さっぽろ大通デザイン・アートスクールイベントへ。この日の講演は東川町文化コーディネーターの織田憲嗣氏による「デザインってなんだろう」。

織田コレクションを活用した日本初のデザインミュージアム設立に向けて、東川町、北海道文化財団と協力したさまざまな取り組みを進めている氏が考える、デザインとアートの違いや、デザインミュージアムに展示されるべき「本物」の定義などについて講義が行われた。

定員30名の濃密な講義

まず、デザインとアートの概念的な違いについて、「客観←→主観」「機能性←→無用の用」「目的とメッセージある←→メッセージは見る側に委ねられる」というようなわかり易い対比で説いていく。デザインを仕事にしている人であれば、一度は言われたことがあるであろう「デザインはアートとは違う」という言葉の具体解がスッともたらされる様子がなんとも壮快だ。

また、デザインミュージアムに展示されるべき「本物」とはどんなものかについても、「物としての寿命が長いこと」などの条件をさらに「素材の寿命」「構造の寿命」「デザインの寿命」「機能性の寿命」「パッション(情熱)の寿命」というふうに、細分化して解説。「タイムレスなもの。流行に左右されないもの。」「製造から販売まで良好な環境で作られたもの。」など、現代のファスト文化を否定する文脈にも触れて語られた。

「みなさんのご家庭に必ずデザインがあります。アートについてはお持ちの方もお持ちでない方もあると思いますが、デザインは暮らしの中に根付いて存在するものなんです」語る口調は穏やかだが、その声には内からにじみ出る熱が込められている。デザインの持つ本質や価値を認めること、本物を持って長く使うという価値観を、なんとか日本に根付かせたいという想いが強く感じられる。

さらに、日本にモダンデザインの作品を収集・展示するデザインミュージアムがない理由として、欧米ではアートとデザインを区別せずに文化省が管轄しているのに対し、日本ではアートの管轄が文化庁でデザインの管轄が経済産業省であることを挙げる織田氏。「デザインに対する評価を価格や売上といった数字でしか行ってこなかった。そして、量産されることが前提のため、アートと比べて希少性という点において価値が低いとされてきてしまったんです」。

会場からは「具体的にどのようなミュージアムを想定しているのか」という質問が

氏らが進めているプロジェクトの具体的な構想としては、大きなデザインミュージアムを東川に置くということではなく、東川町にはその本部と小規模の展示室や収蔵庫を置き、全国の企業とコラボレーションした展示や、公営の美術館での巡回展など、さまざまなかたちで作品を出していくことを検討中とのこと。大手企業との取り組みも既にいくつか進行中だという。「『東川町に名品がある』『東川町に行けばオリジナルがある』という状態が大切なんです」と織田氏は語る。

さっぽろ大通デザイン・アートスクールは北海道文化財団と東川町、ギャラリー大通美術館の3者が連携協力し、文化について見つめ直す場を提供するもの。第一回目となったこの日以降も、定期的に講座を開き、「デザインをより身近に、暮らしをより深く。」のコンセプトを広める活動が予定されている。

◎公益財団法人北海道文化財団
http://haf.jp/
◎東川町文化レクリエーション課
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/
◎織田コレクション
http://odacollection.jp/

(文/Replan編集部)