さらなる再エネ活用へ、ZEH+(プラス)の登場

今回のZEH最大トピックは、やはりZEH+でしょう。従来のZEHは昼間に発電して系統へ売電し、夜は系統から買電していましたが、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーが急速に普及する中で、地域によっては電源の不安定化などの問題が懸念され始めました(図4)。「更なる省エネルギーの実現」のため、こうした系統への売り買いの依存を減らすために「売電のみを前提とせず、自家消費を意識した再生可能エネルギーの促進に係る措置」が施されたのが、ZEH+なのです。

図4 ZEH+(プラス)が必要なわけ
再生可能エネルギーのさらなる普及のために、系統への負担低減が課題になっています。ZEH+では太陽光発電の電気を、建物内の暖冷房・給湯やEV充電に用いることで、系統への売電量を低減することが期待されています。

ZEH+では図2に示すように1次エネルギー削減量を25%以上に増やすだけでなく、「①外皮断熱の更なる強化」とともに、太陽光発電の自家消費を増やすため、「②高度エネルギーマネージメントの導入」「③電気自動車(EV)充電用コンセントの設置」の3つの措置が求められています。この3つのうち、2つは必ず導入しなければなりません。

①の外皮強化について、図5に熱の逃げやすさを示す平均熱貫流率UA値で整理しておきました。ZEH+では外皮強化型が推奨されており、高い断熱水準とされるHEAT20 G2とだいたい同じレベルにまで達しています。従来ZEHは設備偏重であると批判されていましたが、外皮性能も改善されて健康・快適の視点からも高いレベルに達することが期待されます。

図5 ZEH+の外皮強化
ZEH+では通常のZEH外皮より断熱が強化された外皮が推奨され、おおむねHEAT20のG2レベルに達しています。単なるゼロエネルギーというだけでなく、快適・健康の面でも改善が進んでいるのです。
※数値はUA値の基準値

補助金についても、ZEH+は優遇されています。通常のZEHでは70万円ですが、ZEH+では115万円に増額されます。今年度はZEH+に注目ですね。

エコハウスの究極進化型 LCCM住宅

ZEH+はゼロエネルギーの新しい進化系ですが、国土交通省ではさらにこの上の「ライフサイクルカーボンマイナス」LCCM住宅を目指しています。これは建設時の環境負荷も考慮しながら、大容量の太陽光発電を採用することで、運用しているうちに建設時も含めたCO2排出量をマイナスにします。「家を建てるほどに地球環境がよくなる」という非常に野心的な住宅です。こちらも今後普及が進みそうですので、ZEH+と同様、今後連載でも取り上げたいと思います。

今回取り上げたように、省エネルギー住宅の展開は本格化します。後半の小山さんのインタビューも併せて、住宅の未来を考えてみてくださいね。

※LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅:長期にわたって健康・安全かつ省エネルギーな住宅であるために、LCCO2がマイナスとなることを目指す住宅のこと。LCCO2は「ライフサイクルCO2」の略。建築で発生する二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するため、建物の寿命1年あたりのCO2排出量を算出して評価する手法

次のページ ミスターZEH・小山氏に聞くZEH最前線