コロナ禍で「家」の在り方を見直し、家づくりを考え始めた方もいらっしゃるでしょう。会社選びや家づくりの方向性を決める情報収集のひとつとして有効なのが、実際の家を見ることです。住宅展示場のモデルハウスをはじめ、実物を見る機会はたくさんありますが、「情報量が多すぎて何をどう見て判断すればいいのかわからない!」という悩みも…。そこで今回は、インテリアコーディネーターの本間純子さんに、モデルハウスやオープンハウスの特徴と、見学で注目すべきポイントについてお話いただきます。


家づくりの参考として見学できる住宅は
大きく分けて3種類

家づくりにあたっては、参考のために見学できる住宅があります。大きく分けて以下の3種類がありますが、それぞれ建てられた目的や住宅としての特徴が異なりますので、それを知ったうえで見学することが大切です。

1. 住宅展示場のモデルハウス

家づくりを考え始めた多くの方がまず足を運ぶのが、たくさんのモデルハウスが建ち並ぶ「住宅展示場」。さまざまなハウスメーカーや住宅会社が手がけるモデルハウスをまとめて見れるという良さがあります。

住宅展示場のモデルハウスは、実際に「住む」ためというよりも、メーカー各社の家づくりのコンセプトを体現した存在で、さまざまな建材や設備を「見せる」ためにつくられているという側面が強いです。一度に何組ものお客様が訪れることを想定した特別仕様の間取りということもあり、足を運んだ方の中には、「家のサイズが大きくてイメージがつかみにくかった」という声も。また「展示場に建つ家の棟数が多くて目移りしてしまう」といった感想も聞かれますが、家づくりの際の導入として自分たちの好みを把握したり、今の住宅の傾向を感じたりできる場所といえるでしょう。

2. 分譲地モデルハウス

地域のハウスビルダーや工務店のなかには、一定期間後に土地・建物を販売することを想定したモデルハウスを建てて一般に公開している会社があります。これらは「オープンハウス」と称して公開されているケースもあります。

現実的なサイズ感の家が多くて、建築会社の仕様の特徴がよく表れています。また家具が置かれていたり、照明器具やウィンドウトリートメントが付いていたりと空間がつくり込まれていることも多いので、実際の暮らしのイメージがつきやすいかもしれません。自分自身の暮らし方に合うかどうかをチェックしながら、住むことをイメージして見学すると良いでしょう。

建築会社の特徴を強く打ち出したコンセプトモデルハウスの例。宿泊体験ができることも
建築会社の特徴を強く打ち出したコンセプトモデルハウスの例。宿泊体験ができることも
建築会社によってインテリアのテイストやプランニングの特徴はさまざま

3.オープンハウス(完成住宅見学会)

オープンハウスには「新築住宅やリノベーション住宅を施主の了解を得て一般公開する場合」や「建売住宅をオープンハウスとして公開する場合」などがあります。注文住宅を請け負う地域の工務店やハウスビルダー、また建築家や設計事務所が開催するオープンハウスのほとんどは、お施主さんの了承のもと、お引き渡し前に期間限定で公開されます。

注文住宅の場合は住まい手の要望やライフスタイルに合わせて設計されていますので、可能な範囲で、お施主さんの家族構成や年代、どんな要望がどのように住宅に反映されているのかを聞いて見学すると、その家や住宅を手がけた設計・施工会社の特徴が理解しやすいと思います。

引き渡し前の住宅が会場になることが多い新築のオープンハウス
引き渡し前の住宅が会場になることが多い新築のオープンハウス

見学する際に大事なのは
「目的」を持って見ること

モデルハウスやオープンハウスに足を運ぶ際には「目的」を持っていくことが大事です。モデルハウスも個人の住宅も、コンセプトに沿った機能や設備がデザインされています。間取りや素材、設備機器など住宅には情報がいっぱいです。住宅展示場では特に、何棟もの建物を見比べることになるので、なんとなく見学するとすぐに満腹状態になってしまいます。そこでまずは、以下の3つの目的を意識して見学すると、住みたい家のイメージがつかみやすくなります。

①「今」の住まいの傾向を体感する  
世の中の暮らし方に合わせて、住宅も少しずつ変化しています。古い家に住んでいる方にとっては、間取りも設備も劇的に変わっている部分が多いはず。いくつかの家を見比べて今の住まいの傾向を自分なりに感じ取り、「自分たちが暮らすなら」とイメージを広げる足がかりにしましょう。

②インテリアの好みを見つける・確認する 
楽しいアイデアやおしゃれな空間から、自分たちの好みのテイストを探す。これはもっとも楽しい見学方法かもしれません。「色彩」「素材」「インテリアスタイル」等に注目すると好きなもの、惹かれるものの傾向がはっきりします。

白タイルとダークグレー目地

③住宅会社の特徴を知る  
住宅会社にも個性があります。構造や工法が特徴的だったり、素材やデザインにこだわりがあったり…。各社それぞれに力を入れているところがありますので、家づくりの「イチ押しポイント」を尋ねてみましょう。またメンテナンスも含めて住宅会社とは長いお付き合いになりますから、相談のしやすさも大切ですね。

見学先で「見るべきポイント」は?

