もう20年近く前になりますが、スウェーデンのハンス・エークさんの設計による無暖房住宅が日本に紹介されました。これについては本文で詳しく紹介しますが、省エネ基準7等級のような、私にとっては必要以上に高断熱化した仕様が始まろうとしている今、前回の狭小地でのパッシブソーラー住宅を、さらに高断熱化したら無暖房住宅は可能かという興味がわいてきました。現実的かどうかはともかく、可能性があるかどうか、検討してみたいと思います。

スウェーデンの無暖房住宅

2005年(平成17年)に、スウェーデンの無暖房住宅についての講演が札幌でありました。無暖房住宅とは、年間の暖房負荷がゼロの住宅をいいます。同じ年の秋、新住協でヨーロッパに見学旅行に出かけ、設計者のハンス・エークさんの案内で、現地を見学することができました。

ハンスさんは、日本各地で講演した後、愛知万博で、この無暖房住宅に関して地球環境賞を表彰され、日本から帰国したばかりとのことでした。賞金100万円で、家族とともに秋葉原でたくさん買い物をしたと言っていましたが、私たちを快く案内してくださいました。

住宅は、図1の写真のとおり長屋建てで、全部で4棟20戸の団地になっていました。長屋建ては、一戸あたりの外表面積が小さくなるため、断熱仕様は楽になります。

図1 スウェーデンの無暖房住宅(3戸長屋建て・北側外観)

それでも、図2のように外壁の断熱材は厚さ43㎝、屋根48㎝、床25㎝とかなりの厚さです。外壁の厚さは外装材なども含めると50㎝ぐらいになり、例えば前回分析した4×4間・総2階住宅では、1階と2階の外壁の延べ長さが60m近くになり、外壁の面積だけで30㎡近くにもなるわけで、大学の講義でこの住宅を学生に紹介し、この断熱の厚さでは、外壁の面積だけで学生マンションより広くなるという冗談を言ったものでした。

図2 スウェーデンの無暖房住宅(矩計図)
外壁 U値=0.10W/㎡K(断熱厚430㎜)
屋根 U値=0.08W/㎡K(断熱厚480㎜)
床  U値=0.09W/㎡K(断熱厚250㎜)
窓  U値=0.85W/㎡K
図2 スウェーデンの無暖房住宅(矩計図)
外壁 U値=0.10W/㎡K(断熱厚430㎜)
屋根 U値=0.08W/㎡K(断熱厚480㎜)
床  U値=0.09W/㎡K(断熱厚250㎜)
窓  U値=0.85W/㎡K

建設地のスウェーデン・イエテボリは、スウェーデン南部、西海岸のノルウェーのオスロとデンマークのコペンハーゲンのちょうど中間にあり、北欧としては比較的暖かいところで、ボルボの本社、工場があることで有名です。それでも無暖房にするには、長屋建てでこれだけの厚さが必要になることに、相当驚きました。図3に断面図を示しますが、冬の太陽高度は北海道よりもかなり低く、日照時間もかなり短いのですが、南面の窓は、ヨーロッパの住宅としてはかなり大きく取り、日射取得を重視していることが分かります。

図3 スウェーデンの無暖房住宅(断面図)

当時のQPEXで、札幌で無暖房住宅になる断熱仕様を試してみたところ、床・壁・天井を平均断熱厚40㎝ぐらいでできることが分かり、戸建て住宅でも、日本なら日射が多いせいかできるものだと感じたことを覚えています。しかし、今のQPEXはバージョンも上がり、日射について当時よりかなり厳しくなっているため、無暖房住宅は北海道などでは簡単ではありません。

その後、日本各地で無暖房住宅のモデル住宅が5、6棟建設されたと聞きました。しかし、パッシブハウスが日本にも建設され始め、超高性能住宅は無暖房ではないパッシブハウスの方に関心が向かいました。私たちも、無暖房より現実的なQ1.0住宅をできるだけたくさん日本に建てる努力をしてきました。工事費の高い超高性能住宅を建てるより、少し性能レベルは下がっても、工事費を安くして、大量に建設することの方が、日本全体の住宅の省エネには有効だと考えたのです。

パッシブソーラー手法で無暖房住宅を試す

しかし、省エネ基準7等級のような工事費がかなりかかる断熱仕様が国から打ち出され、私たちは当惑したのですが、そこまでやるなら日射を利用したパッシブソーラーデザインの手法で、無暖房住宅が現在のQPEXで可能なのか試してみたくなりました。太陽熱を大量に取り込むためには、南の窓をできるだけ大きくする必要があります。したがって、同じ面積の住宅でも東西に長いプランとする方がいいのですが、ここでは、あえて前回の狭小住宅で挑戦してみたいと思います。

前回の記事に紹介した4×4間・総2階の住宅で、南面の開口部は図4のように、左図のもとの設計に比べて右図のように大きくします。

図4 4間×4間プロトタイププランの南立面図(上:標準、下:南窓拡大)
前回の記事では、南面の窓を標準の10.4㎡から、15.9㎡と22.4㎡に拡大した2つのタイプを想定しましたが、今回は、図4の下図の17.9㎡のモデルで分析しました。前回の南面拡大の2つのモデルの中間になります。現実的な設計を考えれば、この程度が限界でしょう。

前回の南窓拡大2のモデルより小さくなりましたが、実際の設計としては、このくらいが可能な範囲でしょう。サッシは木製として、前回の分析で、最も暖房エネルギーが少なくなる外付け納まりとします。ガラスは、当然サンゴバン社製の新型トリプルガラスです。今のQPEXでは、このサッシを外付けとする場合のU値の計算が正確にはできず、あくまでも近似値で計算しています。それでも、1階の巾1.5間片引きテラス窓でU値が0.74となっています。実際は、もう少し小さくなると思います。