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Q 擁壁からの雨水

質問者/岐阜県・あいる
記事No.12972/カテゴリ:家の外まわり

豪雨時、擁壁から雨水が滝のようにでます。写真は、雨が小降りになってきたときの雨の量ですが、豪雨時は倍以上の雨水で困ってます。これはどうしたらいいのでしょうか。

A:回答者/一級建築士事務所(株)北工房 代表取締役 栃木 渡

擁壁裏にある雨水は、基本的に擁壁で止水することはありません。仮に完璧に止水できたとすると、擁壁裏に水圧がかかり、むしろ擁壁そのものの安全性が脅かされます。積極的に「排水」することをお考えください。見えている範囲では、左右どちらの擁壁にも排水パイプが無いように見えますので、何ヵ所か穴をあければ、つなぎ目の部分からではなく、排水パイプから、水が出てくるようになるはずです。今は排水パイプが無いので、つなぎ目から水が噴出するという状態です。

本来は擁壁設計の時に、排水パイプの位置を検討したり、裏側に透水性を保つための砂利を入れたりするのですが、今回は、擁壁の裏側がどうなっているのかわかりませんので、何ヵ所か、トライ&エラーで、穴をあけてみるしかないかもしれませんね。さらには、ご自分の敷地側での「排水」をどのようにするかを検討してください。

a-1:回答者/医王山

奥の擁壁は、お宅の擁壁と思いますが左側の擁壁は隣地の擁壁と思われます。2つの擁壁がL型に接続した部分は別物ですので、ジョイントの隙間があります。左側隣地建物から考えますと、奥の擁壁部分の水が擁壁の隙間から、あふれていると思います。栃木先生の言われるように、擁壁荷重は水圧を見込まず土圧のみに対応して計算します。本来は擁壁には水抜きパイプが必要です。ぜひ、水抜き穴を設けてください。

一般的に土木は無筋擁壁やブロック擁壁ですが、建築で使う擁壁は、L型等が多く鉄筋コンクリート製の擁壁です。今回もそのように見えます。鉄筋を切らないように、鉄筋探査レーダー(厚みが300mm程度探査できるタイプ)で探査しながら、水抜き穴を設けてください(擁壁の専門知識のあるところで)。縦筋は擁壁では重要な役割を示します。土の中の水道(みずみち)はなかなか判断ができませんので、現状の水道は塞がない方がよいと思います。

a-2:回答者/現場監督A

基本的な推察や対策は、栃木先生や中野様のおっしゃる通りかと思いますが、個人的には後からの水抜き穴施工はあまりお勧めできません。外側からのみの対策となるので土質や施工方法によっては、穴が小さいとすぐに詰まってしまいますし、大きすぎると土砂が流出してくる可能性があります。

雨水対策としては暗渠排水をお勧めします。範囲によっては大きめの雨水浸透枡でも代用できます。この場合、浸透方向は逆になりますが必ず排水管に接続しましょう。擁壁や敷地の持ち主が誰かによって対策工事の施工個所が変わってしまいますが、単純に最下段の敷地の水捌け対策としても効果があります。


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