広さや仕様、間取りに設備と、見学先の住宅によって条件はまちまち。多種多様な住宅を見学するうえで大事なのは、「見るべきポイント」を押さえることです。モデルハウスやオープンハウスの見学の際には、使われている素材や設備のほか、特に次のポイントを意識的に体感しておくと、プランニングの良い参考になります。

家事動線のパターン

「食事をする」「服を着る」「体を休める」は私たちの生活の基本で、 家事はその準備とメンテナンスのために欠かせません。家づくりでよく聞く「家事動線」とは、家事に関わる動作の軌跡のこと。家事がスムーズにできるか否かは、住みやすさに直結します。特にキッチンや洗濯スペースは他の空間と行き来しやすいことが重要で、生活の中心となる空間をぐるりとひと回りできる「回遊動線」の間取りが人気です。

玄関→キッチン→LDK→玄関の回遊動線

注文住宅の間取りは、土地条件などによって異なるので、モデルハウスやオープンハウスに行った際には、

・買った食材を冷蔵庫に入れる→食事を作る→配膳する
・脱いだ衣類をまとめておく→洗濯機に入れる→洗濯物を干す→収納する
・帰宅する→コートや上着を吊るす→手洗いする→LDKへ入る

などの日常の動き方をイメージしながら間取りを見ると、 どんな動線が自分に合っているかどうかが実感できるでしょう。

部屋の広さ感・棚などの仕様や寸法

一般的に、同じ床面積の場合、天井が高いほうが空間は広く感じます。内装仕上げ材の色合いによっても、広さの感じ方は変わりますし、建具の位置、窓や収納扉の大きさや高さによっても、空間の印象が違います。この差を実際に体感できるのも、実際の家を見学するメリットです。

リビングの大きな開口部にはトリプルガラスの樹脂サッシを採用。Sさん自らも勉強して、住宅性能については予算の範囲で最大限のスペックを希望した。冬も暖かいリビング・ダイニングが実現した

見学の際には、スケール(巻尺)を持参するのがおすすめ。空間全体のサイズ感や印象に加え、収納スペースの棚の寸法や、キッチン、造作カウンターの高さや奥行きなどを計測しておくと、自分たちにとって使いやすい仕様や寸法の検討材料になるでしょう。つくり込まれたモデルハウスの場合は、家具レイアウトも参考になります。家具の配置方法にも注目したいところです。

収納のレイアウト方法

一昔前までは各部屋に押入れやクローゼットを設けるのが普通でしたが、今の家づくりでは、収納についての考え方も変わってきています。「使いやすさ」と「片付けやすさ」の原則は、「使う場所に物の居場所をつくること」。

下駄箱があるのが一般的だった玄関の収納は、今は広いシューズクロークやコート用のクローゼットを設けたり、洗面・脱衣室には下着やタオル用の収納棚、場合によっては家族全員分の衣類が収納できるウォークインクローゼットを併設したりと、家族の生活動線を考慮した収納計画をとり入れた家が増えています。

玄関横にシューズクローク
キッチンと洗面脱衣室の間にウォークインクローゼット

モデルハウスやオープンハウスは、収納の新しいアイデアに出会える絶好の機会でもありますので、お知恵拝借の気持ちで出向いてみましょう。

建築途中の現場見学会にはぜひ参加を

住宅会社によっては、建築途中の現場も公開しています。住宅の構造は、壁で覆われてしまうとなかなか見れないので、 積極的に参加することをおすすめします。金物の使い方や木組みの手法を見せるのは住宅会社の自信の表れでもありますし、施主の側としては安心の物差しにもなります。住宅会社から現場見学会の案内が届いたら、遠慮せずに足を運びましょう。

構造を見て家のつくりを確認しておくことも、先々の安心感につながる

書籍や雑誌、インターネットから多くの情報を得られる時代ですが、モデルハウスやオープンハウスに足を運ぶとイメージ以上に発見が多いものです。住宅は大きな買い物です。良い会社と出会うためにも、じっくり検討して見極めて、納得した住まいづくりを楽しんでくださいね。