。

手で道具を制作する際の動作には、打つ、叩く、砕く、潰す、碾(ひ)く、搾る、割る、裂く、彫る、削ぐ、削る、穿(うが)つなどの動詞がある。このほか、刃物で物質を切る行為にも幾つもの動詞がある。挽く、は鋸を使って切る場合に、刻む、は小さく切る場合に、截(き)る、はハサミで紙や布を切る場合に、そして伐る、は樹木を倒す際に、さらに、斬る、は刀などで人を切る際に使われるが、これら「きる」行為を総して「切る」という言葉が使われることが多い。

こうした切る道具としての刃物には荷重をかけて切る押し切りタイプと、刃に平行に引きながら切るタイプの2通りがある。このタイプの違いを間違えると怪我をすることになる。例えば、カミソリは髭に対して直角方向から引く(押す)のが正しいが、これを横に引いてしまうと肌を傷つけてしまう。

また、西洋と日本の刃物(特に包丁)では大きな違いがある。和包丁では本焼き包丁と呼ばれるもので、柄以外の部分が全て鋼で出来ている全鋼包丁や、片面のみ付け鋼と呼ばれる鋼を使用した片刃包丁、刃の部分にだけ鋼を入れた割り込み包丁、さらに中心部分に鋼を使い、その側面を鉄板で覆った3枚合わせ包丁がある。これら付け鋼、割り込み、3枚合わせを総称して合わせ包丁と呼ぶ。つまり和包丁は使途に合わせて刃の部分に鋼を使用しているのだ。また、刃の部分を研ぐ際、片方だけを砥石に当てて研ぐ片刃と、両側を砥石に当てて研ぐ諸刃(両刃)がある。諸刃包丁は基本的に断面の形状が対称形になっている。洋包丁はほぼ総てが諸刃であり、全鋼製である。

今回紹介するデンマークのステルトン社は、アルネ・ヤコブセンのシリンダー・ラインシリーズで世界に知られたプロダクトメーカーである。写真のナイフシリーズはホルムバックとノルデントフトの2人のデザイナーによって発表されたものだ。柄も刃も一体となっており、さらに全体が黒いマット仕上げのため、極めてシャープな印象を受ける。また、ナイフホルダーはマグネット製であり、白色のホルダーは白壁に同化し、あたかもナイフが壁に貼り付けられたかのようである。刃物と言えば恐ろしい、恐い印象であるが、このナイフはアートオブジェのようでもある。

■PURE BLACK KNIVES(ピュアブラックナイブズ)
メーカー:STELTON(ステルトン)
素材
ナイフ:ステンレスクロム、ポリエステル系樹脂コーティング
ホルダー:スチール、マグネット
注意事項:食洗機不可
サイズ・価格
ユーティリティナイフ:20㎝・8,000円(税別)
サントクナイフ:28.5㎝・13,000円(税別)
シェフナイフS:23.5㎝・10,000円(税別)
シェフナイフL:34.3㎝・17,000円(税別)
ブレッドナイフ:37.4㎝・15,000円(税別)
ピュアホワイト マグネティックナイフホルダー: 42㎝・15,000円(税別)

<問い合わせ先>
アカツキコーポレーション
http://www.akatsuki.com