「モノづくりが大好きで、子どもの頃から建築家に憧れていた」という、Einbuild(アインビルド)の嶋代表。十勝の建築工事を手がける会社で実務経験を重ね、住まう人が想像するこれからの暮らしをカタチにできる家づくりを目指して2018年に独立しました。ドイツ語で「想像」を意味する「Einbildung」と、英語の「Build」。この2つの言葉を融合させた「Einbuild(アインビルド)」と名付けた会社を設立。そして2022年2月、事務所を併設した自邸を完成させました。

アスファルトシングルとオビスギが、外観のシャープなフォルムを個性的に彩る。北側の手前は玄関を別途設けた事務所
アスファルトシングルとオビスギが、外観のシャープなフォルムを個性的に彩る。北側の手前は玄関を別途設けた事務所
雨が当たる南側の外部仕上げには、劣化具合や修繕方法が明確なガルバリウム鋼板を採用。南北の道路へ通り抜けできるアプローチも設けた
雨が当たる南側の外部仕上げには、劣化具合や修繕方法が明確なガルバリウム鋼板を採用。南北の道路へ通り抜けできるアプローチも設けた
通り抜け通路の真ん中付近に設けられた自宅玄関。雨や雪に当たることなく車から室内へ移動できる。右手の通路に面して物置が設置されている
通り抜け通路の真ん中付近に設けられた自宅玄関。雨や雪に当たることなく車から室内へ移動できる。右手の通路に面して物置が設置されている

設計は嶋代表の原案をもとに、札幌の建築事務所「メグロ・アーキ・スタジオ」が図面を仕上げ、自社で施工を手がけました。土地の気候風土に適した構造や性能、流行にとらわれないデザイン、そして、暮らすほどに味わいを深めていく自然素材、メンテナンス性。嶋代表はその一つひとつを大切に、目黒さんとプランを練ったといいます。「住まいは各分野の専門家がアイデアを出し合いながら一緒につくり上げるもの。独立前から思い描いてきた理想の住まいづくりが、ようやく実現できました。これからも、建築家と協働した家づくりに取り組みたいと思っています」と、笑顔で話します。

土間続きに、大容量のシューズクロークを設置した玄関。正面突き当たりは、子ども部屋
土間続きに、大容量のシューズクロークを設置した玄関。正面突き当たりは、子ども部屋
玄関ホールに近接してトイレ、洗面台、ユーティリティを集約。洗面台はタイルをアクセントに用いた造作
玄関ホールに近接してトイレ、洗面台、ユーティリティを集約。洗面台はタイルをアクセントに用いた造作

将来、必要に応じて2室に分けられるように仕上げた子ども部屋。階段下を利用し、遊び心たっぷりの収納スペースも設けた
将来、必要に応じて2室に分けられるように仕上げた子ども部屋。階段下を利用し、遊び心たっぷりの収納スペースも設けた
LDKのある2階へつながる階段はシナベニアを採用。間接照明とガラスタイルを用いた子ども部屋の間仕切り壁は、玄関ホールを華やかに彩る
LDKのある2階へつながる階段はシナベニアを採用。間接照明とガラスタイルを用いた子ども部屋の間仕切り壁は、玄関ホールを華やかに彩る

北に事務所、南に自宅をレイアウトした職住一体の空間はそれぞれに玄関を設けながら、内部で緩やかにつながっています。嶋代表は、家族の暮らしやすさにも配慮。住宅街に面する南側に位置する自宅のLDKは、陽当たりとプライバシーを確保するため、2階にレイアウト。カーテンレスでのびやかに過ごせるくつろぎスペースを実現しました。また、ピットリビングは、ソファ無しでくつろげるようタイルカーペットを敷き詰めました。

床高を下げることで、明るくのびやかなくつろぎ空間を実現したピットリビング。床には、子どもが汚してもメンテナンスがしやすいタイルカーペットを採用した
床高を下げることで、明るくのびやかなくつろぎ空間を実現したピットリビング。床には、子どもが汚してもメンテナンスがしやすいタイルカーペットを採用した
リビングに近接して、暖かな時期にアウトドアリビングとして活用できるバルコニーを設置
リビングに近接して、暖かな時期にアウトドアリビングとして活用できるバルコニーを設置
セピア色のアクセントウォールと高天井が印象的な2階寝室の南側には、洗濯物をたっぷり干せる乾燥室を配置。手前のシナベニアの造作ボックスは後日、ハンガーパイプを取り付け、可動式クローゼットに仕上げる予定
セピア色のアクセントウォールと高天井が印象的な2階寝室の南側には、洗濯物をたっぷり干せる乾燥室を配置。手前のシナベニアの造作ボックスは後日、ハンガーパイプを取り付け、可動式クローゼットに仕上げる予定
キッチンと同じ床高でつながるダイニングスペース。外光だけを採り込む窓、抑えた天井高が落ち着いた雰囲気をつくりだす
キッチンと同じ床高でつながるダイニングスペース。外光だけを採り込む窓、抑えた天井高が落ち着いた雰囲気をつくりだす

内装や造作には「これから家づくりを始める人に、無垢材を生かした空間を実際に見て触れてもらい、その良さを体験してほしい」と、シナ合板、床には道産ナラ材、パイン材などを採用。そして「以前からメンテナンス性や経年変化が気になっていた」という自然塗料・プラネットカラーで仕上げました。個性的な雰囲気を演出している外壁のアスファルトシングルとオビスギも、雨や雪による劣化や最善の補修法を検討するため、実験的に採用したものだといいます。

事務所と自宅は、引き戸で分離。自宅に最も近接した場所には、嶋代表の作業スペースとなる書斎が設けられている
事務所と自宅は、引き戸で分離。自宅に最も近接した場所には、嶋代表の作業スペースとなる書斎が設けられている
大きな吹き抜けを設けた事務所には、自宅との中間領域的な中2階を設置。床や天井の高さを変えることで、公私の空間を緩やかに分離
大きな吹き抜けを設けた事務所には、自宅との中間領域的な中2階を設置。床や天井の高さを変えることで、公私の空間を緩やかに分離
事務所の玄関からそのままつながる打ち合わせスペース。北側の雑木林を望むトリプルガラスの大開口と吹き抜けが心地よい開放感を演出
事務所の玄関からそのままつながる打ち合わせスペース。北側の雑木林を望むトリプルガラスの大開口と吹き抜けが心地よい開放感を演出

「これまではできなかった冒険、試してみたかったことを建物の内外に散りばめました。この建物を通して、家づくりはつくる工程も面白く楽しいことと、家づくりを始める人に感じてもらえたら幸せです。たくさんの人に観ていただきたいと思っています」と、嶋代表は力強く語ってくれました。