「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2024」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、宮城県仙台市を拠点に注文住宅を手がける菊池佳晴建築設計事務所の菊池 佳晴さんです。

自然環境と呼応する住まいづくり

新建材や機械設備にできるだけ頼らず、身近にある自然素材(木、土、石…)や自然エネルギー(太陽、風、水…)を意匠的にも機能的にも住まいの設計に生かして、周囲の自然の恵みを感じながら長く愛され、使い続けられる住まいをつくることが必要だと感じています。

適度な断熱性能により、冬も夏も心地よい上質な室内環境をつくりながら、刻々と変化する光や風、四季折々の植栽などの自然の気持ちよさを室内に取り込み、自然環境と呼応する豊かな住まいをつくりたいと考えています。

植栽による豊かな緑に映えるモダンな外観。木製ルーバーでプライバシーに配慮した
植栽による豊かな緑に映えるモダンな外観。木製ルーバーでプライバシーに配慮した
駐車場から緑の路地を抜けて玄関にアプローチできる
駐車場から緑の路地を抜けて玄関にアプローチできる

庭を楽しむ平屋の住まい

大きく東側に開いた敷地であったため、庭に囲まれたのびやかな大屋根の平屋の計画としました。玄関までのアプローチにある前庭は、近隣の方々にも四季折々の木々の変化を楽しんでもらいながら、住宅地の景観を整えます。

木製ルーバーにより、外と内の中間的な落ち着きある玄関ポーチになっている
木製ルーバーにより、外と内の中間的な落ち着きある玄関ポーチになっている
玄関に入ると明るい光が射し込む中庭が来客を出迎える
玄関に入ると明るい光が射し込む中庭が来客を出迎える

室内に入ると、建物の中心に添えられた中庭が来客者を出迎え、大開口の木製断熱サッシにより庭との一体感を感じられる気持ちのいいリビング・ダイニングにつながります。浴室にも坪庭を設け、室内のどこにいても庭の木々を眺められるようにしました。

庭とテラスに向かって大きく広がる開放的なリビング・ダイニング
庭とテラスに向かって大きく広がる開放的なリビング・ダイニング
書斎や趣味室を兼ねた広めの寝室からもテラスへ出ることができる
書斎や趣味室を兼ねた広めの寝室からもテラスへ出ることができる
LDKと寝室の間に位置する和室からは、地窓越しに中庭の風景を楽しめる
LDKと寝室の間に位置する和室からは、地窓越しに中庭の風景を楽しめる

高い断熱性能とパネルヒーターによる放射暖房により、どんなに寒い冬でも質の高い、包まれたような暖かさを感じられ、夏は木製サッシの換気窓で風を取り入れ、自然のゆらぎを感じながら心地よく過ごすことができます。エアコンを使用する猛暑が続く時期も、建物の気密性が高いため湿度コントロールがより容易です。一年中、庭の木々を楽しみながら、快適な住環境の中で過ごせる心地よい住まいとなりました。

浴室は、坪庭の植栽を楽しみながらお風呂に入ることができる
浴室は、坪庭の植栽を楽しみながらお風呂に入ることができる
庭に広がる大きなテラス。深い庇が夏の暑い陽射しを遮る
庭に広がる大きなテラス。深い庇が夏の暑い陽射しを遮る
木々を映し出す照明により美しい夜景が生まれる
木々を映し出す照明により美しい夜景が生まれる

■建築DATA
宮城県仙台市・Oさん宅
家族構成/夫婦60代
構造規模/木造・平屋建て
延床面積/199.57㎡(約60坪)

設計/(株)菊池佳晴建築設計事務所 菊池 佳晴 遠藤 和郎(元所員)
施工/(同)negla設計室
植栽工事/Natures Rock Kawamura Garden 川村 博崇

撮影/西川 公朗