中庭を中心に設計した自然光に満ちた住まい

公開日:2026.1.22 最終更新日時:2026.1.22

Replanが取材した、北海道・東北の素敵な住まいづくりの話をご紹介します。
(株)HAUS / 盛岡市・Oさん宅 夫婦40代、子ども3人


希望の地域だが日射取得に課題
解決策として「中庭」に着目

お子さんの小学校進学を機に新築を考え始めたOさん。まず土地探しでは、盛岡市中心部であり、正方形に近い形状を望んでいました。しかしもとが町家街の市内中心部では、間口が約7m、奥行き約20mの南北に長い土地しか見つかりませんでした。

木質感にあふれた玄関。写真左側の壁は、ジョリパットの塗り壁仕様。凹凸のある壁面をウォールライトのやわらかい光が照らし、味わい深い雰囲気を醸す。リブ状に加工したナラ材の開き戸が目を引く造作の収納棚が廊下沿いに続く
木質感にあふれた玄関。写真左側の壁は、ジョリパットの塗り壁仕様。凹凸のある壁面をウォールライトのやわらかい光が照らし、味わい深い雰囲気を醸す。リブ状に加工したナラ材の開き戸が目を引く造作の収納棚が廊下沿いに続く
玄関からダイニング・キッチンへと続く廊下。廊下は進むにつれて徐々に幅が広くなり、帰宅した家族を温かく迎え入れる
玄関からダイニング・キッチンへと続く廊下。廊下は進むにつれて徐々に幅が広くなり、帰宅した家族を温かく迎え入れる
ダイニング・キッチンは19.5帖。上品でなめらかな白い壁は全面が白洲漆喰仕上げ。白洲漆喰とは南九州産の火山灰「シラス」と伝統的な漆喰を混ぜ合わせた塗り壁材で、優れた調湿・消臭・空気清浄効果を持つ
ダイニング・キッチンは19.5帖。上品でなめらかな白い壁は全面が白洲漆喰仕上げ。白洲漆喰とは南九州産の火山灰「シラス」と伝統的な漆喰を混ぜ合わせた塗り壁材で、優れた調湿・消臭・空気清浄効果を持つ

「細長い形状に加え、準防火地域であること、南側に9階建てのマンションがあることは日射を取得する上で大きな課題でした」。さらに、準防火地域では隣地境界に建物を建てる場合、延焼ラインにかかる窓には防火窓の使用が義務付けられていますが、防火窓は最大幅に限りがあるため日射取得に影響を与えてしまうという点もOさんを悩ませました。

L字型キッチンには、広いアイランドの作業台を備えた。床はモールテックス仕上げ。リブ状に加工した北海道産ナラ材を開き戸に使った造作の隠せる収納は、収納力とデザイン性を兼ねそなえる。作業台にも収納が隠されている
L字型キッチンには、広いアイランドの作業台を備えた。床はモールテックス仕上げ。リブ状に加工した北海道産ナラ材を開き戸に使った造作の隠せる収納は、収納力とデザイン性を兼ねそなえる。作業台にも収納が隠されている
洗面室は奥さんのメイクルームも兼ねる。さり気ないけれど大容量の収納棚が設置されているため、物が多くなりがちな洗面室もスッキリ。床には水に強いタイルを使用した
洗面室は奥さんのメイクルームも兼ねる。さり気ないけれど大容量の収納棚が設置されているため、物が多くなりがちな洗面室もスッキリ。床には水に強いタイルを使用した
浴室とユーティリティ。洗濯物の予洗いができるように洗面ボウルよりも深めのスロップシンクを設置した。反対側にはドライルームがある
浴室とユーティリティ。洗濯物の予洗いができるように洗面ボウルよりも深めのスロップシンクを設置した。反対側にはドライルームがある

周囲を探しても他に土地は見つからず、Oさんは設計でデメリットを補えないか思案します。その際、尊敬する建築家のフィリップ・ジョンソンが設計した「ロックフェラー・ゲスト・ハウス」を想起。この住宅は、マンションに挟まれた長方形の土地に建ちますが「中庭」から安定した採光を得ているのが特徴です。この手法で課題が解決できると考えたOさんは、ずっと悩んでいた土地の購入を決めました。

隣地との境に防火壁を設えた中庭は13帖。リビングやダイニング・キッチンから続くアウトリビングとして大人数でのBBQや、奥さんがガーデニングを楽しむ。壁の格子やウッドデッキには屋久島地杉を使用した。油分が多く、密度が高い木材で、雨や雪に強い
隣地との境に防火壁を設えた中庭は13帖。リビングやダイニング・キッチンから続くアウトリビングとして大人数でのBBQや、奥さんがガーデニングを楽しむ。壁の格子やウッドデッキには屋久島地杉を使用した。油分が多く、密度が高い木材で、雨や雪に強い

自然光を隅々まで導く間取りと
家具や中庭の植栽で心地よい空間

完成した新居は中庭を中心に、南側の1階には玄関、暖炉のある吹き抜けリビング、2階に奥さんのワークスペース兼趣味室、北側の1階にダイニング・キッチンと洗面室、ユーティリティなどの水まわり、2階に寝室と子ども部屋などのプライベートスペースが配置されています。

