前回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに「6帖に3ヵ所が目安!コンセントの数や取り付け場所、高さの基本とは?」と題し、家づくりで知っておきたいコンセントの基本について教えていただきました。

近年は電圧の高い家電が多く、USBコンセントなど新しいタイプのコンセントを住宅で使う例も増えています。そこで今回は、スタンダードなコンセントとは仕様が違う「特殊コンセント」について解説いただきます。


「機能付きコンセント」の種類いろいろ

電気の取り出し口として住まいで必要不可欠な「コンセント」。どのご家庭にもあるスタンダードなコンセント以外に、「使い勝手の良さ」や「安全」などの機能がついたさまざまな家電に対応するコンセントがあります。毎日の暮らしに便利な「機能付きコンセント」をご紹介しましょう。

「3口コンセント」はプラグや
電源アダプターのサイズに注意

コンセントの基本使用は「差し込み口が2つ」のタイプですが、そこにもう一つ加えて、差し込み口を3つに増やしたコンセントがあります。

1ヵ所でまとめて家電が使えて便利ですが、注意点も。プラグや電源アダプターのサイズが大きいと、中央の差し込み口が使えない場合があります。

3口コンセントのサイズ
図面ではコンセント記号の側に「3」の数字が付く

4つ以上の差し込み口が欲しいときは、コンセントプレートの大きさを変えて対応します。最大12個まで差し込み口をつけることができる、大きなプレートもあります。

コンセントは1つのプレートにたくさんの差し込み口を付けることが可能ですが、用途や使う家電のプラグや電源アダプターのサイズによっては、あえて差し込み口の数の少ないプレートを複数付けたほうが使い勝手がいいこともあります。参考までに、下図のとおり、プレートのおおよその大きさと、最大の差込口を示します。

近年より強く推奨されている
「アース付きコンセント」

ご存知のとおり、洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなどの家電に付属する緑色のケーブルは「アース線」といい、漏電や雷の電気を地中に逃がす働きがあります。

またこれは、家電が発する電磁波や静電気で起きる他の電化製品との干渉を、緩和する働きも担います。アース線をアース付きコンセントに接続させることで、電気を安全に使うことができるのです。

図面上のアース付きコンセントの記号
E : earth( アースの頭文字 )

2022年12月に電気設備に関する内線規定が改正され、アース付きコンセントの設置がより強く推奨されるようになりました。

特に以下の1~8の電化製品を使用する場所には、アース付きコンセントの設置が義務づけられています。 

  1. エアコン(電気冷暖房機)
  2. 冷蔵庫
  3. 食器洗い乾燥機
  4. 電子レンジ
  5. 洗濯機
  6. 電気衣類乾燥機
  7. 温水専用便座
  8. 電気温水器(エコキュート)

家電をどの部屋のどこに置くかを決めたら、アース付きコンセントの位置を確認しましょう。

造作の棚と洗面台を備えたユーティリティは、明るく気持ちがいい空間。物干し場のあるウッドデッキとの行き来もスムーズ

キッチン・洗面室・トイレといった水まわりは、すべてのコンセントをアース付きにすることが定められています。キッチンでは、冷蔵庫や電子レンジ以外のコンセントもアース付きが必要です。電気設備や配線の打ち合わせ時に確認しましょう。

下図はアース付きコンセントの一例です。上は3Pプラグ用コンセントです。現在はパソコンのプラグに使われる程度ですが、欧米で普及しているため、今後日本で広がることが予想されます。 下は、アース端子付きコンセント。緑のアース線をこの端子に接続します。

エアコン用は「スイッチ付きコンセント」に

使用しない期間が長いエアコンは、「スイッチ付きコンセント」がおすすめです。プラグを差し込んだままで待機電力をカットできます。

エアコンのコンセントは通常手が届きにくい高い位置に設置され、抜き差しが容易ではありませんし、抜いたプラグがぶら下がっているのは見た目もよくありません。小さなスイッチですが、かなりストレスフリーです。100V用と200V用があり、エアコンの機種やスペックに合わせて選べます。

100V用
200V用
(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

家電の100Vと200Vの違いとは?

