「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2024」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、福島県二本松市を拠点に注文住宅を手がける斉藤工匠店の斉藤守平さんです。
堅牢な木組みで住み継ぐ
住宅ストック型社会で空き家率が増え続ける昨今。新築需要が減少し、今あるものの利用価値が見直されてきています。そのために重要なのが、既存建物の構造品質です。リノベーションは、骨組みさえしっかりしていれば、割と自由にできるものです。
「タクミノイエリノベ2」は、築45年ながら健全な構造体で残っていたため、再利用の価値が高く、空き家・実家問題に一石を投じることができました。木組みの堅牢な構造体は高温多湿な日本の気候に適しており、既存建物のポテンシャルが生かせれば、まだまだ利用できる建物はあるのです。
新築の場合も、大工目線で木組みの仕口や梁のかけ方をじっくり考え、将来にわたり安定した品質が確保できるよう心がけます。金物だけに頼らない木組みで造る建物は長期利用ができ、環境負荷低減につながります。新築であれ、リノベであれ、携わった建物が次世代の建築の礎となり循環していくことに、大きな意義があると考えています。
実家の潜在能力を生かした
2階部分のリノベーション
口太山の袂にある小さな集落にUターンした私は、将来のことを考え、入母屋造りに化粧垂木の純和風住宅の実家をリノベーションすることにしました。7年前に親が1階の水まわりと外装を改修していたので、今回は子世帯の居場所である2階の内部のみに手を入れました。
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南面の開口は大きくて光が気持ちいい反面、耐震上は不利なために構造補強として窓の内側に井桁格子状の壁を設置。この格子壁は連続的に景色を切り取り、時間の経過とともに変化する陰影が空間を豊かに彩ります。また、川が近い立地で湿気がちだったこともあり、内装は調湿効果の高い塗り壁仕上げに。通風・採光計画も見直しました。
メイン空間は、大好きなコーヒーを愉しむためのカフェをイメージして設計。窓辺にはロフトへの段差調整も兼ねた縁側ベンチを設け、その延長線上には既存の柱を活かしたソファを造作。コンパクトさを逆手に取って積極的に段差をつくることで、視覚的なリズムをつくり、さまざまな居場所を確保しました。
ある程度解体しないと不具合が見えてこないなど、リノベならではの大変さはありましたが、出来上がりの満足度は高く、既存建物をうまく活かして設計できたと自負しています。結果として相続や空き家問題といった将来の負担を軽減でき、心身とも穏やかに健やかに暮らしていけそうです。
■建築DATA
福島県二本松市・斉藤さん宅
家族構成/夫婦40代、子ども1人、父
構造規模/戸建て(築45年)
リノベーション面積/69.56㎡(約21坪)
設計/齊藤工匠 斉藤 守平
施工/(有)斉藤工匠店