インテリアファブリックとは、ソファやカーテン、ベッドカバーといったインテリアで使われる布地や織物などの布製品のことです。インテリアコーディネートにおいて「色彩」は大きな要素ですが、「素材感」や「柄」も無視できません。そこで今回は、インテリアのイメージづくりに欠かせない「ファブリックの柄」について、インテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきます。


糸の交差で描かれる、ファブリックの織柄

フェルトや不織布以外の布地は、経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)の交差によってつくられ、浮いた織り糸と沈んだ織り糸の差が柄として表されます。織柄の凹凸や糸の光沢が立体感を生み、見る角度や光の加減で植物、紋、縞などの模様が見え隠れする様には、織柄ならではの美しさが感じられます。

単色の織柄は静かな印象でありながら高級感があって、色に頼らずにインテリアをまとめたり、変化をつけたりする力があります。植物や紋章などのモチーフが連続するダマスク柄は、現代のインテリアの対極にあるようなクラシカルな織柄ですが、500年使われ続けてきた緻密なデザインが魅力です。重厚さが求められるインテリアでよく映えます。

単色の織柄は静かな印象でありながら高級感が漂う。柄物の壁紙とも相性が良い
淡いベージュの糸のみで織られたダマスク柄
拡大してみると、経糸と緯糸の浮沈で細かな柄をつくっていることがわかる。糸の光沢が柄をより立体的に見せている(左・右写真提供/(株)サンゲツ)

デザインの幅が広い「ボタニカル柄」

写実的で緻密な描写の古典的な植物柄から、デフォルメされたポップな花柄まで、植物をモチーフにしたボタニカル柄は、いつの時代も人気です。小花を散りばめたデザインはかわいらしい印象をつくりますし、葉や蔓を描いた大柄なデザインはエレガントさが強調されます。

写実的な植物を織柄で表現
写実的な植物を、織柄で表現したファブリック
平織りのリネン混の生地にレーヨン糸で植物柄を刺繍。刺繍部分の立体感が柄を際立たせる
平織りのリネン混の生地に、レーヨン糸で植物柄を刺繍したもの。刺繍部分の立体感が柄を際立たせる(左・右写真提供/(株)サンゲツ)
透け感のある生地に葉の模様が描かれたプレーンシェード。シンプルなデザインが空間のアクセントに

カーテンは基本的に四角い布ですが、ヒダの取り方で花柄の印象も変わります。北欧モダンで人気のシンプルなボタニカル柄は、フラットな仕上がりにすると植物の形がはっきり見えて、インテリアとして効果的です。

単純化された花びらが楽しい北欧テイストの花柄プリント(写真/(株)サンゲツ)
単純化された花びらが楽しい北欧テイストの花柄プリント(写真提供/(株)サンゲツ)
北欧デザインのファブリックを、パネルにして飾った例
北欧デザインのファブリックを、パネルにして飾った例

一方、150年以上の時を経た今もファンが多いウィリアム・モリスのような古典的なボタニカル柄は、深いヒダのオーソドックスなデザインが似合います。緻密で繊細なボタニカル柄には絵画のような見応えがありますので、小窓や細長い窓のプレーンシェードに用いるのも素敵です。アート作品のように額装したり、ファブリックパネルをつくって飾るのもいいアイデアですね。

150年以上経た今も根強い人気を誇るウィリアム・モリスの代表的なデザイン「いちご泥棒」(Photo by Birmingham Museums Trust on Unsplash
パブリックパネルにして壁に飾っても、素敵なインテリアに(Photo by Birmingham Museums Trust on Unsplash

ボタニカル柄には、桜=春、ひまわり=夏など季節感を強く感じるモチーフもあります。「ものすごくその柄が好き!」いうことであればまったく問題ありませんが、一般的には季節感が強いボタニカル柄は、クッションやベッドカバーなど、季節によって手軽に取り替えられるもので選ぶのがおすすめです。

シンプルなインテリアに取り入れやすい「幾何学模様」

幾何学模様は非常にバリエーションが豊富で、ヨーロッパ発の「アールデコ」、西アジアの「アラベスク」、日本の「籠目」「青海波」「麻の葉」など、世界中に美しい模様があります。建築の装飾にも多く使われている幾何学模様は、インテリアファブリックとの相性も申し分ありません。

曲線はやわらかさや優美さにつながり、直線が強調されるとシャープで都会的な印象になります。 カーテンに斜めのラインの柄を選ぶと、常に動いているように見えて落ち着かない雰囲気になることがあるので、注意しましょう。また幾何学模様は連続性がポイント。ウィンドウトリートメントなど、広い面積で使う際には特に、模様のつながり方を大きめのサンプルで確認しておくと安心です。

