「居ながら工事」ができればハードルが下がる

断熱リフォームの恩恵が大きいことは分かっていても、なかなか実際に踏み切れないよくある理由として、「効果」「コスト」への不安とともに、「工事中にどこに住めばいいのか」という問題があります。住み慣れた自宅を離れて他人の家や宿泊施設に滞在するのは大きな負担です。住みながら工事を行う「居ながら工事」ができれば、金銭的・心理的な負担を大きく減らすことができます。以下では、この「居ながら工事」ができる、簡便な工法を中心に取り上げてみましょう。

窓の断熱強化は「いの一番」!

断熱リフォームの一番は、窓の強化です。従来の住宅は窓面積がかなり大きい場合が多く、広く普及していたシングルガラス・アルミサッシは断熱性能がほとんどないため、真っ先に改善する必要があります。

窓の断熱強化にはいろいろなやり方がありますが、一番簡単なのは「内窓」の追加です。もともとある窓はそのままに、その内側に新しい窓枠と障子(窓の動く部分)を追加する方法です。図5に示すように、シングルガラス・アルミサッシの窓に内窓を付けた場合、改善効果はまさに「劇的」です。もともとの窓枠を外す工事もなく、住みながら工事してもらう「居ながら工事」が簡単にでき、コストも安く済みます。

図5 古い窓は断熱最大の弱点。内窓設置は効果絶大!

筆者も体験!内窓工事

実は筆者も最近、この内窓の追加を実際にやってもらいました。それぞれの窓の採寸に半日、実際の設置工事も1日で終わり、居ながらで簡単に行うことができました。内窓を付けたことで、冬の寒さや夏の暑さも和らいだのはもちろんですが、隣の学校の音がほとんど聞こえなくなって静かになったことに一番満足しています。内窓設置で障子が2重になるので、断熱・遮熱だけでなく、遮音にも大きな効果があるのですね。

筆者は集合住宅に住んでいますが、集合住宅では一般に窓が共用部扱いなので、もとの窓を変更することが困難です。その点、もとの窓をそのまま残す内窓設置なら、問題はありません。内窓は、「工事が簡単」「コストが安い」「効果が抜群」ということで、大変オススメの工事です。

内窓工事の欠点は、窓が2重になるので、外の景色が若干見えにくくなることと、出入りが不便になることです。それが問題になる場合は、既存の窓枠に新しい枠をはめて新しい障子をつける「カバー工法」がよいでしょう。ただし、手間がかかり、コストは割高になります。

足元への冷気を防ぐ床の強化も忘れずに

窓を強化したら、次は床の対策がオススメです。日本のほとんどの家は床と地面の間に空間がある「高床」のため、床下空間から冷たい外気が侵入しやすく、足元が極端に冷たくなってしまいます。リビングやダイニングでも足元が寒いのは不快ですが、特に暖房が利きにくいキッチンでは、足元のひどい寒さに困っている人がたくさんいます。

図6のように、床下から断熱・気密を強化すれば、キッチンの足元の寒さが根本的に解消されます。床下からの工事であれば「居ながら工事」は十分に可能です。狭くて暗い床下に潜って作業してくれる職人さんには、本当に感謝ですね。

図6 床下から断熱・気密を強化すれば、1階の床全体が足元から暖かく

床そのものが傷んでいて張り替えが必要な場合は、床上から床材を撤去する際に、断熱材を追加することも可能です。ただし、その場合は「居ながら工事」はかなり難しくなります。

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