暖かくする生活範囲を1ヵ所の「おまとめ」

ヒートショックの解決のためには、1日の生活の大半を暖かい空間の中で過ごすことが必要です。そのためには、「主居室」「寝室」「水まわり」を含む生活に必要な空間全体を暖かく保つために、連続するよう1ヵ所に「おまとめ」するのが有効です(図6)。

図6 1日のほとんどの時間を暖かく暮らせる「断熱・気密」「暖房」「プランニング」の組み合わせが大事
図6 1日のほとんどの時間を暖かく暮らせる「断熱・気密」「暖房」「プランニング」の組み合わせが大事

寝室が2階にあって他の部屋と離れているようであれば、1階の和室を寝室に転用する。廊下がリビングと水まわりを分けてしまっているようであれば、廊下をなくしてリビングと水まわりを隣同士にする。こうして、生活に不可欠な部屋たちを連続してなるべく一つにまとめれば、主居室の暖房熱が寝室や水まわりにも流れ込むので冷え込みが和らぎます。

「おまとめ空間」限定の断熱・気密と暖房は低費用

生活空間の「1階おまとめ」ができれば、断熱・気密にかかるコストも大きく減らせます。1階の開口部にだけ内窓をつけ、床の断熱・気密を強化する程度であれば、さほどのコストも工事の手間もかかりません。最後に、おまとめ空間全体が暖かく保てるよう暖房設備を適切に配置すれば完璧です。フルリフォームが難しい場合にも、範囲限定の「おまとめプラン」ならリーズナブルな費用で実現できますし、1日のほとんどを健康・快適に過ごせ、バリアフリー化にも有効です。

内窓追加はリーズナブルで、居ながら工事も簡単

最大の熱ロス部位である窓は、最優先での対策が必要です。窓の断熱強化の方法の中で、一番簡単で低コストなのは、既存の窓を残したまま室内側に新しい枠と障子を追加する「内窓」工法です。作業が簡単で「居ながら工事」が十分可能ですし、障子が二重になるので断熱・気密性能が非常に高く(図7右)、かつ防音効果も得られます。

頻繁に人が出入りする開口部であれば、障子が一重に収まる「カバー工法」や「窓付け替え」が有利ですが、工事の手間がかかりコストも高くなります。まずは内窓の追加を優先して検討するのがおススメです。

図7 窓と床の断熱・気密の確保が最優先。低コストで居ながら工事が可能
図7 窓と床の断熱・気密の確保が最優先。低コストで居ながら工事が可能

床の断熱・気密は丁寧な施工が肝心

足元の寒さを防ぐには、床の断熱・気密強化もかかせません。元々の床板を残すには床裏から、床板を入れ替えるのであれば床上からの工事になります。いずれにしろ、床の表面温度と足元の空気温度を確実に上げるには、単に断熱材を突っ込むだけでなく、床下の冷気の侵入を防ぐ「気密」の確保が絶対に必要(図7左)。丁寧な施工が肝心なことは、くれぐれも忘れずに。

仕上げの暖房もお忘れなく

断熱・気密の強化は重要ですが、それだけでは暖かくなりません。室内に熱を送り込む「暖房」が必要です。

新築であれば非常に高いレベルの断熱・気密を確保できるため、内部発熱や開口部からの日射取得だけで室温を確保することも不可能ではありません。しかし既存住宅のリフォームでは、そこまでの断熱・気密を確保するのは困難。しっかりと室温を確保するためには、新築以上に暖房設備をしっかり計画する必要があります。

主居室で確実に暖かさを感じるには、やはり足元から暖める床暖房が強力です(図8左)。内窓追加と床断熱で熱ロスを減らしておけば、床暖房のランニングコストも安くすみます。

またトイレや浴室はやはり冷え込みがちなので、しっかり室温を確保するためには、ラジエーターや浴室暖房などのスポット暖房が有効です(図8右)。こうしたスポット暖房はあまり省エネでない場合が多いのですが、暖かさと省エネのバランスを見ながら必要性を検討する必要があります。

図8 暖かさの仕上げに暖房計画をお忘れなく
図8 暖かさの仕上げに暖房計画をお忘れなく

今回は、日本のお寒い既存住宅を暖かくするリフォームについて考えてきました。寒さは健康と快適のために必ず解決すべき問題です。部分リフォームでも工夫次第で低コストに暖かい家は十分に可能です。ぜひ、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。


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【バックナンバー】
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vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
vol.010/ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?
vol.011/冷房を真面目に考えよう
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