家電の100Vと200Vの違いは「パワフルさ」です。最近の日本の住宅だと、IHクッキングヒーターやエアコンなどはより大きなパワーが必要なため、200Vの製品が多く販売されています。

また日本でも人気のMieleやBOSCHなどヨーロッパ製の食器洗い乾燥機やビルトイン洗濯機なども200V。使用する電気量は大きい分、短時間で仕事が完了します。

なお100Vと200Vのコンセントは形状が違うため、間違えて差し込むことはないでしょう。

外で安心して使える「屋外用防水コンセント」

屋外用コンセントは、一般的に「防水コンセント」と呼ばれています。先に触れた内線規定の改正で、防水コンセントはアース付きが義務化されましたが、事故を避けるためにも、雨水の跳ね返りや雨水に浸かる可能性がある場所への設置は避けたいところです。

設置する高さは、地面から30㎝以上が推奨されています。北海道や東北のように積雪が多い地域や、雪の吹き溜まりができやすい場所では、「カバー付きの防水コンセント」を選ぶと安心です。

防水コンセント
カバー付き防水コンセント
(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

なお屋外用防水コンセントに接続させるガーデンライトは、コンセントに屋内から操作できるスイッチをつけると便利。盗電防止対策にもなります。

室内でスイッチのON-OFFができることで、盗電防止にもなる
室内からスイッチのON-OFFができることで、盗電防止にもなる(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

スマートフォンの充電やパソコン
電源用に便利な「USBコンセント」

スマートフォンやタブレットの充電やパソコンの電源用として登場し、普及しているUSB端子をそのまま差し込める「USBコンセント」。電源アダブタが不要なので、デスクまわりがすっきりするのが魅力です。

(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)
(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

USB-AやUSB-Cの充電用コンセントなど、複数を一つのコンセントプレートまとめる場合、数量に制限があります。 一般的なコンセントに比べ、特殊な分高価ですので、種類や必要数を慎重に検討して決めましょう。

USB-A、USB-A、コンセント
USB-A、USB-C、扉付きコンセント
(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

しばらく前まで標準的に使われていたUSB-Aは今、USB-Cへと移行しています。長い目で見ると、端子の種類は変わっていく可能性が高いので、コンセントはそのことも含め検討したいところです。

未来のスタンダードに?
EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)のコンセント

電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)とガソリン車との決定的な違い、それは「充電」の要・不要です。

充電時間は車種によって異なりますが、一般に満充電にするには200Vで4時間以上、100Vで十数時間かかります。帰宅後に車の充電口に充電ケーブルを差し込んでおくと、翌朝には充電が完了しているイメージです。

帰宅したら充電ケーブルを差し込んで自動車を充電

充電用コンセントはカーポート近くの外壁や、車庫内の壁につけるタイプが一般的。駐車スペースの近くに壁がない場合は、専用ポールやスタンドを用います。

EV・PHWV用の充電用コンセント。専用ポールやスタンドもある(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)
EV・PHWV用の充電用コンセント。専用ポールやスタンドもある(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

車を停める向きや充電口の位置に合わせて充電用コンセントを設置する必要があります。使い勝手の良さから、充電コンセントの高さは90~120㎝がいいとされています。いたずらや盗電を防止するカバー付きのタイプもあります。

盗電防止のカバー付きタイプも
盗電防止のカバー付きタイプも(写真/パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)

住宅で使う家電の種類が多様化する今、特殊コンセントが必要な場面が増えています。基本的には家づくりのプロが教えてくれたり、アドバイスしてくれる部分ではありますが、どこで何をどのように使うかは、家族の暮らし方によって違う部分もあります。

後々後悔しないためにも、プランニングの際には住まい手自身が、新居での過ごし方、家電の置き場所や使い方をイメージして、コンセントの種類についても主体的に考えることが大切です。

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