屋根・天井の断熱までできれば夏も涼しく!

1日の生活ゾーン全体の「窓」と「床」の断熱強化は、必ず行っておきましょう。冬の生活が、健康・快適になり、間違いなく「やって良かった」と効果を実感できるはずです。

さらに余裕があれば、その次は「屋根・天井」の強化がオススメです。屋根・天井の断熱・気密が足りないと、冬は暖房で暖められ軽くなった暖気が屋外に漏れ出てしまい、暖房費が高くなってしまいます。また夏には、強烈な太陽熱で加熱された屋根表面の熱が室内に侵入してきて、特に最上階がひどく暑くなってしまいます。

屋根・天井を断熱すれば、冬の暖房費節約とともに、図7に示すように夏の暑さを和らげることができ、冬にも夏にもメリットを感じることができます。天井裏に断熱材を吹き込む方式であれば、それほど手間とコストをかけずに「居ながら工事」をすることが可能です。

図7 屋根・天井まで断熱すれば、冬の暖房費削減だけでなく夏の暑さ予防にも効果的!

壁の改修工事は大がかり
屋外からの新しい工法なら「居ながら工事」も可能

窓→床→屋根・天井まで対策すると、最後に「壁」が残ります。壁は、冬に室内の熱が逃げる量が窓の次に大きい大事な部位なのですが、工事が容易でないという問題があります(図8)。

図8 「居ながら工事」できる壁の外側から断熱材を張り付ける工法

壁を断熱のためだけに工事するのは現実的ではないので、内外装の更新や耐震補強など他の工事を行う際に併せて断熱強化をするのが一般的です。

壁の内側から断熱材を追加する方法が一般的ですが、そのためには室内側の仕上げ材やボードを撤去しなければならず、工事が大規模になってしまいます。「居ながら工事」は現実的ではないでしょう。

最近になって、壁の屋外側から断熱材を張り付ける工法が登場し、実際に「居ながら工事」を行っている事例も出てきました。耐震補強のために外側から構造合板を張るついでに断熱材を張るので、耐震と断熱を同時に強化でき効率的です。

壁まで断熱強化すれば新築に負けない改修も可能

壁まで含めて断熱強化ができれば、家中の環境を劇的に解決できます。新築の高断熱住宅の目安である「HEAT20 G2」レベルの断熱(図4右上)を、断熱改修で実現することも十分に可能です。このレベルの断熱改修が普及すれば、日本の家全体の健康・快適レベルを引き上げ、脱炭素にも大きく貢献することができるでしょう。


今回は、既存住宅での効果的な断熱リフォームについて考えてみました。ご紹介した内容は、下のURLで詳細な資料を無料公開しています。お住まいの家を健康・快適に改善する際の参考になれば幸いです。

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vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
vol.010/ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?
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vol.012/ゼロ・エネルギーハウスをもう一度考える
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vol.016/冬の乾燥感
vol.017/採暖をもう一度科学する
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vol.022/職住近接は地球にも人生にも優しい
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vol.028/平屋づくりのポイントを考える
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vol.030/住宅の脱炭素
vol.031/住宅の脱炭素 その2

 

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