写真提供:ホテリ・アアルト

雑誌やインターネット、モデルハウスにオープンハウス…。家づくりの情報収集にはさまざまな方法がありますが、住空間のデザインの魅力はそこに暮らしてこそ、感じ取ることができます。

その点で旅館やホテルなどの宿は、洗練された「住」を疑似体験できる絶好の場所。日本の北に位置し、自然が豊かでときに厳しい東北に北欧との共通項を見出し「暮らすように泊まる」をデザインした福島県のホテルに、心地よい空間のヒントを見つけました。

普遍的な美しさが生み出す、家のように心地よい空間

眺めのよい窓際に置かれたエッグチェア。天井の高い部屋に合わせた大振りなフロアスタンド、トロメオ・メガ・フロア。書斎コーナーにさりげなく添えられたシューメーカースツール。福島県のシンボルともいえる磐梯山の中腹、大小30余りの色あざやかな水をたたえる沼が点在する五色沼の近くに佇むホテリ・アアルトは、かつて企業の保養所だった築40年の建物をリノベーションしてつくられたホテルです。13ある客室のすべてが個性的で、住宅で使うようなデザイナーズ家具や照明がさりげなく設えられています。

ホテルのオーナーで建設業も営む宗像剛さんは、北欧のライフスタイルに影響を受けたといいます。「冬の長い北欧では屋内での快適な暮らしを大切にし、デザイン性の高い家具やファブリックなどを生み出してきました。ホテルも住宅も、居心地のよい空間が『暮らしの豊かさ』に繋がるのではないでしょうか」。

アールがかった高さのある屋根形状を生かして設計されたroom304。窓の外の景色が、まるで絵のように宿泊客を出迎える。赤色のエッグチェアと、高い天井の室内にぴったりのトロメオ・メガ・フロア(フロアスタンド)、壁のファブリックや鮮やかな色柄のベッドカバーが、空間のアクセントに
room205は団らんのための和室と休息のための寝室を、段差でゾーニング。間接照明を用いた壁面の演出方法も、住宅に生かせそうなアイデア
2本の柱がリノベーションの痕跡を物語るroom201。コンパクトな空間のなかに、必要な要素が無理なく配置されている

ホテルの周辺は、ハイキングやスキーなどのアウトドアを楽しむのに最適な環境。しかし宿泊客の多くは、チェックアウトまでの時間のほとんどを館内で過ごします。なぜなら屋内の居心地がいいから。地元の木を活かした端正な空間は、北欧と和のテイストが調和したようなデザイン。設計者である建築家の益子義弘さんは「このホテルの場の印象や、体感した余韻をずっと覚えていてほしい」、そんな思いを込めたと話します。

北欧と和が調和したような室内空間が、心地よいくつろぎの時間をもたらす

くつろぎの場としての存在感を引き立てる仕掛けのひとつが「ピクチャーウィンドウ」です。ロビーや客室の窓は、周囲に広がる裏磐梯の豊かな風景を切り取り、屋内に居ながら自然と一体になったかのような感覚を得ることができます。空間にいくつも散りばめられた上質で密度の濃いディテールが、ホテルという非日常空間の中に、家のような日常性を紡ぎ出す。だからこそ宿泊客は、まるでそこに暮らしているかのようなくつろぎの時間を感じられるのでしょう。

ピクチャーウィンドウが、周囲の自然を美しく切り取って見せる

心地よい住空間のデザインとは、奇をてらったものではなく、土地の特性や気候風土を読んで普遍的な美しさを表現したもの。何をするでもない休日を過ごすために、遠方から訪れるリピーターも多いこのホテルには、心地よい家づくりに通じる空間デザインが体現されています。

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Idea.1 素材

無垢の床材や細やかな造作、ミニキッチンにあしらわれたタイルなど、家づくりにも取り入れたい素材のアイデアが光ります。自然素材の経年変化や質感の魅力を体感できるのも、このホテルならでは。

Idea.2 インテリア

スワンチェアやシューメーカースツールなどそれぞれの部屋で、惜しみなく上質なインテリアや家具が使われています。チェアやスツールであればその座り心地やサイズ感を、照明であれば灯りの雰囲気やインテリア性を、あたかも家のような空間で感じられるので、店頭で見る以上に使った実感を得られます。

Idea.3 ラウンジ&レストラン

広々としたラウンジは、ラウンジチェアやソファが置かれたおもてなしの空間。横長の窓は、外の風景を上手に切り取って見せる設計がなされていて、カウンター越しにゆったりと季節の移ろいを楽しめます。北欧のインテリアがやさしい雰囲気のレストラン「たごころ食堂」では、会津伝統野菜をつかったお料理に舌鼓。

 

HOTELLI aalto

所在地:福島県耶麻郡北塩原村大字桧原大府平1073-153
URL:https://hotelliaalto.com/