家具の構造には大別すると4つの構造がある。1つ目は最もよく見られるもので、各部材がしっかりと固定され、ガタつきの無い剛構造のもの(例外的に部材との接合部に隙間を設け、グラグラと動く柔構造の椅子などが存在する)。 2つ目は分解できる構造である。この構造は部材をあまり増やさないことが重要である。分解はしたものの再び組み立てが困難になるような構造は本末転倒だ。この分解・組み立てられる構造を一般的に「ノックダウン構造」と呼ぶ。

3つ目の構造として積み重ねる構造がある。この構造には上に載せてゆくものや、下から差し込み上方向へと重ねるものもある。また、スーパーマーケットの買い物用カートのように水平方向に重ねてゆく構造もある。上に重ねてゆく構造のものには、専用の置き台に載せることで数十脚も重ねることを可能にしたものもある。また、丸い座面を持つ椅子や腰かけは、脚の幅分だけ回転させながら上方向に多くの積み重ねができるものもある。こうした重ねる構造を「スタッキング構造」と呼ぶ。

4つ目の構造には折り畳むものがある。この構造でも幾つかの畳み方がある。前後に畳むもの、横方向から畳むもの、中心方向に畳むもの等がある。さらに風船のように空気を注入・排出する畳み方もある。こうした折り畳み式の構造を「フォールディング構造」と呼ぶ。このほか、分解と折り畳み、両方の構造を取り入れた椅子もある。

これら2〜4番目に述べた構造には共通する特徴がある。それは普段使用しないときには分解したり、重ねたり、畳んで狭いスペースに収納しておける点である。このような補助的な家具は普段使いの剛構造の家具と比べ、安価なことが多い。

今回紹介するイタリアの巨匠、アッキーレ・カスティリオーニによる「クマノ フォールディングテーブル」には、そうした安っぽさは微塵も感じられない。3本脚の交差する部分のメカニズムは実にシンプルなため壊れにくく、かつ安全性につながるものだ。本来、フォールディングタイプの家具は、折り畳んだ状態でも、広げた状態でも審美性が求められる。また、畳んだ状態で自立できることも求められ、家具デザイナーにとってハードルの高いアイテムと言えるだろう。

この作品は畳んだ状態で自立はしないが天板に小さな穴が開いており、壁にかけられたアートオブジェのようでもある。さらに3本脚の利点として、床面が水平ではない場所、例えば石畳の道路に面したカフェテラスや、室内のタイル張りの床のわずかな凹凸面に対しても安定した使い方ができる。

こうした3本脚の構造のテーブルや椅子は古くからヨーロッパで使われ親しまれてきたものだ。そんな日々の暮らしから生まれた何気ない便利な道具や日用品に着目したのがカスティリオーニである。斬新さのみが注目されるイタリアのデザイン界において、カスティリオーニならではの視点でアイデアとセンスを加え日用品を名品に変えたのである。

パリのビストロで一般的に使用されていた三本足のテーブルを再解釈し、機能性を強化。ABS樹脂をジョイント部分に用いることで、開閉性を大幅に向上させた。1981年コンパッソ・ドーロ賞受賞。
パリのビストロで一般的に使用されていた3本足のテーブルを再解釈し、機能性を強化。ABS樹脂をジョイント部分に用いることで、開閉性を大幅に向上させた。1981年コンパッソ・ドーロ賞受賞。
Cumano Folding Table[クマノ フォールディングテーブル]のカラーバリエーション
Cumano Folding Table[クマノ フォールディングテーブル]のカラーバリエーション

ブラック
ライトブルー
ライトブルー
コーラル
コーラル
ホワイト、アマランサス

■Cumano Folding Table
メーカー:Zanotta(ザノッタ)
サイズ:直径550×高さ700㎜(折り畳み時:幅550×奥行40×高さ1140㎜)
重量:7.6㎏
材質:天板・フレーム/スチール(塗装仕上げ)、ジョイント部/ABS樹脂
価格:99,000円(税込)

<問い合わせ先>
メトロクス
https://metrocs.jp/item/4915/
TEL.03-5777-5866