天井高約4.4mの吹き抜けが広がる12.5帖のリビング。暖炉のある壁は樹脂モルタルで仕上げて、石づくりのような印象になっている。幅3m、高さ約4mの大きな開口部は北側を向いているので、直射光が入らずやわらかい採光が確保できる
天井高約4.4mの吹き抜けが広がる12.5帖のリビング。暖炉のある壁は樹脂モルタルで仕上げて、石づくりのような印象になっている。幅3m、高さ約4mの大きな開口部は北側を向いているので、直射光が入らずやわらかい採光が確保できる
ダイニング・キッチンは19.5帖。上品でなめらかな白い壁は全面が白洲漆喰仕上げ。白洲漆喰とは南九州産の火山灰「シラス」と伝統的な漆喰を混ぜ合わせた塗り壁材で、優れた調湿・消臭・空気清浄効果を持つ
リビングの南側にも天井まで断続的に続く開口部を設計。晴れた日の午後は日射がしっかりと採り込める。道路に面する窓なので、外にルーバーを設置してプライバシーを確保している

13帖の広々とした中庭に面したリビングとダイニング・キッチンには、中庭の風景が楽しめ、室内に自然光をたっぷり採り入れてくれる大きな開口部を設置しました。防火窓ではなく、木製の高性能窓を設置するために中庭と隣家の間に不燃材を使った防火壁を設計。さらに中庭への日射が増えるように、南側の建物の高さを北側より約40cm低くして遮へい物を減らしました。中庭からの自然光を可能な限り室内の奥まで導くために、吹き抜けをつくり、間仕切りを最小限にするなど、間取りにも工夫をしています。

ソファーでリラックスしながら映画鑑賞をすることもあるため、天井は吸音効果のあるフェルト材貼り+格子天井で音が反響しないようにした。リビングは吹き抜けを通じて、2階にある奥さんのワークスペース兼趣味室とつながる
ソファーでリラックスしながら映画鑑賞をすることもあるため、天井は吸音効果のあるフェルト材貼り+格子天井で音が反響しないようにした。リビングは吹き抜けを通じて、2階にある奥さんのワークスペース兼趣味室とつながる
吹き抜けと面している奥さんのワークスペース兼趣味室は約11帖の広さ。収納ボードを間仕切りとして利用し、手前と窓際をさりげなくゾーニングした。天井高は2.2mと通常より20㎝ほど低くなっており、落ち着きのある雰囲気
吹き抜けと面している奥さんのワークスペース兼趣味室は約11帖の広さ。収納ボードを間仕切りとして利用し、手前と窓際をさりげなくゾーニングした。天井高は2.2mと通常より20㎝ほど低くなっており、落ち着きのある雰囲気

ほかにも、Oさんが心地よい暮らしに大切な要素と考える「家具」と「庭づくり」も反映。北海道産ナラ材をリブ状に加工した引き戸で統一した造作収納や、内装になじむ家具や照明でさり気なく彩られた空間は上品な雰囲気を醸します。屋久島地杉をウッドデッキや防火壁の格子に使用した中庭も、植栽を施し、ガーデニングを楽しめる余裕を残しています。中庭によって、光や風、風景などの「いいものはすべて外から」というOさんの理念を体現した住まいが完成しました。

プライベートゾーンの2階は、スロープ状の廊下を中心に、奥さんのワークスペース兼趣味室と家族それぞれの個室が分けられている。手すりには細いスチールパイプを使用して、中庭に面した窓からの自然光を遮らないように配慮
プライベートゾーンの2階は、スロープ状の廊下を中心に、奥さんのワークスペース兼趣味室と家族それぞれの個室が分けられている。手すりには細いスチールパイプを使用して、中庭に面した窓からの自然光を遮らないように配慮
2階にもトイレを設置し、手前にコンパクトな手洗い場を設けた。土台は水に強く、ひび割れが少ないという特徴があるモールテックス仕上げ
2階にもトイレを設置し、手前にコンパクトな手洗い場を設けた。土台は水に強く、ひび割れが少ないという特徴があるモールテックス仕上げ


旧居は岩手山の麓という立地もあり、冬になると息で布団が凍るほど室内が寒かったです。結露のために収納していた服にカビが生えることも悩みでした。新居に引っ越してそれらの問題が解消し、しかも妻の冷え性も改善しつつあります。冬はずっと冷たかった妻の指先が温かくなりました。

肌に触れるものは自然な素材にしたいと思い、県産木材を多く使用しています。コンパクトな家事動線と、ドライルームを併設したユーティリティは妻からも好評です。他にも絵が飾れる壁や吸音効果がある格子天井など、細かなところまで妥協せず、豊かで丁寧な暮らしが送れるように設計しました。(Oさん談)

会社情報
社名 株式会社 HAUS
URL https://www.haus-iwate.co.jp

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