建築ではモザイクタイルでみることが多いアラベスク模様を、織柄で表現したデザインの生地
建築ではモザイクタイルでみることが多いアラベスク模様を、織柄で表現したデザインの生地
和の文様「七宝」をアレンジした幾何学模様。「七宝」は円満を意味する吉祥柄
和の文様「七宝」をアレンジした幾何学模様。「七宝」は円満を意味する吉祥柄
定規とコンパスで描いたような幾何学柄
定規とコンパスで描いたような幾何学柄
「まる・さんかく・しかく」を組み合わせた幾何学模様。透け感がある生地と不透明なプリントの対比がカーテンならではの面白さ
「まる・さんかく・しかく」を組み合わせた幾何学模様。透け感がある生地と不透明なプリントの対比がカーテンならではの面白さ
緩やかな三角がぎっしり詰まったような幾何学模様
丸みを帯びた三角がぎっしり詰まったような幾何学模様
水玉模様。この生地はドットの部分を織り糸で膨らませたふぞろいさが楽しい
ドット柄(水玉模様)も幾何学模様の一つ。この生地はドットを織り糸で膨らませたふぞろいさが楽しい(全6点の写真提供/(株)サンゲツ)

インテリアのさりげないアクセント。
「縞柄(ストライプ)・格子柄(チェック)」

平行な直線の繰り返しが基本のストライプ(縦縞・横縞)は、縞の太さだけでも印象が変わってバリエーションが豊富なスタンダード柄です。縦ストライプは「空間の高さ」を、横ストライプは「空間の広さ」を強調します。連続した窓に同じ横ストライプのカーテンをかけるときは、線が隣同士でつながるように仕立てるとすっきりとした印象になります。

ストライプ(縦縞)は「空間の高さ」を強調
縦ストライプは「空間の高さ」を強調
ボーダー(横縞)は「空間の広さ」を感じさせる
横ストライプは「空間の広さ」を強調(左・右写真提供/(株)サンゲツ)

ストライプと並んで一般的なのが、「チェック(格子柄)」です。単色のギンガムチェックや多色使いのタータンチェックなど、こちらも種類が豊富。縞模様よりもかわいらしさやカジュアルな雰囲気が出る柄といえるでしょう。

チェック(格子柄)もデザインは豊富。可愛らしさやカジュアルさが特徴(写真提供/(株)サンゲツ)
チェック(格子柄)もデザインは豊富(写真提供/(株)サンゲツ)
アースカラーの組み合わせのチェック柄カーテンが、空間に甘すぎないかわいらしさをプラス
アースカラーの組み合わせのチェック柄カーテンが、空間に甘すぎないかわいらしさをプラス

昭和テイストのレトロモダンや、大人かわいいデザインが人気

ファッションでもインテリアでもよく耳にする「流行色」という言葉ほど、「流行柄」という言葉は聞きなじみがありません。でも柄に流行はないかというと、そうでもなさそうです。例えばカーテンの歴史を紐解くと、各時代らしい柄が並んでいて、柄にも流行の繰り返しの波があることがわかります。

今、人気のインテリアスタイルは昭和テイストの「レトロモダン」。カーテンのカタログには、昭和時代の生地を再現したような柄が多く見られます。また最近は、北欧テイストの香る大人かわいいデザインも増えていますね。

今のトレンドは、昭和テイストの「レトロモダン」。当時はメリハリがきいた配色が特徴的だった
今のトレンドは、昭和テイストの「レトロモダン」。当時はメリハリがきいた配色が特徴的だった
大人カワイイデザインが増加中。鳥や魚、動物などの絵柄は、好みが分かれやすいところ(写真提供/(株)サンゲツ)
大人かわいいデザインが増加中。鳥や魚、動物などの絵柄は、好みが分かれやすいところ(左・右写真提供/(株)サンゲツ)

カーテンやソファの生地は面積が大きくて存在感があるため、インテリア全体のイメージを左右します。今は家づくりの傾向としてはシンプルなものが好まれるので、インテリアは全般的に無地が選ばれがちですが、家は自分たちが居心地いいのが一番。好きな柄のファブリックを取り入れながら、憧れのインテリア空間を目指してくださいね。

幾何学模様が描かれたベッドカバーが、シックで落ち着いた雰囲気の寝室を心地よく演出
幾何学模様が描かれたベッドカバーが、シックで落ち着いた雰囲気の寝室を心地よく演出。さりげなく個性が感じられる