断熱強化で10ポイントボーナスが必須!

外皮の断熱と高効率設備だけで1次エネルギーを40%削減するのは結構大変です。実は経産省ZEHでは平成28年から、ポイントのボーナスがいくつか設けられました。特に、断熱性を最低仕様のUA値から2割以上削減すると、10ポイントと大きなボーナスがもらえました。UA値が最低仕様0.6の地域では2割減の0.48以下に減らすとボーナスがもらえたわけですが、そうなるとHEAT20の高性能バージョンであるG2の0.46にほぼ並びます。温暖地ではまず十分な断熱性能といえるでしょう。

こうして、平成28年度に採択された物件ではこのボーナスを狙ってUA値を小さくしたため、断熱性能が急速に改善したようです。今やZEHは最低仕様では語れません。激しい採択競争の中で急激にスペックが上がっているのは間違いありません。

ZEHおいてきぼりの寒冷地?

経産省ZEHでは、家電以外の消費エネルギーをゼロエネ化できる太陽光発電がマストです。バリバリ発電できる日射が豊富な地域では、ZEHは大変有効といえるでしょう。一方で、日照が少なく降雪が大きい地域では発電量が少なくなりますし、積雪により屋根の太陽光パネルが破損するなどのリスクがあります。図3に示すように積雪量は地域ごとに差が大きく、実情に合わせた対応が求められます。

図3 日本海側は積雪が大きな問題
日本海側の地域では冬に日射量が少なく、さらに積雪が非常に多くなっています。これらは太陽光発電の大きな障害になっています。 出典:気象庁 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/atlas.html

図4に、各地域における平成28年のZEH採択率を示しました。ZEH採択物件と新築件数も併記してあります。温暖地では3%以上の地域も多く見られますが、寒冷地では1%前後とかなり少なくなっています。温暖地では順調に広がっている中で、寒冷地での普及が遅れているのは明らかです。

図4 寒冷地ではZEH採択率が低迷中!
平成28年の各地域における、新築件数とZEH採択数から算出したZEH採択率を示します。温暖地では3%を超えているところも多くありますが、寒冷地では1%以下と少なくなっています。ZEHでは太陽光発電の設置が必須のため、日射量が少なく雪が多い地域は不利になる傾向があるようです。
出典:環境共創イニシアチブ ZEH支援事業調査発表会2016資料

経産省ZEHでも、寒冷地への配慮はされています。図2の右にあるように寒冷の1・2地域限定で、UA値0.25以下と断熱性能が非常に高い物件については、1次エネの全量を太陽光発電で賄える物件では補助金が増額され、また75%を賄う物件でもNearly ZEH(ニアリーゼッチ)として温暖地のZEHと同額の補助金をもらうことはできます。ただし依然として太陽光発電は必須のため、多雪地帯での導入障害は残っています。

温暖地では非常に有効な太陽光発電ですが、積雪の多い寒冷地では太陽光パネルが雪に埋もれてしまって思うように発電ができません。また雪が積もっていない場合でも、冬の昼間はごく短く発電時間は限られます。住宅のエネルギー消費は家族が帰宅して暖房や調理、照明・家電を使いはじめる夕方にピークがくるのですが、この時間帯には太陽光発電は役に立たないのです。

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