今回は、南会津エリアで超高性能住宅を目指した家づくりを進める(株)星工務店 代表取締役の星隆行さんに、地域の気候風土に合った「住まいの性能」について、さまざまなエピソードを交えて語っていただきました。


(株)星工務店
代表取締役

星 隆行さん

1978年福島県南会津町(旧・南郷村)に生まれ、鹿児島県の大学で構造力学を専攻。中堅ゼネコンで現場管理を学び、2004年に実家の星工務店に入社。2010年、一級建築士の資格を取得。2016年、代表取締役に就任。NEOMAリーダーズクラブに加盟し、住まいの高断熱化に取り組んでいる

 

南会津の厳しい冬を
暖かく過ごすためには
住まいの高断熱・高気密化が必須

星工務店が拠点とする福島県南会津郡は山沿いにあり、国内でも有数の豪雪地帯です。冬はマイナス15℃以下にもなり、1年のうち5ヶ月は寒さの問題に直面します。こうした気候の厳しい地域で、ことさら重要になってくるのが住まいの性能、特に断熱性と気密性です。

UA値という言葉を聞いたことがあるでしょうか。どれくらいの熱量が家の外に逃げやすいのかを表す数値です。この値が小さければ小さいほど熱が逃げにくく、「断熱性が高い」ということになります。そしてこのUA値は0.1違うと、室内温度に3℃の差が出るといわれています。つまり高断熱になればなるほど、冬も暖かく快適に過ごせるというわけです。なお、建築物省エネ法における暖房の必要度を表す地域区分によると、南会津は3地域と2地域が混在した地域です。2地域というと、札幌市や旭川市、釧路市といった北海道の多くの地域と同等ですから、南会津の冬がいかに過酷かお分かりいただけるでしょう。

また、気密性とは、住宅の隙間をなくして室内の空気をどれだけ住宅内に閉じ込めることができるかという性能のこと。こちらも冬を暖かく過ごすにはとても重要です。というのも、いくら断熱性を高めても、気密性が低ければ室内の空気が外に漏れやすく、室外の空気が室内に入り込みやすくなるため、暖かい室内空間を保つことができないからです。

断熱・気密性の高い家を
実現するカギとなるのが
パネル工法とダブル断熱

南会津地域のような過酷な気候の土地でも、住まいの断熱・気密性を高めれば暖かく快適に暮らせることがお分かりいただけたことと思います。
では、住まいの断熱・気密性を高めるためにはどうしたらよいのでしょうか?

まずは構造面です。従来の木造軸組筋交い工法(在来工法)は、間取りの自由度が高い反面、柱や梁の構造上、どうしても隙間ができやすく、断熱材も入れにくいことから、断熱・気密性に弱点がありました。そのデメリットを補うのが、当社が採用している新在来パネル工法です。この工法は、壁・床・天井などの各面をパネルで覆うため、構造的に強い上、壁の内部を有効に使って断熱材を充填でき、高断熱化を図れるという利点があります。

断熱材というと、「壁の中に充填するもの」というイメージがあるかもしれませんが、断熱性能を向上させるにはそれだけでは不十分です。なぜなら「充填断熱」だけでは柱の部分をカバーできず、そこから熱が逃げていきやすいためです。そこで、壁の外側に張る「外張り断熱」を組み合わせたダブル断熱がより有効となります。当社では、国内最高レベルの断熱性能を誇るネオマフォーム断熱材を標準仕様とし、壁の内外に施工することでさらなる高断熱化を図っています。
そして工法や断熱と同じぐらい大切なのが窓です。実は住宅のエネルギーは、窓から約60%が損失するといわれているのです。そのため当社では、断熱・気密性能の高い樹脂サッシ+高性能トリプルガラスの組み合わせをお勧めしています。

生命を守り、省エネでエコ
高性能住宅の目に見えない快適を
一人でも多くの人へ

住まいの断熱・気密性を高めるメリットは、一年中快適に過ごせることだけではありません。断熱・気密性が高い家は、全館温度差のない快適な室温を実現できるため、ヒートショックといった命に関わるリスクも軽減できます。意外に思われるかもしれませんが、北海道ではヒートショックで亡くなる方はそう多くありません。それは、住宅の性能が高く、家の中が暖かいからなんですね。

もう一つのメリットが、省エネルギーであるということです。断熱・気密性を高めることで、住まい全体のエネルギー効率が高まり、一次エネルギー消費量を大幅に抑えられるため、ランニングコストの低減やエコな暮らしにつながるのです。省エネ性を向上させるためには、躯体性能以外に設備機器の選択も重要になります。当社では、電気とガスの良いところ取りの「ハイブリッド給湯暖房システム」や、熱交換率の高い「24時間換気システム」といった高効率機器を取り入れ、省エネ性を追求。さらに太陽光発電による創エネの導入により、ZEHの家の設計・施工も行っています。

近年、当社にお声がけくださるお客様は、UA値やランニングコストなどに関心を寄せる方が増えており、とても嬉しく思っています。ですが南会津地域全体で考えると、まだまだ住宅の性能に目を向ける人は多くありません。性能は目に見えない部分ですから無理もないかもしれません。しかし高性能な家を一度体感すれば、きっとその快適さを実感していただけるはずです。高断熱・高気密な家が南会津の地にもっと普及し、冬に寒い思いをする人がいなくなること、それが私の願いです。

Case.1 会津坂下町・Hさん宅

ナチュラルな色合いでまとめたこちらのお宅は、「4地域」でありながら、UA値は北海道基準並みの0.28W/㎡Kを実現。太陽光発電パネルを4.44kW搭載したニアリーZEHの住まいです。35℃を超える猛暑日でも、リビングに設置されたエアコン1台で全館ひんやり。高断熱な住まいの実力をいかんなく発揮しています。


Case.2 南会津町・星さん宅

全体にコンパクトでありながら、広めにとった玄関ホールや、リビングからキッチン、水まわりまで回遊できる動線など、暮らしに合わせたメリハリのある間取りが特徴的な住まい。星工務店ならではの高断熱仕様でUA値は0.22W/㎡K。太陽光発電を併用した超省エネ住宅です。


Case.3 南会津町・Tさん宅

無垢材を多用した、明るく開放的な住まい。高断熱仕様でUA値は0.29W/㎡K。約20帖のLDKは、パイン無垢材のフローリングと色調を合わせた飾り梁や、天井まで高さのある格子の建具でシンプルながらも個性的な空間となっています。シューズクロークや寝室のウォークインクローゼット、屋根裏収納など収納スペースも充実した、子育て世代に嬉しい住まいです。