平屋の家

図-1は、30坪くらいの小住宅によくあるパターンの外皮表面積を計算したものです。どのかたちが美しいかではなく、単純に数学的に住宅の床・壁・天井の面積を計算して延床面積で割った数値を算出しています。

図-1 小住宅によくあるパターンとその外皮表面積
図-1 小住宅によくあるパターンとその外皮表面積

①から順に、総2階建てから一部2階建て、平屋建てへと徐々に変化させます。2階は1階のどの場所にどのような向きに載ったとしても同じことになります。A〜Cは、総2階建ての時の平面が正方形から徐々に細長い長方形になる3つのパターンで計算しています。最も床面積当たりの外皮表面積が小さいのが4間×4間(A)の総2階型(①)で、かたちが細長くなると次第に表面積が増えていきます。また一部2階建てでは、2階が小さくなるほど外皮表面積が増え、一番大きくなるのが平屋建てです。平屋建ては総2階建てに比べて25%以上も大きくなるのです。つまりは、外皮表面を構成する床・壁・天井、屋根、基礎の工事費が25%増えることになり、同時に熱損失も同じ割合で増えてしまいます。

もし図-1にあるようなかたちの住宅が建てられたとき、一番格好よく見えるのはおそらく平屋建ての住宅になると思います。次に総2階建ての住宅ですが、その場合はカーポート、アプローチ、外部物置、塀などの外構デザインを上手に組み合わせれば十分格好よく仕上げられると思います。平屋建てが格好よく見えるのは、水平線を強調できシャープなかたちに見えるからでしょう。住宅雑誌にこうした格好いい住宅がよく見られますが、施主の希望でこうした仕事を受けた建築家はラッキーですね。

どうして平屋建て住宅が好まれるか

終の棲家として住宅を建てるとき、やはり老後のことを考えると2階の寝室が気になります。若い人が建てるときもそうなのですが、長く暮らしてきた家を老後のために建て替えようとするなら、なおさらです。家族も多くはないし、コンパクトでいいから平屋の家を建てたいと思う人は少なくありません。

多くは土地が狭く、ある程度の大きさの家を建てたいために2階建てにするのですが、平屋建ての多くは比較的広い土地に建つことが多いようです。平屋建ての住宅は、工事費が高くなりがちで、省エネ性能は低くなるので断熱材を厚く設計する分が工事費に跳ね返ります。この覚悟で理想の平屋を手に入れることは、一つの夢の実現です。とても贅沢なことです。こうした家を手に入れられたなら、やはりきれいに暮らしたいと考えます。

しかしいざ暮らしてみると、コンパクトにつくっただけに収納が少なく、引っ越し前に大量にモノを捨てなくてはならなかったり、たまに子どもたちが孫を連れて泊まりに来るスペースが無かったりと、不便なケースもあるようです。遠い将来、住み手が死亡した後にこのような住宅を相続して売ろうとすると、土地が広い割には住宅が狭いため、値段が高く買い手が限られることになります。ですがこれから建てる住宅は十分に100年は持つ住宅です。そこで提案したいのが「中2階のある平屋住宅」です。

中2階のある平屋住宅

前述のようなことから、私だったら、中2階のある平屋建て住宅を建てたいなと思います。中2階は天井高が1.4m以下であれば階数や床面積にカウントされません。広い物置スペースとして、どうしても捨てられないが普段はほとんど使わないものを大量に収納できます。天井高が1.8mくらいあれば臨時の寝室としても使え、子どもたちが盆や正月に泊まりに来ることもできます。また足腰がしっかりしているうちは書斎などの予備室としても使えます。

図-2に中2階のある平屋住宅のパターンを示します。このような住宅はさらにもう少し工事費がかかることになりますが、全体をシンプルなかたちにまとめることで工事費アップは最小限に抑えられますし、暖房費もそれほど変わりません。夏には中2階に設けた窓から効率よく排熱でき、とても涼しい家になります。そして、ほどよい高さの吹き抜けが豊かな室内空間をつくってくれることでしょう。

図-2 中2階のある平屋住宅のパターン
図-2 中2階のある平屋住宅のパターン