いごこちの科学 NEXT ハウス

さらなる省エネ・省CO2が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。 本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、それまでの連載の発展形「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から 寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授 前 真之 (まえ・まさゆき)東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)


この連載でも何度か取り上げてきたゼロエネルギー住宅(通称ZEH)が、いよいよ本格的に普及しそうな状況になってきました。今回は前半に2018年度のZEHについて、いくつかの新路線を中心に整理します。後半は、ミスターZEHことエコワークス(株)の小山貴史さんに登場いただき、ZEHの最前線をたっぷり語っていただきました。それではゼロエネルギーの最前線を見ていくことにしましょう。
(注:『Replan北海道vol.121』掲載(2018年6月)時点の内容となっています。)

ZEHファミリー 急拡大

住宅において、断熱を強化・高効率設備の導入・太陽光発電による創エネの3つを組み合わせ、ゼロエネルギーを達成するゼロエネルギー住宅 通称ZEHは、2012(平成24)年度から始まった国の補助政策に後押しされて、広がりを見せてきています。

図1に示すように、2016(平成28)年度には、新築戸建住宅の約10%がZEHになり、その一方で、2020年度には新築戸建の半数以上をZEHとすることが目標とされ、更なる普及が課題になっています。

図1 新築戸建住宅に占めるZEHの割合 平成28年度実績
ZEHはすでに新築戸建ての約1割を占めるところまで普及が進んでいます。
出典:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業 調査発表会2017

2018年度は図2のように、新たに「ZEH Oriented」と「ZEH+」が追加されました。前者は都市部狭小地向け、後者は再生可能エネルギーのさらなる普及を目指したものです。外皮性能や1次エネ削減率の仕様にも違いがありますが、やはり太陽光発電の扱いが最大のポイントです。

図2 2018年度に新たに加わった「ZEH Oriented」と「ZEH+」、既存の「ZEH」と「Nearly ZEH」との違い

太陽光を載せない・志向型狭小地限定のZEH Oriented

ZEH Orientedは、通常のZEHと同じレベルの断熱性能と1次エネルギー削減を達成していれば、都市部狭小地に限定して、太陽光発電を載せずにZEHファミリーと認められるちょっと特殊なタイプです。「北側斜線制限の対象となる用途地域であって敷地面積が85㎡未満である都市部狭小地に建設される平屋建以外の戸建住宅」に限られます。

アメリカなどでは、省エネを徹底した上で太陽光発電を後付けできる屋根を確保しておく「ZEH Ready」という定義があり、それにならったものと思われます。Readyは「準備OK」、Orientedで「志向」だから似てますよね。ただしZEH Orientedは都市部狭小地に限定されたものであり、太陽光発電を効果的に設置するのが難しい場合に特別に配慮した例外的な扱いと考えるべきでしょう。

Nearly ZEHは寒冷地向けの配慮? 太陽光発電は必須のまま

太陽光発電については、以前から多雪地帯では効果が限定的との意見がありました。今回の助成制度では、寒冷地に限定して、太陽光発電を通常のZEHよりコンパクトにしたNearly ZEHでも補助金がもらえます。

Nearly ZEHで補助金がもらえるのは、図3に示す「寒冷地(地域区分1/2) 、低日射地域 (日射区分A1/A2)または多雪地域(垂直積量100㎝以上)」に限られます。

図3 Nearly ZEHで補助金対象となる地域
Nearly ZEHでは、暖房負荷・エネルギー消費が多い寒冷地やPVの発電量が限られる多雪地帯への配慮として、家電以外1次エネ消費の75%をカバーできる太陽光発電の容量でよいとされています。
出典:パナソニックHP(垂直積雪量)

Nearly ZEHは家電以外の消費エネルギーの75%以上を太陽光発電でカバーすればよいので、100%以上が必要な通常のZEHに比べれば太陽光発電のサイズを小さくできます(図2)。

ただ、多雪地帯では屋根に太陽光発電を載せることの懸念を指摘する声も聞かれます。太陽光発電を載せないZEH Orientedは都市部狭小地限定ですが、今後は寒冷地へ適応拡大も検討されるかもしれません。

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