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Q 築14年のコンクリート基礎のひび割れ

質問者/神奈川県・ベイ輔
記事No.16896/カテゴリ:構造・建材

先日、床下害虫駆除を専門業者に実施いただきました。作業は滞りなく完了し、床下のシロアリなどの発生も認められない報告を受け安堵しました。

しかしながら床下の「コンクリート基礎のひび割れ」を指摘されました。心配になり近隣の専門業者に調査確認を依頼した結果、外周基礎の内側の8割近い範囲で主に横方向のひび割れの発生と錆流出跡を確認いたしました。ひび割れは幅1㎜を超えていますが、建物外周部では確認されません。

当宅物件は2005年10月引き渡し(新築から14年目)。ベタ基礎です。この年月(14年目)によるコンクリート基礎のひび割れは、

・通常予測される自然劣化なのか?
・異常でイレギュラーな現象なのか?
・異常の場合、考えられる原因はなにか?責任はどこにあるのか?
・対策が必要なのか?
・施工業者との交渉におけるポイント

などが知りたいです。

A:回答者/一級建築士事務所(株)北工房 代表取締役 栃木 渡

いわゆるコールドジョイントという現象だと思います。施工時のコンクリート打設の時に、ヒビの入っている部分から下を先に打ち、その後ヒビより上の部分を打つタイミングが少々、遅かったのでしょうね。既に錆汁が出ていますので、多少は鉄筋が錆びているかもしれません。これ以上、錆が進行しないように、表面をモルタル補修すればよろしいかと思います。

施工時の不具合と言えば不具合ですし、責任は施工者にあるのですが、既に14年経過していますので、声高に責任追及しても、今更感はあります。端的に言えば、法的に責任を問うても、どうしようもないでしょうねぇ。

錆の進行程度がわかりませんが、神経質に気に病むような危険性は少ないと思いますよ。施工者さんに直してもらうのが一番ですが、おそらく10年以上経過しているので、無償で対応していただけるかどうか疑問です。

私のアドバイスとしては、施工者との交渉でストレスを溜めるよりは、自費で直してしまった方が手っ取り早いですよ、という感じでしょうか。「施工者、けしからん。こらしめてやる」というなら、それは別ですが…。

質問者より

栃木渡様、ご回答およびアドバイスありがとうございました。現象、原因、対策、責任元について、当方の認識がかなり明確になりました。

施工者を追求するつもりはありませんが、現象と原因の説明および納得できる対策提案などの誠意ある対応をしていただけるよう交渉はしたいと思います。なお、近隣の専門業者の提案はアラミドシートによる補強工事で、見積額が100万円弱とかなり高額でした。

a:回答者/T.Kumagai

詳細調査を行わないとはっきりしたことは言えませんが、建物が立った時から問題を抱えている可能性が高いです。建てた業者が責任をもって直すのが一般的ですが、直してくれるかは別問題になります。

>通常予測される自然劣化なのか?
通常予測される自然劣化ではないと考えられます。

>異常でイレギュラーな現象なのか?
経験上、イレギュラーな現象です。

>異常の場合、考えられる原因はなにか?責任はどこにあるのか?
原因は調査しないと特定できませんが、複数原因が絡んでいると考えらます。打設時の沈下ひび割れに近いような気もします。住宅基礎のような小規模コンクリートではかなり出にくく、あまり一般的ではありません。

>対策が必要なのか?
何かしら対策が必要ですが、ちょっと難しいです。

>施工業者との交渉におけるポイント
即対応というのは難しいと思うので、期間を決めて交渉してください。「何月何日までに返事をもらう」と、期間を区切るのがストレスが少なく相手にプレッシャーになります。

以下、個人的なアドバイスです。施工会社と交渉する前に事前準備が必要です。まずは住宅インスペクションを入れて現象を確定させます。第三者機関による検査・証明が何よりの証拠になるからです(もう終わっているかもしれませんが)。それを元に、施工会社と交渉になります。

質問者より

T.Kumagai様、ご回答、アドバイスありがとうございました。当方にとって各項目の明確な回答は極めて貴重で、疑念がかなり払拭されました。住宅インスペクションについてはぜひ実施検討したいと思います。


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